【俳句】新年の俳句鑑賞
あけましておめでとうございます。
新年は書道の書初め、将棋の指し初めなど、いつもとは異なる厳粛な雰囲気が漂います。俳句も例に漏れず、新年詠は一年の予祝ともいえる句が多い印象です。
しかし、新年、誰しも明るい状況ばかりではないかもしれません。今回は、歳時記「新年」の明るい句をご紹介し、少しでも皆様のお力になれればと思います。解釈は、あくまで私個人の感想ですから、ご参考程度にお読みくだされば幸いです。
正月の雪真清水の中に落つ 廣瀬直人
正月にふる雪はなにか特別です。より白く、より透明感ある神聖な情趣を感じます。そう感じさせるのも、中七の”真清水”の効果でしょうか。これ以上ないくらいに透き通った清水に、雪が落ちていく。”落つ”とは、古語表現、落ちるの意味です。水面に雪が落ちる瞬間、まったく音のない美しい世界がひろがっています。
お降りの水輪立てつつ音もなし 中村与謝男
”お降り(おさがり)”とは、元日、三が日に降る雨や雪のことです。
雨か雪か、池に水輪がひろがっていきます。”お降り”は優しく、地を潤すように降って来るようです。水輪ひろがる動的な視覚に、無音という聴覚の織りなす美しさがありましょうか。
初日出づ一人一人に真直ぐに 中戸川朝人
初日の出を待つ人々がずらりと並んでいるのでしょうか。日が出た瞬間、そのひとりひとりが世界の中心で、分け隔てなく光をうけているようです。初日の出に、まるで神からの祝福を感じられるようです。
若水のひとくちに身の引き締まる 岡安仁義
歳時記によれば”若水”とは元日の早暁に汲む水のことだそうです。
その水を口にふくめば、いつもとは異なる体感、身の引き締まる感じがあったのです。一年のはじめに汲んだ水には、特別な力が宿っているかのようです。
雲よりの太き日柱鍬始 鷹羽狩行
歳時記によれば、鍬始(くわはじめ)は、新年になって初めて田畑に鍬を入れることだそうです。
一筋の太い光が雲をわけて大地に射しています。天地の壮大なスケールに比べれば、鍬をふるう農夫は小さな存在かもしれません。しかし、人類の営みは天地と共にあり続け、これからもずっとそうに違いないでしょう。
楪に日和の山を重ねけり 大峯あきら
楪(ゆづりは)は正月飾りに用いられる細長い葉です。
その楪に明るい山が重なっています。楪の縁起の良さに周囲の山々も呼応しているようです。