大学入学共通テスト"情報"では何をはかろうとしているのか?その1
前回に続いて、大学入学共通テストの"情報"について考えてみます。
サンプルはこちらで公開されています。
令和7年度以降の試験
https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/shiken_jouhou/r7ikou.html
大問が3つあるので、1つ1つ見てみます。
何れも試験範囲としているのは、「情報I」という新しい科目です。
詳細は、指導者向けのこちらが参考になります。
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1416756.htm
情報Iが基礎、情報IIが応用・実践、といった位置づけになっていて、情報Iは全ての高校生に必須の科目となっています。
2つの科目の関係性は以下の通りです。
以下、高等学校情報科「情報Ⅰ」教員研修用教材(本編)より抜粋。
大問1の出題範囲は、情報Iの(1) (2) (4)でした。
※解説の詳細はこちら(サンプル問題『情報』ねらい)。
問1は、東日本大震災のときに注目をあびたTwitterなどのSNSなどを題材に、情報技術の基本的な知識を問う問題でした。
震災のとき、まさにSNSの力を実感した私たち親世代としては、当然のように思える話でも、当時まだ小学生だった彼ら彼女らにとってはピンとこない人もいるのかもしれません。
なにせ、スマホやSNSが当たり前の世代ですからね。
データ通信の技術はともかく、クラウド技術は専門的というよりもわりと市民権を得ている話だと思うので、高校生になったら、新聞くらいは読んでおくと良いですね。それで十分に対応できると思いました。
問2は、情報デザインの考え方に関する問題でした。
以下、サンプル問題『情報』問題より抜粋。
これはエンジニアでなくても、理系でなくても、情報Iを学んでいなくても、答えられる問題です。
頭の体操がてらやってみてください。
生徒A:クラスの生徒全員の通学手段について調査し,「クラス全員」を「電車を利用
する」「バスを利用する」「自転車を利用する」で分類し表現します。
生徒B:より良い動画コンテンツを制作する過程について,多くの人の意見を何度も
聞き,「Plan」「Do」「Check」「Action」といった流れで表現します。
生徒C:家電量販店で販売されているパソコンを価格と重量に着目して,「5万円以
上・1kg 以上」「5万円以上・1kg 未満」「5万円未満・1kg 以上」「5万円未
満・1kg 未満」という区分に分類し表現します。
さて、生徒A、B、Cのそれぞれが使うべき図はどれでしょう?
私が学生のときは、こうした勉強をしてこなかったので、社会人になってから慌ててプレゼン資料の作り方、のような本を読み漁ったものです。
当時は企業でも、コンサルタント会社の社員くらいしか、まともに教育を受ける機会がなかったのではないでしょうか。
情報を構造化するスキルは、IT業界に限らずどの分野でも必須です。
きれいな図をかいたり、プレゼンをするときに役立つばかりではありません。
たとえば同僚や後輩に仕事の手順を教えたり、引き継ぎ書を作ったり、という程度であれば、どんな仕事でも誰しも経験があるのではないでしょうか。
プログラミングができないまま大人になっても全く困りませんが、このような構造化するスキルが身についていないと、困る場面は多いはずです。
この問題は恐らく、内容を丁寧に説明してあげれば小学生でも理解できると思います。
学級活動などのシーンで、使い方を教えてあげると良いかもしれません。
小学校の先生方、どうでしょう?
ちなみに、解答は以下の通りです。
生徒A:1
生徒B:5
生徒C:2
問3はデジタル化、問4はIPv4やビットの考え方を問うものでした。
ビットの概念や計算については「コンピュータとプログラミング」という章でしっかり学ぶようです。
しかし、アレルギー反応が出やすい分野でもありますね・・
短い期間でしか学べないと思うので、苦手意識を持たないことが重要になりそうです。
そういった意味では、小さいうちからプログラミングに触れるのもアリなのかもしれません。
でも安心してください。
ビット演算なんて、中学で習う関数や高校の微分積分よりもずっと簡単ですから。
ここまでは序の口ですね。
次回は大問2を見てみます。