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広告コピーの表現について

よしなしごと【気まぐれ選20】

 とある日本酒のパッケージに印刷された広告コピー。あまりにもスゴイ!ので書き写してみます。

 匠の技をかたくなまでに守り
 代々受け継ぐ蔵人のこころ。
 その情熱にささえられた味を
 心ゆくまでお楽しみください。

どこがスゴイ!のかと言うと・・
 まあ広告の文章というのは、図々しく歯が浮くようなことを平気で堂々と言う、ことにはなっている。しかし、これ、紙パック(いわゆる「箱の酒」)の安~~いお酒なんですよねぇ。

 それがまず、「匠の技」です。それを「かたくなまでに」守って、「蔵人」が「代々受け継」いでいるわけです。その「情熱」に支えられた味・・、だそうで。それを「心ゆくまで」「お楽しみください」と・・。なかなかここまでは気恥ずかしくて言えません(笑)。

念のため、原材料表示を見ると
 「米(国産)、米こうじ(国産米)、醸造アルコール、糖類、酸味料」
となっている。
日本酒というのは(ワインがブドウの酒であるように)、コメの酒です。「米(国産)、米こうじ(国産米)」は、当たり前です。

ところがそれだけでは量が足りないので水増しする。
 当然、アルコール度数が下がるので、その分、醸造アルコール(原料は主にサトウキビ)を足す。味も薄くなるので糖類(お砂糖)を入れて甘味を出して、それだけだとちょっと甘すぎるかなあ、ということで酸味料(お酢)をちょいちょいとふりかけて・・
 で、ぐるぐるっとかき回して、ま、いいんじゃないというところで出来上がり(だと思う)。

 その出来上がったお酒を四角い紙パックに詰めて、誰かにパッケージのデザインをさせるわけですね。頼まれたデザイナーは、横っちょが空いているので、この辺に適当に埋め草のコピー入れておいてね、とそこらへんのコピーライターに文章を書かせる。それが冒頭の文章です。

 もちろん、このお酒はお値段重視なので、私も味に文句は言いませんが、もう一度、意味を補いながらコピーを読み直します。
・・・この酒蔵は、日本酒を水増しして味をごまかすことを、「蔵人」が「匠の技」と「情熱」で「かたくな」に守って、代々受け継いでいる・・。と宣言しているということです。

 ちなみに、「かたくなまでに守り」は、原文のままです。書き写しの間違いではありません。「かたくなまで」は誤用で、「かたくななまで」が正解です。ニセモノにはニセモノのコピーがよく似合う(ということかなと・・)。
【よしなしごと0391・2013年4月 2日 (火)掲載】

【よしなしごと】シリーズは『tanpoPost』に2004~2013年にかけて掲載したブログ記事です。エッセイ風のショートストーリー、パロディ、ニセ論文、小ネタ、などなど。思いつくままに書き散らした小文をランダムに【選】としてご紹介します。お付き合いいただければ幸いです。

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