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スタートレック番外編~ミスター・カトーの秘密~

よしなしごと【気まぐれ選137】

<宇宙暦00208.009.135>
 宇宙船USSエンタープライズは、銀河系SUN恒星系第三惑星の軌道上を周回中である。長期にわたる外銀河系探索を終えて、一部の上級士官には久々に、特別上陸休暇の許可が出た。主任パイロットのカトー大尉も、その中の一人である。

 船長のカークは下船する部下たちを見送った。そのすぐ後、船医のドクター・マッコイがブリッジにやって来た。
 「やあ、カーク。ちょっと耳に入れておきたいことがあるんだが・・」
 「何だね、ドクター」
 「カトー大尉のことだが、彼、少し前から何というか、精神状態が異常に高揚している・・、というか、舞い上がっちゃてるみたいなんだ」

 「船長、私もそう思います」
 いつのまにかスポック副長が側に来ている。
 「ミスター・カトーは非常に冷静で落ち着いた人格の持ち主です。それが昨日は、コックピットで一人ニヤニヤ笑ったり、口笛を吹いたり・・」

 カークは、航海士のウラ中尉と通信士のチェコフ少尉を呼んで命じた。
 「君たち、悪いんだが、上陸したカトー大尉の様子を探ってほしい。但しくれぐれも、気付かれないように」
                :
<宇宙暦00208.009.142>
 「カーク船長、チェコフです」
 地上に転送され、ミスター・カトーの後を尾けていたチェコフ少尉から連絡が入った。

 「信じられません、カトー大尉、結婚したんですよ!! 驚きました。きっと照れくさいもんだから、みんなには隠してたんですよ」
 「今、式場から出てきました。尾行します」 ウラ中尉が報告を続ける。

 「多分、ミスター・カトーは独身の船長に気を遣って、秘密にしていたのでしょう」 スポックが頷く。
 「それはいかにもカトー大尉らしいね」
 「ようし、これから、われわれ3人で披露宴パーティーに乗り込んで、奴をビックリさせてやろうじゃないか」
 カークはこのドクター・マッコイの愉快な提案に乗ることにした。
 「こちらブリッジ、3名、至急転送せよ」
                :
<宇宙暦00208.009.160.947>
 地表に降り立ったカーク船長、ミスター・スポック、ドクター・マッコイ。彼らが目撃したミスター・カトーの秘密とは?・・・・。
【よしなしごと0282・2008年9月17日 (水)掲載】

2025注記:
「スタートレック(宇宙大作戦)」の出演者ウィリアム・シャトナー(カーク船長)とジョージ・タケイ(ミスター・カトー)は仲が悪かった、というのは一部では有名な話。さらにジョージ・タケイが同性愛者であることも、また一部では有名な話であったが、実はウィリアム・シャトナーはそれを知らなかった、というのもまたまた一部では有名な話である。
このブログ記事は、2008年米国カリフォルニア州で同性結婚が合法化され、ジョージ・タケイが長年のパートナーとめでたく結婚式を挙げることとなった。というニュースに基づいている(リンク記事参照)。
なお余談ではあるが結婚式にはチェコフ隊員、ウラ隊員、そしてミスター・スポックは招待されたが、カーク船長は呼ばれなかった。

【よしなしごと】シリーズは『tanpoPost』に2004~2013年にかけて掲載したブログ記事です。エッセイ風のショートストーリー、パロディ、ニセ論文、小ネタ、などなど。思いつくままに書き散らした小文をランダムに【選】としてご紹介します。お付き合いいただければ幸いです。

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