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関東と関西

よしなしごと【気まぐれ選91】

 「関東」と「関西」という言葉がある。2つの地勢的勢力を表しているのだが、明治時代以降、最近は関東が強く関西は分が悪い。しかし、である。そもそも「関東」という言葉はあったが、「関西」という言葉はなかった。

 「関東」とは関所の東という意味である。

 この場合の関所とは、北陸道は越前(福井県敦賀市付近)の愛発(あらち)関、東海道は伊勢(三重県)の鈴鹿関、中山道は美濃の不破関(岐阜県の関が原あたり)の3つ。
 これらを「三関(さんげん)」と称した。つまり都(みやこ=平城京や平安京)への出入りを監視する関であり、関所の外側、東が「関東」である。

 ちなみに「関東」という言葉は続日本紀に初めて出てくる。西暦740年(天平12年、聖武天皇の時代)、今から1200年以上前のこと。
 一方「関西」と言う言葉が初めて出てくるのは、ず〜っと時代が下って、鎌倉時代に書かれた歴史書『吾妻鏡』(1186年)である。

 さて、しかしながら『吾妻鏡』は、関所の外(鎌倉)から都(京都)を見て「関西」と呼んでいるわけで、これはおかしい。
 都から見て西の関所といえば長門(山口県)の「下関」である。なので、どうしても「関西」という言葉を使いたいなら九州を指すことになる。さらについでに言えば鎌倉幕府は(江戸幕府も)軍事クーデターによる臨時革命政府であって、都でも何でもない。

 東と西と言うから、対等的な関係に見える。しかし、本来は都の外と都の内として見ないといけない。ということは、「関西」ではなく「関内」と呼ぶのが正しいと思う。まず手始めに関西電力は「関内電力」に、関西国際空港は「関内国際空港」に、呼び名を改めるところから始めるべきであろう。
【よしなしごと0091・2005年7月 9日 (土)掲載】

【よしなしごと】シリーズは『tanpoPost』に2004~2013年にかけて掲載したブログ記事です。エッセイ風のショートストーリー、パロディ、ニセ論文、小ネタ、などなど。思いつくままに書き散らした小文をランダムに【選】としてご紹介します。お付き合いいただければ幸いです。

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