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『小説家になりたい』文字を書く、それが楽しくて。

僕は臆病者だ。

友達に嫌われるのが怖くて、誰かの期待に応えられないことが嫌で、いつもみんなに合わせ、空気を読んで生きていた。

そのおかげもあって、中学一年生の時はみんな僕のふざける姿を見て、笑ってくれた。
でも、本当の僕は真面目で陰キャで、ビビりなだけのなんの面白味もない人間だ。

相も変わらず、クラスメイトとふざけていると、僕の心はバグを起こした。
自分が誰かも分からず、パニック状態に陥ってしまった。

「これは罰だ」
って思った。

今まで周りに合わせて、無理やり面白い自分を演じて、嫌われるのが怖くて、人をいじって、馬鹿なことをして。

そうやって自分の本音を誰かに話す勇気もない僕は自分の心に嘘をつき続けて、壊れてしまった。

目を開けるとそこは病院。
どうやら、ここは精神病院のようだ。

注射を打ち、落ち着いたので、一旦帰宅。
しかし、再び病院に行くと、

「入院が必要です」

と、言われた。

これが中学二年生の夏のことだ。僕が受けた診断は「統合失調症」だった。凄く悲しかったと同時、先生の話を聞いていると納得がいった。

「心は生き物だ。
大事にしなかったら死んでしまう」

まさにその通りだと思った。

入院中は時間が無限かと思うほど暇だった。

そこにあったのは紙と鉛筆。
最初は漫画を描いてみようかなと思った。
だけど、絵は難しい。うまくいかない。でも、頭の中の想像をどうにか残したい。

そう思った僕は文字を書くことにした。

汚い字で紙に物語を書いていく。

物語の中の主人公は強くて、自分の正義を曲げない、勇敢な戦士。
幾度となく、ピンチを切り抜け、ヒロインを救い出す。

ありきたりであくびがでるほどつまらない物語だが、その物語が完結したとき、今まで感じたことない達成感と高揚感を覚えた。

「小説家になりたい」

いつしか僕はそう思うようになった。
それまで大して小説なんて読まなかったのに、色んなジャンルの小説を読むようになった。

特に、ラブコメ、ファンタジー、ミステリーあたりは少年だった僕に物凄く刺さった。
ライトノベルが流行っていたので、その影響をモロに受けた僕はライトノベル作家を志すようになった。

高校生になったころ。

本音も言えるし、ふざけることもできる。その塩梅がなんとなくわかってきた。
その頃は毎日が忙しくて、小説家になる夢なんて忘れていた。

僕は精神的にも落ち着き、大人になったんだなと思っていた。
でも、それは、ただの勘違いだった。

大学に上がると、今までの悪ふざけが全く通用しない。
ボケても「は?」みたいな感じで誰も笑ってはくれない。

僕は友達作りに失敗した。
同級生に友人はおらず、サークルで問題を起こし、精神的につらくなった僕は、再び、入院。

その間、小説や漫画を読み漁るようになった。

面白い作品とたくさん出会い、僕は中学生の時に夢見ていたことを思い出した。

「小説家になりたい」

僕はインターネットで小説を書くようになった。
どうせ、誰にも見られないだろう。そう思っていたが、意外と閲覧された。
それが本当にうれしかった。
見てくれている人がいる。それだけで僕の心は躍った。

大学を卒業後、地元のスーパーに就職するも、人間関係で悩み、退職。
次の仕事を探す間、新人賞に応募しながら、いつか小説家になることを夢見ていた。

とある賞で初めて二次審査まで行った。
もし、次の三次審査が通れば、僕は晴れて小説家だ。

もしかしたら、本当に夢が叶うのか?
僕は淡い期待を抱きながら、日々を過ごした。

結果は、落選。
残念ながら小説家になることはできなかった。

そこで僕は夢を諦めた。

夢を諦めたとしても、仕事はしないといけない。
僕は就活だけは頑張った。

でも、僕を雇ってくれる企業はなかった。

そんな時出会ったのが今、働いているA型作業所だった。

ここではライターとして仕事ができるというのだ。

ライター。
小説家とは違うけど、文字を扱う仕事だ。

作業所に電話をすると、一度体験しに来ないか、と言われ日程を決めた。

いざ、事業所に行くと、支援員さんが話を聞いてくれた。緊張でがちがちだった僕のつたない言葉を一生懸命聞いたくれた。

「ここで働きたい」

僕は直感的にそう思った。

僕はここで働き始めてもうすぐ一年が経とうとしてる。

あっという間だった。

本当に普段、味わえない経験をたくさんさせてもらった。
もし、あの時、紙と鉛筆に物語を書いていなければ、ライターとして働こうなんて思わなかっただろう。

想像していた未来とは違うかも知れないけど、僕は文字を扱うことができるこの仕事が大好きだ。

P・S
今も新人賞に応募は続けています。
一度は諦めた夢。少し不誠実かも知れないけど、やっぱり、まだ、小説を書いていたいんです。

もちろん、ライターとしての仕事は手を抜かず、頑張っています!

普段は『AKARI』というサイトで記事を書いています!
もし、お時間があれば見ていってくださいね!

まとめ記事もあります、お時間がある方は是非!


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