【タノム・プロダクト開発記】築地・豊洲市場に入り込むことで得られた新たなインサイト
こんにちは!タノム・PRチームです。
当社では、「卸業者の仕事をシンプルに」をコンセプトに開発したB2B SaaS「TANOMU(タノム)」を提供しています。
私たちのチームでは
・(買い手の飲食店ではなく)売り手の卸売に寄り添ったプロダクト開発
・スタートアップとしてのスピード感を持った開発・検証
この2つを大切にしながら、サービスの提供を行なっています。
私たちのプロダクト思想についてはこちらの記事をご参照ください。
このnoteを通じて「タノムで力を試してみたい!」という方は、ぜひこちらのwantedlyから応募いただけると嬉しいです!
水産卸業界における「茶屋札」という独自の文化と向き合う
この記事では、前回に引き続き株式会社魚家(うおや)の村松さんに取材協力をいただき、実際に卸業者の声から生まれたTANOMUの「茶屋札(ちゃやふだ)機能」の開発ストーリーを追いかけます。
今回は、MVP(Minimum Viable Product、顧客に価値を提供できる最小限の製品のこと)をリリースしてから半年が経っての続編記事にあたります。
TANOMUを導入したその後について、卸業者さんならではの現場視点で語っていただきました。
取材協力:株式会社魚家(うおや) 村松 絃太さん(写真右)
2015年、慶應義塾大学卒業。国内大手人材会社に新卒でエンジニア職として入社し、採用管理システムの開発を担当。その後2017年、家業である株式会社魚家を引き継ぐ。
株式会社魚家は、創業15年目、取引先は個人店中心で100店舗以上、仲卸から買付を行い飲食店に直接配送を行う納め屋という業態で魚卸を営む。
※以下、敬称略
リリース後も現場に足を運び続けたことで課題が見えた「納品書機能」
ーー水産卸業界特有の「茶屋札」のデジタル化を、半年に渡り取り組んできました。
川野:前回の時点では、仲卸(=一次卸業者)に渡す茶屋札を一括印刷できる機能をMVP(Minimum Viable Product)として提供しました。
足下では、そこからいくつかの機能が追加でリリースされています。
追加機能の検討にあたっては、魚屋(うおや)さんをはじめとする卸業者さんにヒアリングを続けてきました。それによって現場に対する解像度がさらに高まり、機能公開までたどり着けたというところです。
村松:前回のインタビューのあとにも、豊洲まで何度も足を運んでいただきましたね!
川野さんが早朝から一緒に作業をしてくれたのは衝撃でした。朝3時の買い付けから配送まで、、、僕らもすごく助かりました(笑)
(豊洲市場における買い付けの様子)
川野:こちらこそ、なかなか入れない市場の熱気を肌で感じることができて勉強になりました。現場にひたすら入り込ませていただけたおかげで、TANOMUの追加機能として「納品書」の発行機能を実装することを決められたんです。
村松:現場の温度感をプロダクトに反映いただけて、本当に嬉しいです。
おっしゃる通り、水産卸における「納品書」というのは独特で、本当に課題が根深いんです。詳細は省きますが...一般的なITビジネスがイメージする「納品書」とはちょっと違うんですよね。
さらに、そのややこしい納品書を書く時間がとにかく足りない。商品の価格は競りで買い付けたあとに決まるので、納品書は値付け後・配送前のタイミングでしか書けないんです。でも競りの後って梱包・積込・配送の準備とずっとバタバタしています。そうすると悠長に納品書を書いてる時間もないから、配送先の駐車場で大急ぎで書いたりすることも多くて。
TANOMUを通じて、この複雑かつ煩雑な「納品書」をスマホで出せるようになったことは本当にありがたいです!私だけではなく社内メンバーへ浸透・利用促進ができたら、かなり大きな改善につながると思います。
ーーここまで紹介した「納品書」の機能化は、卸売業者だけでなく配送先の飲食店にも大きなメリットがあると聞きました。
村松:その通りです。従来のやり方では飲食店側で納品書が確認できるのは、僕たちから商品が届くタイミングです。卸業者さんによっては納品書を翌日提出にしているところもあります。
ですが飲食店側は、営業開始前に金額を知りたいニーズが強い。その日のランチの原価を細かく管理している店舗などでは、開店前に食材の価格を教えてほしいという連絡も度々届きます。
今回のTANOMUの機能はオンラインで納品書を共有でき、飲食店側も商品到着前に見られるので、双方のニーズにマッチしていると思います。
納品書関連に限らずTANOMUは飲食店さんにも使いやすいシステムだと思うので、積極的にオススメしているのですが、ここでちょっとした課題が生まれています。
ーー課題というと、どのようなものですか?
村松:ずばり、納め先の飲食店でのTANOMU利用が進まないことです。
僕たち卸業者としても、納め先の飲食店が積極的にTANOMUを使ってくれた方が助かるんです。FAXや電話での注文が減れば、手作業の事務が減り、ミスの発生率も抑えられるので。
ですが、これがなかなか前に進まない。
村松:TANOMUはとても良いサービスですし、なにより飲食店側は無料で使える。なので「興味があるから教えてほしい」ということはよく聞かれるんです。
ですが日々の店舗運営が忙しかったり、突発的なトラブルが起きたり...。このインタビューを受けている12月は業界的にも繁忙期なので、なおさら飲食店側で導入検討できる余裕がないんですよね。
川野:私たちも店舗への導入促進をサポートしていますが、本当に大変だなとひしひし感じています。
ですが、取引先での導入が進まないことや、社内でのオンボーディングが思うように進まない状況を、私たちはポジティブに捉えてます。
レガシーな業界だからこそ、登場人物全員にいきなり全ての機能を使わせることは不可能だと考えています。
現場でデジタル化に取り組みたいという意思を一人でも持てば、スモールスタートですぐに効率化を実感できるようなプロダクトを目指しています。
それを象徴するのが、今回追加実装された「代理発注機能」です。
ーー代理発注機能について、ぜひ川野さんから紹介してください!
川野:代理発注機能は、簡単にいうとFAXなどで受けた注文内容を、飲食店に変わって卸売業者がTANOMUの管理画面上に代理登録する機能です。
村松:この機能には本当に助けられました!飲食店側にも彼らの慣れたやり方があるので急に「こちらの都合で発注方法を変えてくれ」ということは出来ません。まだFAXや電話で発注をするお客様がいる中で、無理にデジタル化を進めるのではなく、このような機能を上手に使いながら共存していくことが大切だと考えています。
川野:「現場の速度に合わせて変えていく」というのは、僕たちサービス提供者も大事しないといけないと考えています。
どんなに便利なツールであっても既存のオペレーションや仕組みを変えて導入することは並大抵のことではありません。「開発して終わり」というスタンスではなく、部分的に組み込んでいけるようTANOMUを開発しているんです。
村松:TANOMUを使うときちんと現場の人を意識して設計されてるんだなと感じます。実際に当社でも、業務フローを無理に崩したり変えるのではなく、今やっている作業の中で自然にTANOMUを組み込んでシステム化ができているので、現場としても負担なく業務の効率化を進められます。
川野:「代理発注」と「納品書」の機能が追加開発されたことで、注文処理から買い付けまでにかかる事務作業の大半をTANOMUで完結できるようになりました。卸業者のみなさんに一つ一つの機能の便利さを実感していただきながら、徐々に広げていきたいですね。
↑注文を受けてから発送するまでの事務作業を、TANOMUで効率化することができます!
卸業者が本来すべき仕事に、もっと力を注げる世界を目指して
川野:業務のデジタル化やシステム化が進むことのわかりやすいメリットは、単純作業や事務作業の手間や人的ミスが減るという点にあります。ですがそこからさらに一歩掘り下げると、人間の「時間」を生み出せるという利点が大きいのではないかなと、私は考えています。
これは卸売業に限った話ではありませんが、人手不足や継承者問題はどこの業種でも深刻化しつつあります。「人手が足りないから出来ない」ではなく、効率化を進めることによって本来やるべき業務や新しいことへのチャレンジを後押ししたいですね。
村松:そこは僕たちもすごく期待している部分です!本来卸売業者がやるべき仕事は、茶屋札を書くことではなく商品の目利きをすることであり、お客さんと接点を持つことなんです。それなのに人手が足りないせいでそのコミュニケーションが疎かになったり、取引先の新規開拓に動けなかったり、本末転倒な状況となっています。
1日1時間でも工数が減ると新しい取り組みができるようになる。これは当社に限った話ではなく業界にとって大きな希望だと思っています。なのでタノムさんはこれからも現場に寄り添うパートナーとして、色々な課題を解決してもらいたいです!
川野:ありがとうございます。オフィスでパソコンとにらめっこしてるだけでは絶対に課題は見えてこないし、一緒に仕事をしてみないとわからない。そんな卸売の世界こそ、テクノロジーが解決していくべき領域だと実感しています。
これからも卸業者さんが抱えるペインに寄り添いながら、ユーザーの本当に助けになる機能開発を進めていきたいと思います。
村松:卸に寄り添うというタノムさんのスタイルを僕たちも応援しています。これからも一緒に頑張りましょう!
ーーお二人とも、ありがとうございました!
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