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1-5 ガリレオの月…とは?

-定期演奏会を聴きにいって考えた-

先日,勤務校の吹奏楽局による「定期演奏会」を鑑賞してきました。演奏も演出もスバラシイものでした。また,普段の学校生活で接している子たちが活躍する姿もスバラシイものです。

 また,演奏楽曲も,とても刺激を受ける曲目でした。パンフレットには曲の説明が載っています。以下,本文を抜粋。

●ガリレオの月
 ロジャー・シシーは,米国の作曲家,音楽教育者。アイオワ州立大学に勤務の後,フリーの作曲家となる。本作をはじめ組曲「虫」などが世界的に演奏されている。「ガリレオの月」とは,17世紀にガリレオ・ガリレイが天体望遠鏡で発見した木星を周回する4つの衛星のことで,それらを題材に作曲されたものである。「カリスト」はギリシャ神話に出てくるニンフ(下級の女神)で,狩猟と純潔の女神アルテミスの怒りに触れて熊に変えられ,更に焼き殺されて天に昇る。楽曲ではその不安,緊張感が表現されている。「エウロパ」はフェニキア生まれの娘で,ゼウスと交際を始め,牡牛に姿を変えたゼウスの背にまたがり,今日のヨーロッパを逃げ回り,やがて垢となる。そんな「建国」の神話にふさわしい晴れがましい終局を迎える構成になっている。ソロも多く,緊張感に満ちた作品を,心を込めてお届けします。

説明文を読むと,「ガリレオの月 = 木星を周回する4つの衛星のこと」とのこと。どういうことだろう…? 月?4つの衛星? 翌日,インターネットで楽曲についてもう少し詳しく調べてみました。すると…。

「Galilean Moons」と月が複数になっているタイトルの由来は次のとおりです。ガリレオ・ガリレイ(1564~1642)は有名なイタリアの物理学者で、天文学者だった人。1610年、木星に4つの衛星があることを、自分で組み立てた望遠鏡で発見しました。これが「ガリレオの月」で、本当の月ではなく、木星の衛星である木星から見た月のことで、4つの衛星なので複数になっています。木星(ジュピター)はローマ神話ではユーピテルと呼ばれ、神々の主で天の支配者となっていますが、ギリシャ神話ではゼウスにあたります。したがって、4つの衛星はゼウスに愛された4人が姿をかえて、木星に付き従っているという神話になっています。そのため、この曲は4つの楽章からでき、それぞれにギリシャ神話の人物の名前がつけられています。第1楽章「ガニメデ」(5分42秒)、第2楽章「カリストー」(3分23秒)、第3楽章「イーオー」(2分43秒)、第4楽章「エウローペ」(5分41秒)、楽章の組み合わせで、自由曲にも充分使えます。

(秋山紀夫) (サイト:ロケットミュージック 解説文より)

なるほど。「ガリレオの月」というのはまぁ例えみたいなもんで,「木星=ガリレオがいる場所(地球)」と想定すると,その周りを周回する4つの衛星→月(木星を地球と見立てると,その地球の周りを回る衛星はまるで月みたいなもの)というわけなのか。

●木星の衛星の発見って何の意味…?

 でも,木星の衛星を見つけたからといって,「だから何?」とも思えているボクです。わざわざ,曲として「ガリレオの月」なんて曲が作られたり,木星の4つの衛星を「ガリレオ衛星」なんて呼んだりするのでしょうか。木星の衛星が見つかると,そんなにびっくりすることなのでしょうか。ワイワイある無数の星とどう違うのでしょうか。

 疑問に思ったボクは,買ったはいいものの,まったく読んでいなかった『望遠鏡で見た星空の大発見』を読んでみることにしました。すると…!?

●挫折。もう1冊へ

 読み始めたはいいものの,どこがミソなのかもよくわからないまま途中で挫折してしまいました(汗)。そんな行為,昔だったら「本の読めないヤツ」と周りから見下される気がしていたし,そんな自分が嫌になりそう。でも,今だったら「まぁそんなこともあるか」と思える。仮説実験授業研究会ってそんな雰囲気(とボクは思っている)。今度はもう少し読みやすそうな『いろいろな月―わたしの月,ガリレオの月』(小峰書店)を注文してみました。副題にも「ガリレオの月」なんて書いてあってぴったり。(こちらのガリレオの月は,たとえじゃなくて,ガリレオが観察した月について書かれていました。)

 木星について触れる前に,その「月の観察」についての本文より。

1610年のことです。月の知識は,とつぜん新しい時代をむかえました。
 星空に,それまではまったく知られていなかったことが,次々と発見されたのです。それは,日本人も,<その当時日本人がとても尊敬していた中国人>も,<日本から遠く離れた西洋の人>たちも,それまで,まったく知らないでいたことでした。
 今から400年ほど前のことです。いったい,どうして,だれも知らなかった知識が,突然,増え始めたのでしょうか。
 人類は,それまでも,月について,いろいろなことを知っていました。誰だって「もうそれ以上知ることはないだろう」と思っていたのです。
 誰かが月に行って,帰ってきたのでしょうか。そんなことはありません。人類が宇宙ロケットをはじめて飛ばしたのは,1957年,今から60年ほど前のことです。
 望遠鏡が発明されて,月が急に,大きくくわしく,見えるようになったのです。はじめは3倍くらいでしたが,<すぐに30倍くらいに改良された望遠鏡>で見たら,それまで誰も思ってもいなかったものが,見えてきたのです。はじめて,その新しい月を発見したのは,イタリアの科学者ガリレオ・ガリレイです。…(中略)

なるほど。はじめて月をちゃんと観察したのはガリレオというわけです。確か《宇宙への道》でもちょろっとでてきたなー。

月 1609年のこと,ガリレオ・ガリレイは,初めて自作の望遠鏡を使って月を観察しました。そして,月には多くの噴火口のようなくぼみ(クレーター)や山脈があることを見つけました。その後の研究やアポロ宇宙船の月面到着で,月の様子も詳しくわかるようになりました…(後略)。

(授業書《宇宙への道》第3部 より)

そして,月に対して「それまで誰も思ってもいなかったものが,見えてきた」っていうのはなんだろう…。きっとアレかな…?続きを読むと…。

●月を観察したガリレオ
ある日,ガリレオは「オランダ人が<遠めがね>を発明して,ヴェネチアに売り込みにきた」という<うわさ>を聞きました。そこで,彼は,「<遠くのほうまで見える道具>というなら,レンズを使って光を集める工夫をしたにちがいない」と考えました。
 それをみたヴェネチアの有力者たちは,大喜びでした。彼らは,<ヴェネチアの港に入ってくる船>を見たりして,喜びました。ところが,ガリレオは,その望遠鏡を空に向けました。
 そのころの天文学では,「太陽が動いているのか,地球が動いているのか」ということが大きな話題になっていました。そこで彼は,その問題を解くヒントになることが見つかるかも知れないと考えたのでしょう。
 はじめのうちは,望遠鏡の性能が悪かったので,一番大きく見える天体-月に望遠鏡を向けました。 …

-なるほどね。みんなは実生活がでかく見えることに感動していたけれど,ガリレオは「天文のことがよりわかるかもしれない」と思って望遠鏡を使ったんだなぁ。それで…?

そして,その月がとても大きく見えて感激しましたが,「アレッ」と思ったことがありました。いったい,何が見えたのでしょうか。
 「月の表面が,すべすべしていないで,デコボコしている」ように見えたのです。

やっぱりクレーターの話か~。でも,クレーターを観察できたからって何の意味があるんだよ~。《宇宙への道》でも,さらっと紹介されて終わってるしさ~。そんなことを思いながら読み進めていたのでした。しかし…。

●クレーターが大発見!?
 <ヨーロッパの国々の住む人々>は,今もそのころも,みんなキリスト教信者で,ガリレオもその信者の一人でした。ところが,キリスト教では「天体はみな,<神様が人間のためにお創りになったもの>だから,完全な形をしているに決まっている。だから,その表面だって,すべすべに決まっている」と教えられてきました。ところが,どうも違うようなのです。それが,大発見のはじまりでした。…

なるほど~。周りの誰もが,「月はすべすべだよ。だって神が作ったんだもーん。当然ジャーン」という常識(思想?)だったのに,クレーターの発見は「神が作ったってヤツ違うんじゃないか!?」と疑うきっかけ…,ということでしょうか。

 キリスト教の信者でない日本人は「月の表面がすべすべではない」ことを知っても,とくに驚くことはありません。しかし,キリスト教の信者にとっては驚くべきことでした。ヨーロッパ諸国では,ほとんどの人がキリスト教徒でしたから,「おまえは教会の教えにそむくのか」と言われて,みんなから総攻撃されてしまいかねません。しかし,ガリレオは科学者になりたかったので,自分の発見したことに誇りがありました。

そして,ガリレオはその後,「月の表面の高いところと低いところがある」ということも発見し,「天の川」も<無数な小さな星のあつまり>だということも発見します。そして,あの「木星の衛星」も見つけるわけです。読んでいて,ボクはだんだんワクワクしてきました。「木星の惑星もやはり大発見…!?」

●木星の惑星の発見はどんな意味が…?
彼は同じ本の中で「木星のまわりを回転する4つの星の発見」も発表しましたが,この発見もとくに重要なものでした。
 キリスト教では,「宇宙がみな神が人間のために創造したので,天体は地球のまわりをまわっているのは当たり前のことだ」とされていたのに,木星のまわりをまわっている星が見つかったからです。
 その4つの星は,月が地球のまわりをまわっているように,木星のまわりをまわっているのですから,「すべての天体は地球のまわりをまわっているわけではない」ということになるからです。
 そこで,ガリレオは「すべての天体は地球のまわりをまわっている」という天動説の考え,つまり「キリスト教会が教えていることはまちがっている」と考えるようになりました。

少しイメージがしづらかったので,天体ソフト「Mitaka」を使って,1日ごとに時間を早送りしてみました。

そうすると,太陽を中心にすべての惑星がまわっているように見えます。その次に,木星を中心に,大きく拡大して「ガリレオの4つの衛星」を10分毎に早送りしてみると,確かに,太陽ではなくて,「木星」を中心にまわっています。そうか~。「木星の惑星見つけたからって何の意味が…」と思っていたボクでしたが,この現象を通して,ガリレオは天動説を本格的に疑うようになったんだな…。そんなことを思うと,木星の衛星や月のクレーターにも愛着が湧いてくるから不思議です。そういえば,太陽のあの点も…。

●あの点も意味がある
その後も,ガリレオは,望遠鏡を使って天文学上の大発見を続けました。その中には「太陽の表面には<黒い点>があって,たえず動いている」という発見もあります。「太陽も完全な球形ではない」ことが明らかになったのです。そこで彼はますます,「これまでキリスト教の教えとされてきた天動説」はまちがっていて,「<地球が太陽のまわりをまわっている>という地動説のほうが正しいのだ」と確信するようになり,その考えをまとめて『天文対話という本を書きました。1632年のことです。

そうか~。<黒点>もそうだったのか…。人間でいえば,つるつるな肌だったけどほくろを発見した…みたいなもんかな?

●岸さんの資料より

 そうしているうちに,「そういえば岸さんのサークル資料にも《宇宙への道》の実践内容が書いてあったような…」と思い出してきました。目的意識や動機がないとあまり気にもとめていなかった文章も,気になりだした途端,思い出したくなったり,じっくり読みたくなります。(一方で,思いだせる自分もエラいと思いました 笑)

第1部の「地球」の最後には,1.3mの大きさに投影した時点する地球の画像(昼と夜/夜はアメリカやヨーロッパや日本は明るく輝いていて地形がわかりますが,アフリカとかは真っ暗です→「日本とかでは,電気/エネルギーを大量に使っているということだね」と…)を見たのですが,子どもたちがジッとみている感じが伝わってきました。「宇宙から見た地球」というDVDを持っているのですが,そのケースに「宇宙から見るという視点は,人類の未来に大きな意味をもたらすだろう」という言葉がありました。以前はそれほどこだわりがなかった(必ず授業しようと思わなかった)《宇宙への道》ですが,ここ数年はよく授業をするようになりました。それは「宇宙から地球をみる視点」を持って欲しいと思うからです(また,それは《力と運動》の第2部にもつながると思うし…)。そして,前期期末試験のあとに,家庭用プラネタリウムの「HOMESTAR」を見ました。…(中略)…「HOMESTAR」で星空を見た次の時間は,副教材の『望遠鏡で見た星空の大発見』を使っての授業。すべてを授業時間で読むのは苦しい感じがするので,ところどころをピックアップして読み,話を加えながらの1時間でした。
「月を望遠鏡で観測し,地球と同じように山があったり,谷があったりすることがわかった」→「地球(地球上にあるもの)とそれ以外のもの(月など)は違うものでできているため,月はほかの地球にあるものとは違って地上に落ちてこないと考えられていたけれど,月もどうやら同じものでできているらしい」→「そうだとしたら,どうして月が落ちてこないかを考えなくてはいけないとなる」。というような話をすると,関心している様子の子どもたちでした。…(後略)

(岸さん資料「森の時計2017年8・9月」より)

「HOMESTAR」はボクも去年買って見せた記憶があります。けれど,プラネタリウムごっこをして非日常をたのしんだだけで,うまく活用できなかった気がします。紹介されている『星空の大発見』も『いろいろな月』を読んだ後,岸さんの資料で紹介・引用してくれた後だと不思議と「もう1回読んでみようか」と思える。他人の存在ってホント大事ですね。どうやって授業をしたのか,岸さんがいるなら聞いてみよう。

●あとがき

 今回,定期演奏会の「ガリレオの月」という楽曲がきっかけで,新しいことを知ることができました。それは《宇宙への道》3部にもつながるとも思うし,ガリレオは「天動説と地動説」について,ずっと気にしながら過ごしていたんだなと改めて感じました。

 今夜,見上げると月。そんな月を見て,今までは「距離」しか感じなかったけれど(遠いようで意外と近い…,同じく夜空に浮かぶ星はめちゃ遠い…みたいな),今回の知識が増えたとたん,クレーターをみて「これが地動説のはじまりか…」なーんて考えてみたりする自分がいたのでした。   (おしまい)

(今回の資料は,登場人物もいないし,本の引用も多く,自分の考えが変わった体験をただ書いているので,読みづらいかもしれません。でも,自分にとっては発見(知ってうれしいこと)だったので,思わず書いてしまったのでした。)


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