普段と違うフィールドで、想像力が広がる? 探究コネクトが地域とコラボして開催した小豆島のプログラム。
昨年5月に、探究コネクト×小豆島ヘルシーランドがコラボして実施した1泊2日の「島を探検して、妖怪をつくろう!」小豆島スプリングスクール。
全国に探究の学びの場を作ることを支援したい「探究コネクト」と、地元の魅力を活用して若者中心に活性していきたい「小豆島ヘルシーランド」がコラボし、コロナ禍の中で久しぶりに開催できたイベントでした。だいぶ時間が空いてしまいましたが、昨年のスクールはどんな様子だったのかレポートをお届けします。
今回のイベントに集まった参加者は5家族、9名の子どもたち。ナビゲーターとして神戸、そして愛媛、徳島、香川、佐賀、兵庫、小豆島に住む家族と、西日本からの参加者が多くいました。参加した理由を尋ねると、「妖怪が大好きだから」という子どももいれば、「リキさん(市川力さん)のワークショップが関西で受けられるなら」という保護者も。
当日みんなをナビゲートしたのは、妖怪や目に見えないモノを探究する画家であり「妖怪美術館」館長の柳生忠平さん、一般社団法人みつかる+わかる代表理事でありジェネレーターである市川力さんです。
国民宿舎に集合し、まず行われたのは市川力さんによるフィールドウォーク。
親子で山に登ろうとしたところ、「歩って漢字は、少し止まるって書いてあるよね。歩くときに大事にしたいのは、なんとなく、とりあえず、あてもなく。大人も子どものことを気にせずに、立ち止まりながら気になったものを観察していいんですよ」というリキさんからの投げかけが。
まわりをじっくり見ながら、「面白いもの見つけたねえ!」と一緒に盛り上がったりしていると、最初の10メートルを歩くだけで、10分、20分…。子どもはあまり気にならなそうですが、保護者の中には”こんなゆっくりでいいの?””これって意味あるのかな?”と少し怪訝そうな人も。
それでも一緒に歩いて行くうちに、保護者からも「こんなの見つけたよ」という声が。目的を持って何かを見つけに行くのではなく、感じるままに歩き、何かを見つける“Feel ℃ Walk(フィールドウォーク)”を体感しはじめます。子どもはもちろん、保護者も自分を解放していっているようでした。
そのあとは、妖怪美術館館長・柳生忠平さんと、まちに点在している妖怪美術館を見学。妖怪美術館は、全国から妖怪の造形物を集めて「世界一妖怪が生まれる島」としてにぎわいの創出を目論む、妖怪造形大賞を開催しています。これまでに、計800点以上の応募があったそう。
妖怪美術館には受賞した作品が飾られており、いわゆる古典的なおばけ・妖怪だけではなく、”スマホおばけ””言わずにぐっと飲み込んだ言葉を吐き出す妖怪”などオリジナルなものがたくさん。「身の回りのものとか人の癖とかも妖怪なんだよ」という忠平さんの話を聞いて、子どもたちも自由な発想が広がったようでした。
また、夜は小豆島の街を歩き回って迷路の街を探検。お墓では忠平さんから、小豆島に伝わる妖怪「カボソ」(カワウソ)の話を聞きました。参加者の中には、「ふだん自分のまわりにはそこまで妖怪に詳しい人がいない。妖怪博士と喋れてすっごく嬉しい」と忠平さんとたっぷり話した妖怪マニアの子も。
翌日は、朝からもう1回山に登って、そのあと海へ。それぞれのインスピレーションで、漂流物など妖怪の素材となりそうないろんなものを拾いました。お昼が近づいても、「妖怪つくるより海で遊んでいるほうが楽しいな…」となかなか海辺を離れがたい様子の子どももいました。
リキさんなども参加しながらみんなで砂浜で川をつくったり、海での遊びを充分やりきって、切り替えてから妖怪づくり。妖怪づくりは子どもはもちろん、大人たちも真剣に取り組みました。限られた時間ながら様々な作品ができ、発表した後は妖怪美術館に展示。
参加した保護者からは、「普段の日常では時間に追われることも多く、子どもの好奇心をつい途中で止めがちだった。やりたいようにやらせてあげられる時間をたっぷりとれた」「子どもがあそこまでのびのびやってる姿を見たことがなかった。運営スタッフが手厚く10人ほどいてくれて、子どもを親以外の誰かが見守ってくれるので安心できた」という声もありました。
また、小豆島から持ち帰った木の枝や竹を、家のまわりで見つけたものと組み合わせ、じっくり妖怪を作成。開催後に自宅から参加したオンラインセッションでは、子どもたちがみんなの前で妖怪を発表。「そんな発想あったんだ」と工夫をこらした作品が多くありました。
忠平さんも子ども達から刺激を受けて新作の妖怪づくりにもチャレンジしたようで、「子どもの頃から妖怪に関心はあったし、それを表現したい気持ちもあったけど、なかなか親やまわりの大人に聞いてもらえなかった。今は少しずつ妖怪に寛容な社会になってきたのかなと感じる。こちらが何をあげたというより、子どもたちから妖怪のアイデアや糧をもらえた」というコメントがありました。
またリキさんからは、「大人はどうしても意図や目的を考えて最短距離で動こうとしてしまうけれど、子どもはその場で意図を持たずにいろんなことを感じてインプットすることができる。大人は反応させたがるけど、反応がなくても子どもはなんか考えていたりする。何も考えずにあてもなく歩くとかを、イベントのような非日常だけでなく日常の中に入れていくことが大事」と、日常にどう活かしていくかのお話も。
小豆島に住む参加者のお母さんからは「島外や県外の子どもと友達になる機会があまりなく、珍しい機会だった。『また会いたい』と家で話しています」という声もあり、地元の子どもにとっても、外から来た子どもにとっても、楽しい経験になったことが伺えました。
探究コネクトでは、地域で「探究的な場をつくりたい」という方たちとコラボしたイベントをこれからも開催していきたいと思います。「こんなイベントやれない?」という話も、お気軽にお問い合わせください。