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映画レビュー『ミッシング』 監督 𠮷田恵輔

「石原さとみが "自分の殻を破りたい、新しい私を見出してほしい"と監督に直訴し続けてようやくOKをもらえた作品」
「この作品のために髪をボディーシャンプーで洗ってわざとボサボサにして、爪も汚いままにしてメイクも適当にした」

主演の石原さとみがテレビのインタビューでそう話している時の顔を見て「えっ、それって映画の本質とは違くね?」と思ったが、割と評価が高かったのと、信頼しているレビュワーも褒めていたので観てみた。

確かにそこには髪をボサボサにし、唇をガサガサにして浮腫んだ石原さとみがいた。だが、言うほど悲惨な恰好はしてない。ちゃんと可愛いしちゃんと石原さとみだ。
髪の毛をボディソープで洗ったくらいでは、きっとリアルには追いつけないのではなかろうか。それが「石原さとみなんだか誰だかわからないほどの荒廃」だったなら、テレビで自慢するだけのことはあるだろうけれど。
ただただ泣きわめいたり叫んだりする彼女の悲惨さは、痛々しくて目を背けたくなる。

さて、映画自体の出来だが、ストーリー自体はさして新しいことは何もない。世間の無関心と無責任さ、自分の感情を持て余して徐々に見失っていく自我と崩壊、こうなっていくだろうなというふうに物語は展開していく。
カメラワークにも斬新さはない。こう撮るだろうな、と予想がつくようにカメラが動く。ある意味安心感はあるが、予定調和という言葉が脳裏から離れない。

崩れそうな精神を保つため、母親は「子供の通学路を見守る交通誘導」を買って出るのだが、この辺の心情の変遷が理解ししにくい。
子を失った代替行為にしては、あまりに中途半端だからだ。
これでエンディングというのも、どうにも収まりが悪い。

結局、監督は石原さとみ七変化を撮影しただけなのではないかと思ってしまった私はひねくれものなのかな。

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三島 こうこ
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