三島 こうこ

ものを書く人。未亡人。 悪性褐色細胞腫・先尖性肥大型心筋症・卵巣奇形嚢腫・PTSD・皮…

三島 こうこ

ものを書く人。未亡人。 悪性褐色細胞腫・先尖性肥大型心筋症・卵巣奇形嚢腫・PTSD・皮膚由来悪性リンパ腫など、7つの病気を抱えています。現在MABG治験中。

マガジン

  • オススメ書籍

    読んでオススメしたい書籍をここに残します。

  • 褐色細胞腫 闘病記

    日本でも稀少とされている褐色細胞腫の闘病記。オペ経験6回を経るも7回目の再発でCVD治療。その後TACE療法3回を経て12回目の再発。 2024年3月、世界初MABG療法の治験に参加。

  • お題エッセイ・小説

    ブログの読者にお題を一言いただき、24時間以内にインスピレーションで書いたエッセイや小説。 「とりあえず速く書く」ということに挑戦していた時期の名残。 プロットもテーマも描写も中途半端なところが多いので今読み返すと穴だらけ。 でも確かにあの時期、文章を書くことの大きなトレーニングにはなった。

  • 日常

    後家の日常の一部です。

最近の記事

『性暴力の加害者となった君よ、すぐに許されると思うなかれ』by 斉藤章佳&にのみやさをり 

私とにのみやさをりさんの出会いや、彼女が「加害者と対話したい」と初めて私に話したときの心情はかつてここで書いたことがある。私は彼女がこの活動を始めると最初に聞いたとき、本人に向けて遠慮なく難色を示した人間である。 さらにここにも記したが、夫の死を悼めない自分に苛まれていた時、私の心を慰撫してくれたのは性暴力被害者の彼女だった。だが、あの時「性暴力に遭った彼女」だから私を救ってくれたのではなく「彼女の裡に彼女たらしめる深い包容があった」からだったんだと、知り合って十数年経った

    • 褐色細胞腫闘病記 第47回「ダブル悪性疾患」

      佐々木先生の後をついて面談室に向かう。 ドアを開けると、執刀医の崎森先生が先に待っていた。 「三島さん、おかけください」 少し寒い。カーディガンを持ってくればよかったなと少し後悔する。面談室には大きなホワイトボードがある。何やら私にはわからない医学用語が書いてある。検索したい衝動にかられながら、私は椅子を引き寄せる。 向かい合わせのテーブルに2人の先生が並んで座る。崎森先生の左横にはパソコンのディスプレイがこちらを向いている。画面いっぱいに見えるのは私の肝臓のCT画像だろうか

      • 褐色細胞腫闘病記 第46回「小さなつづら」

        いやあ、本当に医学は日進月歩だ。 リカバリ室に移動させられた私は普通に美味しく食事が摂れ、軽口を叩き、退屈すらしていた。そして予定通りオペ5日後には一般病棟に移ることになった。痛みで七転八倒することはずっとなかった。 「ただいま帰りましたぁ~!!」 元気を引っ提げて車椅子で自分のベッドに戻る。 「おかえりなさい~なんだか元気そうですね」 向かいのベッドの川名さんが優しくほほ笑んでくれる。 左のベッドの一ノ瀬さんは、5日会わない間にずいぶんむくみが取れていた。足の太さが半分く

        • 褐色細胞腫闘病記 第45回「スケール・ゼロ」

          目覚めたら、私の口には何かが突っ込まれている。なんだこれは。苦しい。呼吸器か。 おお、ここは新しいICUだな。以前は窓もない薄暗い部屋だったけど、とても明るくて雰囲気もあたたかい。 「三島さん、無事手術終わりましたからねぇ…」 ICUの看護師の甘ったるい声。どこか間延びしたように聞こえる。 口に何か嵌められているので声が出せない。どうでもいいからこれを外してほしいとジェスチャーで必死に伝える。 呼吸器らしき物を外してもらっていると、オポッサム麻酔科医がやってきた。 「三島さ

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        『性暴力の加害者となった君よ、すぐに許されると思うなかれ』by 斉藤章佳&にのみやさをり 

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        • オススメ書籍
          5本
        • 褐色細胞腫 闘病記
          47本
        • お題エッセイ・小説
          4本
        • 日常
          5本

        記事

          褐色細胞腫闘病記 第44回「不真面目なオペ患者」

          私は、浣腸を待っていた。 手術の日の朝である。 そわそわしていた。あの羞恥プレイも13年ぶりである。あれっ…でもその前に既に若干の便意があるんですけど…早くしてくれないかな。 「三島さ~ん、お通じありましたか?」 永野芽郁によく似た若くて可愛らしい看護師がカーテンを開ける。 「えっと、浣腸は…」 「…えっ」 「…えっ」 しばしの沈黙。 「前は壁に手をついてお尻を突き出…あの、浣腸はしないんですか」 看護師がフフっと含み笑いをする。 「ああ、今はやらないんですよ。そのための下

          褐色細胞腫闘病記 第44回「不真面目なオペ患者」

          褐色細胞腫闘病記 第43回「麻酔科医の内緒話」

          私は入院前、勤めていた調剤薬局で突然卒倒した。 ドキサゾシン。 初めて聞く名前の薬、この薬のせいである。 私が再発するまでの13年という長い間に、この病気のガイドラインが新たに正式に更新され、手術の前にこの薬を段階的に投与しておくことが標準治療となっていた。 だが、なんせ情報がほとんどない時代に発病した私である。そんなことは露知らず、どうして自分が突然卒倒したのかがいくら説明されても腑に落ちないでいた。 私は、術前説明にやってきた執刀医の崎森先生を質問攻めにした。 「昔は

          褐色細胞腫闘病記 第43回「麻酔科医の内緒話」

          褐色細胞腫闘病記 第42回「末期病棟の音楽会」

          入院病棟は以前とは別の場所に立派に新設されていた。旧棟とは比較にならないほど綺麗で広く、人の動線もキッチリ改良されていた。まだ塗装の匂いすらほのかに漂っている。 「こんにちは~!! 三島と申しま~す!! よろしくお願いしまぁ~す♪」 大部屋はベッド周りも十分なスペースが確保されていて、窓も広く快適そうだ。 だが、私の元気な声に反応する人がいない。心に軽いショックを受けたが、気を取り直して挨拶の品を配ろうとベッドに近づく。 するとすかさず看護師に「物品のやりとりはすべてお断り

          褐色細胞腫闘病記 第42回「末期病棟の音楽会」

          『週刊金曜日10/20号』【なぜ、性暴力被害者が加害者と対話し続けるのか】byにのみやさをり&斉藤章佳

          「近々、週刊金曜日に対談も含めて記事を載せてもらえることになったよ」 いつものようにLINEでにのみやさをりさんと雑談をしている最中、唐突に報告があった。彼女は他人の言葉にはよく耳を傾けてくれるが、自分のことはいつも「何かのついでに」という体で話す。それは彼女独特の「照れ」と「謙虚さ」と、ほんの少しの「懼れ」からなのだろうと思う。根掘り葉掘り聞きたいのをこらえて「そうなの、よかったね、楽しみにしてるよ」とだけ伝えた。や、しかし本当は違う。実は私はそのとき、飛び上がりたいほど

          『週刊金曜日10/20号』【なぜ、性暴力被害者が加害者と対話し続けるのか】byにのみやさをり&斉藤章佳

          羽生結弦『GIFT』鑑賞記 ⑤翼と両腕

          【① ② ③  ④】 発車時刻をスマホで調べる。うまいことに15分後に発車するやつがありそうだ。しかし、新幹線乗り場がみつからない。 構内をウロウロしていたら、白ボアブルゾンの団体が6人ほどたむろしているのが見える。中国語が飛び交うのがここまで聞こえる。今日はやたら中国人と会うな。中国には熱狂的ファンが多いのを実証しているなあ。 あ、あそこにもブルゾン着てる人が。あ、あそこにも。あ、あっちにも。 でもなぜかお互いすれ違っても目を合わせない。なんか会場外で見知らぬ人とおんな

          羽生結弦『GIFT』鑑賞記 ⑤翼と両腕

          羽生結弦『GIFT』鑑賞記 ④丸ノ内線Conversation

          【① ② ③】 さあ、夢の時間は終わった。 これからはるばる帰路につかなければならない。 東京ドームを出てから、私は後楽園駅に向かった。いや、正確に言えばひたすら白ボアブルゾンの道案内についていっただけだ。が、とりあえず着いた。 しかし、後楽園駅から先は自力でなんとかしないといけない。まず東京まで出よう。丸の内線か。それにしても混んでいる。駅にいるのはほぼ羽生結弦の余韻に浸っている人ばかりのように見える。 行き先を間違えないよう何度も確認して電車に乗る。車内も混んでいる。

          羽生結弦『GIFT』鑑賞記 ④丸ノ内線Conversation

          羽生結弦『GIFT』鑑賞記 ③between K and C

          【① ②】 自分の席に座り、何気なく両隣がどんな人かを探る。どうやら二人とも私と同じ「おひとりさま」のようだ。スマホを熱心にいじっている。見るともなしに右隣の人のスマホを見ると、中国語でLINEをしている。おお、中国の方か。まだ若い。20代前半だな。ピンクのセーター、ふわふわで可愛い。なんか親しみやすそうな子だな。でも私、「你好」と「謝謝」くらいしか喋れんぞ。ああ、残念だわ。 左側の彼女のスマホには韓国語が並んでいる。ちょっと羽田美智子に似ているな。美人だ。おっきなプーさん

          羽生結弦『GIFT』鑑賞記 ③between K and C

          羽生結弦『GIFT』鑑賞記 ②開演40分前の危機

          【前回①はこちらから】 - ショーが始まってからトイレに立つ ― ファンとして、マナーの基本として、やはりこれだけは絶対避けたいものである。入念な排泄計画、これも大事な儀式のひとつだ。 「トイレを我慢するには水分摂取はゼリー飲料で」 Twitterで得た情報。私はそれを信じて3袋のウィダーinゼリーを持ってきていた。早々にトイレを済ませ、コンコースの壁に寄りかかり、ちゅうちゅうと音を立てエネルギー補給する。会場内は予想に反して暑い。本当なら喉を鳴らして水分を一気飲みしたい

          羽生結弦『GIFT』鑑賞記 ②開演40分前の危機

          羽生結弦『GIFT』鑑賞記 ①風見鶏ボアブルゾン

          「死ぬまでに一度でいいから生羽生を観たい」 ソチ落ちしてからずっと私の心にあったこの願い。 私は何度も余命宣告をされてきた難病患者だが、発病時5年生存率0%と言われて以来、なぜか毎年生存率が増加するという不思議な現象を引き起こしてきた。要は、なかなか死なずに生きた。その理由のうちのひとつは冒頭に戻る。 「死ぬまでに一度でいいから生羽生を観たい」・・・これだ。 今回、一発SS席当選のミラクルが私の身に降りかかった。 喜びより先に立ったのは「この願いが叶ったら私は死ぬのでは」

          羽生結弦『GIFT』鑑賞記 ①風見鶏ボアブルゾン

          『盗撮をやめられない男たち』斉藤 章佳

          「ね、あんたの彼氏、さっき警察に連行されてったよ」 煙草をくわえながらその人は私の目を見ずに言い放った。 そこは自動車教習所の受付ロビー。 声をかけたのは軽口を叩き合える気のいい清掃員のおじちゃんだ。 そういえばさっきパトカーが駐車場に停まっていた。あのパトカーに彼は乗っていたのか。 私は膝が震え始めるのを感じながら、その場に立ちすくむ。 初めての恋人は通っていた教習所の教官だった。 私は19歳。本ばかり読んでいる内気な、それでいて自意識過剰で、人に嫌われないように迷惑が

          『盗撮をやめられない男たち』斉藤 章佳

          『鬱くしき人々のうた 実録・閉鎖病棟』卯月妙子

          彼女と知り合ってもう20年以上は経つ。 当時の知人に〈スカトロAV女優という経歴を持つ精神疾患を持った漫画家さんだよ〉という、かなりぶっ飛んだ紹介のされ方をしたのを覚えている。 「えっ…スカトロって…」とかなり引いたのは事実だが、勧められるままに彼女の著作を読んだ。 『実録企画モノ』という漫画。とにかく衝撃だった。 何が衝撃だったかというと、スカトロAV撮影の裏側を描いてあるコテコテの内容にもかかわらず、一切汚らしさを感じなかったばかりか、あまりの痛快さ、面白さにどっぷり

          『鬱くしき人々のうた 実録・閉鎖病棟』卯月妙子

          褐色細胞腫闘病記 第41回「アメリカンブルー」

          え…今更再発って…13年も経って? そうだった。その時の私は、この病気がそういう特徴のある病気だということをすっかり忘れ切っていた。それほど油断していた。 「でも、4カ月前のCTの結果ではなんともなかったですよね」 にわかに信じがたい私は、怒りすら覚えながら目の前の自分の肝臓の画像を見る。そうだなあ。確かに肝臓の一部が白く抜けているなあ。しかもずいぶんハッキリとした影だこと。 レポートには読影医のコメントが添えられている。 【悪性褐色細胞腫の術後。肝臓と大腸を繋ぐ門脈付

          褐色細胞腫闘病記 第41回「アメリカンブルー」