ゲーム開発のコミュニケーション
こんにちは。たんけんずきです。
就職活動の際、企業が重視しているのは「コミュニケーション能力」だとか聞きますよね。
でも、「じゃあ面白いトークできるようになろう」とか「おだて上手にならなきゃ」というのは少し違うかもしれません。そういう能力もあれば良いかもしれませんが、仕事によっては必要な能力が違ってきます。
多人数でモノを作る仕事であれば、IT企業でもアニメ会社でも似ているところがありそうですが、ここではゲーム開発について考えます。
どういうコミュニケーションがある?
例えばこのようなケースがあるかもしれません。
プランナー :
「武器の攻撃モーションを作ります」プランナー → モーションデザイナー:
「武器には重いものや軽いものがあるので、それにあったモーションを作ってください」モーションデザイナー:
(軽い武器は片手で左から右にシュッと振る感じ。重い武器は両手で持って、右側から一歩踏み込んで大振りする感じで作ろう)プランナー → プログラマー:
「各武器の重さデータを用意したから実装してください」モーションデザイナー → プログラマー:
「アニメデータ2つ用意したから重さに合わせて実装してください」プログラマー :
(重さパラメータが 1 〜 100 ある。アニメは2つ。じゃあ、1 のときは軽いほうのアニメで、100 が重いほうのアニメ。その間はブレンドしよう)
結果は想像できるでしょうか?
振りが左右違うモーションをブレンドしたら、腕が体にめり込みそうです。それ以外の動きもグチャグチャになりそうですね。作り直しです…
どこが問題だった?
コミュニケーション能力には「伝える力」と「聞く力」があると言われます。
仕様を詳細に書きましょうといえばその通りですが、まず 1 の時点でどれくらいの段階が必要かプランナーが伝えられていませんね。モーションデザイナーも正確に聞くことなく2種類準備しています。
4 の時点では重さをどう扱うかプランナーが伝えられていません。5 ではアニメデータをどう使い分けるかモーションデザイナーの指定がありません。プログラマーも聞くことなく2種類のアニメを適当にブレンドしてしまっています。
それぞれのどこかで具体的なイメージを「伝える」「聞き取る」がでできていれば、全部を作り直す必要はありませんでした。
この例で明らかにするべきなのは、プランナーの「目的」と「実装イメージ」です。どれだったのでしょうか?
目的
(アクションゲームであれば)攻撃の威力とスキのトレードオフで武器を選ばせたい
ゲームルールとして意味はないが、見た目を変えて手応えを出したい
その他(なんとなく…)
実装
モーションを何段階か作って武器の重さによって振り分ける
あらかじめブレンドされることを想定したモーションを2つ用意する
1つのモーションだけ用意して再生速度だけ変える
プランナーが最初から目的と実装の両方を示すことが望ましいですが、デザイナーやプログラマーも実装イメージをハッキリさせてから受けるべきです。
プランナーの経験が浅い場合、デザイナーやプログラマーに相談する形でも良いですね。プランナーが知らない実装方法で目的に合った提案ができるかもしれません。逆にこのゲームではブレンドができない、などのできない事情があるかもしれません。
それと、この例では目的の部分について議論することも必要でしょう。
目的2 - 実装2 = ゲーム的意味はないが、見た目をブレンドする
で進める場合、ブレンドされても破綻がないようなモーションを用意します。ただし、それだと2つのモーションを構えや軌道を全く違うものにするような大きな変化はつけられません。それで果たして手応えが出るのか?が問われなければいけません。
目的1 - 実装1 = 武器選択基準になるため武器種&重さごとのモーション作成
で進める場合、段階が多ければ当然それだけ作業が増えます。
武器種ごとにモーション5段階、初期は8種類で40個。さらに武器種は後で追加されていきます、という仕様だとかなりの作業量ですね。
デザイナーはコスト予想を「伝える」必要がありそうです。その上で、それに見合った仕様なのか?が問われなければいきません。
そもそも軽い武器と重い武器を別種類にして、武器種を少し増やす代わりに1武器種1モーションとするのが良いではないか、など案だしが必要でしょう。
うまい組み合わせを考えるとか、特殊な技術やアイデアで組み合わせの数を減らせる場合もあるかもしれません。そういう「提案」もあれば良さそうです。
このような、イメージを正しく「伝える」「聞く」「提案する」コミュニケーションがゲーム開発の様々な段階で必要になってきます。
コミュニケーションの効果
ゲーム開発はこれが絶対に正しいとは言えないものも作る必要があります。しかし「良いもの」「悪いもの」は存在します。それは企画コンセプトに沿っているかどうかによっても大きく変わります。
正しく「伝える」「聞く」「提案する」ことが無駄な作業も減り、クオリティアップにも繋がります。
最後に
本稿では、開発段階におけるコミュニケーションの例示と重要性について書きました。
企画立案やプレゼンテーションに関わるコミュニケーションについても書きたかったのですが、長くなったので次回にて。