優しいお惣菜屋さん
パリ滞在中、アパルトマンの近くにあった「サン=タントワーヌ通り」や「リヴォリ通り」は、バスチーユから伸びている大きめの通りということもあり、何度も歩いていました。
通り沿いには、美味しそうなお店がいっぱい。
パン屋、ブーランジェリー、チョコレート専門店、チーズ専門店、クレープ屋、ワイン専門店、果物屋…モノプリ(スーパーマーケット)もありました。
そんな中に、いつもつい、立ち止まってショーケースの中を見てしまうお店がありました。
「お惣菜屋」です。
ヴォージュ広場から割と近い場所にある、「Maison Verot」というお店でした。
ショーケースの中には、大きなテリーヌやグラタンや、見たこともないようなお惣菜が沢山並べられていました。
どれも美味しそうなのだけど…一体なんなのかが分からないものがほとんどでした。
googleの画像翻訳で札の文字を見てみれば分かるかも…と思いましたが、ショーケースの向こう側には、常にお店の方が待ち構えています。
絶対、声かけられちゃうな…。
そう思って、いつも店先で少しだけキョロキョロして、そそくさと去ってしまっていました。
気がつけば、お惣菜屋さんで何も買うことなく、帰国前日に。
…これではいけない…!
店先で、あるひとつのお惣菜に狙いを定めて、私は翻訳アプリにある言葉を打ち込みました。
「このお惣菜は、このまま食べられますか?」
↓訳されたフランス語
「Puis-je manger ce plat d'accompagnement tel qu'il est ?」
スマホにこの文を表示させておき、意を決して店員に「ボンソワ〜」と声をかけました。
メガネの若い男性の店員が、ニコニコの笑顔で「ボンソワ!」と返答してくれます。
私はカチコチの表情のまま、ショーケースの中の気になっていたパイを「セ、セ、」と指差し、スチャッとスマホを店員に見せました。
スマホを見た瞬間、メガネの店員の表情から突然笑顔が消えて、真顔になりました。
あ…こういうやり方は、やっぱり良くなかったかな。。。
もしかしたら、翻訳がヘンテコな内容になってしまっていたかも…。
緊張に耐えられず、スマホを持つ手がプルプルし出した頃、
「オー〜!!!」
メガネの店員は満面の笑顔になりつつ声を出し、
「ごめんね、これはオーブンで調理が必要です!」
と英語で説明をしてくれました。
やった!通じた!!
嬉しくなり、こちらも笑顔になりますが、
ん?オーブンで調理…宿泊先のアパルトマンには、レンジはあってもオーブンはない。。。
食べるのは難しいと分かり、がっかり顔の私を見たメガネの店員は、
「まって、まって」
と両手をパタパタさせながら、
「セ、👍🏻」
「セ、🙅🏼♂️」
「セ、👍🏻」
と、ショーケースの中のお惣菜を、一つ一つ指差しては、ジェスチャーしはじめました。
すぐ食べられるか、そうではないかをニコニコしながら教えてくれたのです。
丁寧な対応のおかげで、狙っていたパイ以外のすぐ食べられるものがひと通り分かった私は、その中からキッシュを2種類購入できました(ほうれん草とサーモン、野菜)。
「温める?」
と聞いてくれたり、会計も丁寧で、去り際もニコニコしながら手を振ってくれました。
ホカホカに温まった2種類のキッシュを持ち帰り、奇妙なアパルトマンで食べ比べを楽しみました。
どっちも美味しいし、小さく見えてすごいボリューム!食べきれず、半分は朝ご飯にとっておきました。
満たされたお腹でぼんやりしながら、
「フランス語…せめて英語が話せたらなぁ」
と、いつもの後悔。
でも、話せなかったからこその思い出でもあるなぁ、とも思いました。
英語、フランス語、もうちょっとコミュニケーションが取れるように、勉強しようかな。🐕