![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/157894768/rectangle_large_type_2_b4a6b730d0c166e845ed3f0d21a711b0.png?width=1200)
ロストレガシーライセンス対応カードゲーム制作記(第3回)ローグライトを考える編
前回、こんなことを言ってました。
ところで、ローグライトをフィーチャーしたボードゲームってあります?
あれば参考にしたいし、ないならウリになりますね。
じつはあのあと、思い出しました。Slay the Spireボードゲーム化のクラファン(英語版$3,939,337、日本語版¥61,173,505を達成。パネェ)があったことを。
元々がカードゲームをモチーフにしたものだし、そりゃ作っちゃうよなあ。
PCゲームを忠実に再現しようとしているようで、おかげでスーパーリッチなコンポーネント。というわけなので、今回作ろうとしているゲームの参考になりそうにないんですよね。リッチとは対極、ミニマルなゲームを作ろうとしているので。
なので購入は控えるというか、どちらかというとそんなデカイものぽんぽん買えないというか。でも、ボドゲカフェやプレイ会で見かけることがあったらぜひ触ってみたいですね。超話題作なので。
さて、前置き長くなりましたが、ロストレガシーライセンスを利用したカードゲームを作ろう、という連載も3回目。今回はローグライトをヒントに「繰り返しプレイが楽しくなる」を考える回をお送りします。いわばゲームの骨子の部分。ゲームデザイナーにとって、もっとも自由な時間。ある程度制約が決まったので、あとは好きにやってくださいよ、のターン。腕が鳴ります。
ただ、予備知識部分を解説するとものすごく長い記事になってしまうので、そこははしょってしまうことご了承ください。ロストレガシーって何? という方は軽く予習していただけると、より理解がすすむと思います。
紹介blogや動画は、けっこうあります。
何部くらい売れたら、ここに至れるのだろう。
インフレから考えてみた
ローグライトの面白い部分は数あれど、最初に着目したのは何をインフレさせて、どんな高い壁を乗り越えさせようかという部分。
ローグライトには、ゲームオーバーとリトライを繰り返すゲームである、という死にゲーに似た側面があります。ただ、何かしらの積み上げ要素があるため、ゲームへの慣れと相まって、強くてニューゲームに似た感覚で周回プレイを重ねていくことになります。言い換えると、はじめは無理ゲーだったものを周回で積み上げられた力でねじ伏せていく、といったカタルシスのゲームであるともいえます。
それを、ロストレガシーに落とし込むことはできないだろうか。
例えば《失われた遺産》獲得時にスコアを計算して、クリア時の評価とする。
その上で、繰り返しプレイによってスコアがインフレする。
というのはどうだろう。
わりとあっさり遺産を獲得できるけど、手順を踏んで(リスクを負って)《失われた遺産》を獲得した方が高スコアになりやすい。そういうプレイを助長するカード効果、バランスにする感じ。
で、さらに周回プレイを重ねると徐々にスコア獲得しやすくなっていくようにする。具体的には、プレイのたびにデッキを1枚ずつ入れ替えて対応する。(基本セットでゲームを開始。その後1戦ごとに1枚、基本セットのカードを1枚抜いて、拡張セットのカードを加えていく。拡張セットのカードが加わることでさらに高スコアが狙えるようになる)
そして累計スコアが一定値に達した時点で総合優勝が決まる。
これならインフレが起こるし、逆転も狙えるし、派手なゲームが期待できそうです。
欠点としては、スコア計算用の装置(カウンターなど)が必要という点。紙に記録してもらってもいいけど、ちょっと手落ち感があるので何かしら付属できるといいな。けど同時に、ミニマルから遠ざかるのは、よくない気がします。
なお思い付きであっても、勢いのまま仮説・仮設計・検証(なるべく脳内で。複雑になりそうならexcelで)を繰り返すのが私のスタンスです。こんな感じで思考実験を繰り返しているうちに、徐々にやりたいことやゴールイメージがクリアになっていくのです。
ちょいニュアンスが違うけど、拙速は巧遅に勝る。マジで。
割り切りプレイの再現
続いて考えたのは、準備のため・稼ぐためのプレイへの対応。勝負を決めにいくのではなく、効率よく稼ぐための割り切りプレイの再現。つまり、何周もプレイすることを前提として、毎回ゴールを目指すのではなく、来るべき勝負に備えて準備するのが楽しいのもゲームの魅力の1つだよね、というもの。俗にいうレベル上げ、素材狩り。
これを、ロストレガシーに落とし込むことはできないだろうか。
そう例えば、どのカードを使って《失われた遺産》を獲得するかに拘るゲームにしてみようか。
《失われた遺産》の獲得手段が複数あり、そのためにカード効果がある。で、フィニッシャーとして利用したカードに対応した報酬を得られるようにする。
その報酬は、拡張セットの枠を使って、カードとして提供する。(デッキに混ぜるのではなく、プレイヤーが手札とは別に所有する)
そして周回プレイ時には、報酬カードの恩恵を受けられるようにする。特定のカードの効果を変化させられたり、UNO的な使い方(スキップ、リバースなど)ができたり。
本来は2択を強いられるゲームですが、報酬カードが充実していくとその選択肢が増えてより勝ちやすくなるというものです。
欠点は基本+拡張の組み合わせバリエーションからくる、ゲーム展開やカードの多様さを失うこと。それでも価値ある体験を作れたらいいけど、かえってゲームの寿命(飽きるまでの時間)を縮めてしまうのではないかという懸念。
あとは、報酬が偏ると有利になり過ぎる点。負けてても逆転可能性十分あるよ! というバランスにできるかどうかがキモになりそうです。
物語性
もう1つ考えてみよう。
そうですね、周回プレイならではの物語性。これを活用できないだろうか。
1周目では全員協力者だったのに、何周もしているうちに疑心暗鬼になっていくというような。
お話を用意するのではなく、ナラティブにおける物語性(プレイヤーごとユニークな体験。ドキュメンタリーから感じるストーリーやドラマに近いニュアンス)です。
例えば、ゲーム開始直後のプレイヤーは全員が《失われた遺産》探索の来往者という立場とする。しかし1ゲーム終了するごとに、プレイヤー1人1人に、徐々に役割が割り振られていく。
具体的には、ゲームの勝者が役割カードの山札から1枚引き、その内容を見たうえで、他のプレイヤー1人を選びそっと手渡す。そこには、「《失われた遺産》の守護者たる使命(《失われた遺産》の封印を3回行え)」「敵対者の排除(『X』のカードを使い、暗殺を3回成功させよ)」「少女を護れ(番号①のカードを手放すことなく勝利せよ)」などのミッションが記載されている。
プレイヤー間の利害が一致したり、しなかったりすることで、裏切りが発生するイメージです。
なんてことを考えていたら、もうテスト前日でした。
ここから1日でルールを確定させて、カードを作らなければならない。
マジか。
このゲームをプレイしたひとの感想
さて、ゲームが完成し、テストプレイも好評だった。
確かにロストレガシーだ
カオスとロウの概念は、新しかったね
人間性などとうに捨てた!
絶対勝ったと思ったのに、あそこから逆転あるのか
いつからだまされていたんだ! みんなは気づいていたの?
おかげで勝てました(にっこり)
このカードだけど、プレイ内容こうした方が……
いや、まだ作っていないんですけどね。
でも、こうしてプレイ後の最初の一言、レビューサイトへのコメント、X(旧Twitter)への投稿をイメージし、それを書き出すことは有効です。
これから作ろうとしているゲームの輪郭が確たる認識に変わっていき、迷いがなくなりますので。
次回予告
テストプレイ前に、1回連載をはさんでみました。
締め切り直前の「いつまで理屈こねてるんだ」「いいから手を動かせ」VS「いやまだ確信もててないし」「カード作るだけなら半日、いや3時間あればいけるから」的な焦りは感じつつ、でも連載としてはこの回があるとないでは厚みが違うかな、と。
というわけで次回こそは、プリプロ版がどうなったのか&テスト当日の様子をお送りします。
ではまた。