所要時間15分 IB式アイディア発想法でボードゲームの骨子を考えてみた
ゲームのアイディアって、誰が、どうやって、生み出しているのでしょう。
がんばってひねり出す?
天才のひらめき?
そのための技術や法則がある?
これからボードゲームを作ろうと思ってつい先日noteをはじめた、何者でもない私が語るのもおこがましいのですが、今回のテーマはこちらです。
とりま、ぐぐってみた
定番のテーマらしく、検索すると記事も手法も山ほど見つかります。ざっと眺めたところ「そのための技術や法則」がありそうですが、そう見せかけないと読んでもらえる記事を作れない、という推測もできます。
けど、どう考えても「天才のひらめき」で作られているじゃないの? というゲームが世の中にはあふれているようにも思えます。そしてそんなゲームについては方法論ではなく開発者インタビューの形を借りてふわっと語られていることが多いようです。
また「がんばってひねり出す」に関してですが、これは先述した2つとは別軸で語られるべき項目です。
努力を努力と思わない、という考え方や議論はさておき、ゲームを作るために全BETしてる人が多いのは確かですし。(しかも成果が伴うわけではない闇の深さよ)
と、こんな書き出しをしておいてなんですが、それらの紹介や解説をするのは面倒くさい野暮というものなので割愛します。ここでは「このときは、こう考えていた」という事例をあげながら、最後に一つアイディアを出してみるところまで実践してみようと思います。
つまり、行き当たりばったりです。行き当たりばったり式アイディア発想法です。
事例1
事例をあげながらとしましたが、記事の冒頭ではこうも書いています。
おま、ボードゲーム作ってねーじゃねーのよ。それなのに事例なんてあげられるのかい?
事例はあるよ!
ゲームは未完成で、時間とお金もないけど、アイディアと勢いはあるよ!
というわけで、こちらの記事を引用しながら進行していきますので。
よろしくどうぞお付き合いくださいませ。
はい、まずはこちらから。
とはいえ、すでに「このときは、こう考えていた」を語ってしまってますね。すなわち課題「相手に躊躇してしまい対戦ゲームを楽しめない人がいる」に対する解法・アイディアが「良心の呵責なくボコってOKな代理プレイヤー(NPC)を用意」というものでした。
いわば課題解決のためのアイディア発想といえるものですが、ここではおかれた状況を別の状況に置き換え、そもそもの課題をなかったことにしているという方法をとっています。
そしてこの方法、いくらでも応用がききますし、バリエーションも作れます。例えば「ゲームの流れに不可避の攻撃フェイズを用意し、かつ対象を指定できないようにする(ランダムや席順で固定するなど)」なんてのもありですね。
ポイントは、解決すべき課題という観点をもって、状況をピンポイントで設定することです。課題が明確になれば、解法も考えつくってものです。
事例2
見切り発車のわりに、スムーズにいきました。
というわけでもう1例。次はこちら。
大風呂敷広げてますね。協力型どころかゲーム全般詳しくないと一石投じられないように思えます。しかも実際には投じられていないのだから……と、傷をえぐってもいいことないのでイジリはこのくらいにして、さて本題へ。
まず当時の協力型ゲームをしらないとはじめられないので、いくつかピックアップしてみましょう。
1つめ。協力型ゲームの代表作といったらこれ、パンデミック。フォロワーがとても多く、ジャンルを切り開いたといえる傑作です。
が、明確な課題もあって、それは参加者のパワーバランスが悪いと声が大きな人にその他が従う構図になりがち、というもの。つまり、当事者なのに意思決定の機会を奪われてしまうんですね。
これは根深い問題で、古典ゲームのスコットランドヤードも同様の欠点を抱えています。アドバイスとマイクロマネジメントを混同することが起こす悲劇。社会の縮図。忘れたころにやってくる。
2つめ、コードネーム。チームでの協力対戦もの。ヒントを出す人と回答する人に分かれて、カードに書かれたワードを推理するというゲームです。
対戦相手にはわからないよう、味方だけが正解できるよう、絶妙なヒントを提示できたときのドヤ感といったら。
しかし一方で、初対面同士だと絶妙なヒントを出しずらい、というのが課題です。パーソナリティがわかっている者同士の暗号めいたやりとりがコミュニケーションに深みを生み、面白さに拍車をかけるのです。
最後、3つめ。RPG代表からアンドールの伝説もいっときましょうか。「1度しか遊べない」と銘打たれたシナリオ付き・行動回数制限ありの近代双六RPGの草分けです。
が、運要素が強すぎるという課題がありました。重要な決断をいくつもせにゃならんのに、経験則から学び実践するための試行回数が少なすぎるという。よって一度は失敗して、ある程度内容把握したうえで本番いってみよう、みたいな遊びになりがちなんですよね。
なおこのネタを考えていた当時、スカイチーム、ito、ザ・クルーはまだ世の中に存在していませんでした。
それと人狼。これは宗教戦争に発展する危険物なので軽く扱うわけにはいかず、今回は除外しました。
ということで、まとめ。課題の把握が目的なので極論を述べます。
よくわかっている人が全体をコントロールした方が効率がいい
人間関係の深さが面白さの大部分を占める
互いをフォローし合うと手番不足で勝てないので、運にまかせた個人プレイに走らざるを得なくなる
いちおう補足しておきますと、ここは批判の場ではありません。取り上げたゲームはいずれも傑作で、適切なメンツがそろったときに遊ぶと最高に面白いゲームです。
ですが、どんなに評判がいいゲームでも「期待していたほどじゃなかった」ということ、ありますよね。あるいは「自分にはあわなかった」という思いをしたりとか。
ここではその要因として「適切なメンツが揃わなかったため」という仮説を立て、その前提で語っているものとして、ご理解ください。
と、エクスキューズを入れたところで続けますね。
さて、課題の裏返しは教訓です。上記から得られた教訓、つまり協力型ゲームを面白くするには、次のことに気を付けてデザインするとよい、といえるでしょう。
プレイヤーがそれぞれに意思決定しながら進行する
初対面でも旧知の仲でも変わらぬ面白さが根底にある
集合知で解くのではなく、ゲーム内のアクションが互いを高めあう
前置きが長くなりましたが、いよいよ結論。事例2「タッグマッチプロレス」において、上記の教訓をゲームに落とし込むためにやったことは、会話によるコミュニケーションを禁止することで他プレイヤーへの介入を封じつつ、記憶をたどってカードを選ぶ(その結果を全員で共有する)ルールとすることで互いにフォローしあうことを強要し、時にそれを逸脱することで高得点が狙えるルールとすることでアドリブ・セッションによるドキドキを提供したというわけでした。
総括していきます
おかれた状況を別の状況に置き換え、そもそもの課題をなかったことにする、という発想をしてみる
多くの人が面白いと感じながら、一方で「そうでもない」と感じてしまった人がいる場合、その要因を特定・解決できれば新しい価値を作れる
ようは、課題の中にヒントがある。アイディアとは、課題を見抜き、対策することなのです。
事前の準備なんていりません。
情報を並べて、課題を抽出し、その取扱い方法を考える。
つまり、やりながら考える。行き当たりばったりです。行き当たりばったり式アイディア発想法なのです。
以上、ゲームのアイディアって、誰が、どうやって、生み出しているのでしょう。という問いに対する解法の1つを紹介してみる試みでした。
なお「誰が」に関しては言うまでもなく当事者意識をもっている「私」であり「あなた」です。
最後に一つアイディアを出してみるところまで実践してみよう
ここまでできたらすごいよね、と特に何も考えずに冒頭で宣言したこれ。
はたして有言実行といくのでしょうか。
今回の記事は「潜在的な意識を言語化する」でも「作りたいものを形にする」でもなく「課題を設定し、それを解決するとゲームになる」という内容でしたので、まずは課題設定からはじめます。
ただし、何もないところから発想はできませんので、身近なところで、最近あそんだゲームへの気づきから課題を設定してみましょうか。
ボードゲームではない!
けど今回やっているのは行き当たりばったり式アイディア発想法なので、ご勘弁ください。というか、こういうところからでもやりようがあるんですよ。なんなら題材はゲームじゃなくてもいいんですが、ひとまず、このままやっていきます。
HELLDIVERS2は4人で協力して大量の敵と戦いながらミッション達成と脱出を目指すゲームなのですが、最大の特徴はフレンドリーファイアあり(攻撃が味方にあたるし、それなのに視界が悪いし、なんなら味方を巻き込まずに戦い続けることが困難)なシューターということです。
それでいて悲壮感が出ないよう、操作キャラは感情移入しにくいよう全身宇宙服のモブデザインだったり、死んでも次がいる(短時間でリスポーン可能な)設定とバランスになっていたり、脳筋・バカゲーのノリで作られた世界観だったりと、様々な配慮がされています。
では、このゲームの課題とはいったい。プレイヤーの声を拾って確認していきましょう。
運用型のゲームあるあるですね。
総じて「調整」に関わるものなのですが、プレイヤーが切り開いた戦略・戦術が潰されたこと、それに代わるご褒美がないこと、納得感のある説明がないことに怒り心頭なのが伝わってきます。
つまりここで実践すべきは、これらの課題の解決。同時にボードゲームへの落とし込みです。
解法を羅列してみる
新しい何かを生み出すのではなく、ルールを変える。ルールが変われば課題が消える。そんな気概でやっていきましょう。
ナーフを受け入れる
ゲーム進行にあわせて武器がナーフされ敵が強化される、という理不尽な状況でどれだけうまく立ち回ることができるか、という体験が楽しいゲームにする
何かにつけて「クソ運営が!」と言うのが楽しくプレイヤー間の絆が深まる、そんな感じ
視点を変える
不具合対応・機能追加・バランス調整をコンプリートするのが無理なスケジュールで何を拾い何を捨てるか、という選択を強いられるゲーム運用側視点のゲームにする
現場を知らないプロデューサー、無責任なコミュニティマネージャーに振り回される開発現場を体験しよう(お仕事体験だ!)
ナーフを利用する
武器のナーフ・敵の強化を、武器の強化・敵の弱体とセットでプレイヤーの選択にゆだね、あえてピーキーなバランスを生むことで到達可能な最高の結果を出すことを目的としたゲームにする
万能な優等生ではなく凸凹な特化型にこそロマンがある、そうだろう?
それぞれゲームへの落とし込みはできそうですが、いずれの場合もマップ上にキャラを配置するシミュレーションゲームではなく抽象化された(概念を切り取ってバトルはシンプルにした)ゲームにした方がよさそう。
ハチャメチャなゲームバランスが生み出すカオスの中で喘ぎながらハイスコアを目指すのが楽しい、というのを実現するのに必要な要素を厳選・洗練させていくイメージです。
はい、いかがでしたでしょうか。
とってもカンタン!「IB式アイディア発想法でボードゲームの骨子を考えてみた」をお送りしました。
なお「15分」というのは、本項目「解法を羅列してみた」にかかった時間です。とりあえず書きなぐるのに5分、体裁を整えるのに5分、仕上げるのに5分。が、ここの時間はちょっと人によるところが大きいので目安と捉え、課題解決に着目するとアイディアはいろいろ出てくるよ、というところを持ち帰っていただけたら、書いたかいがあったというものです。
次回予告
ひとつゲームのネタを思いついたので、それについて書き出してみようかな。ネタそのものになるか、それに絡めた話になるかは、わかりませんが。
ということで引き続き、よろしくお願いいたします。
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