夏はジム・ジャームッシュ
夏になると...、フェスに行きたいのだろうか、海に行きたいんだろうか?!
サマーソニックにフジロック、たくさん魅力的なフェスがあるけれど、私は昨年「ジム・ジャームッシュ レトロスペクティブ2021」で、夏の一時期、集中して毎日映画館に通い、ジム・ジャームッシュを観て、フェスに行ったみたいで最高に楽しかったので、なんだか今年の夏も観たくなった!
まだ観たことないジム・ジャームッシュは
「ブロークン・フラワーズ」
だった!
ビル・マーレイ主演の映画で、仕事では成功しているが、私生活は恋人に振られたばかりで冴えない初老の男が主人公だ。男は、ある時昔の恋人らしき女性から手紙が届く、差出人はない。書いてある内容によるとどうやら女性は別れた後に男の子供を密かに出産していたらしい。男は昔の恋人たちの近況を確認しに旅立つ、というものだった。
私はビル・マーレイを「ロスト・イントラストレーション」で見た時、すごく好き、というわけではなかったのだけど、ジム・ジャームッシュやウエス・アンダーソンの映画で見てすごく好きになった。
あの哀愁漂う顔の演技と存在感ってすごい。やっぱり、一流のベテラン俳優という感じ。
ジム・ジャームッシュの映画で見ていてお気に入りは、映画のセット(インテリア)がかわいいし、役者さんの着ている服も細かくかわいい。例えば今回で言えば、ビル・マーレイは「フレッドペリー」のジャージのセットアップを着ていて、しかも日替わりで色が違うセットを着用していてすごく可愛らしかった。初老の男性がである。そういう細かい設定が好き。
時々、投入される、クスッと笑えて、だけどなんだかほんのちょっと切ない、ブラックユーモアが最高。
昔の恋人たちに会う事は出来たのだけど、時が経ち、今では恋人たちも家庭や夫婦の悩み、を抱えていたり、訪れた男の事を驚くものの歓迎はされず、手紙の謎も解けなかった。
「解決してない!」結末で笑ってしまって、しかも、最後は元カノより、自分に息子がいるのかもしれないという事に躍起になって探し出そうとするがうまくいかず、輪郭がぼやけたままエンディングを迎える。
最後のビル・マーレイの顔、悲しみと皮肉が混ざり合ってとても良かった。
ジム・ジャームッシュの映画を好きになって思うのは、日常の一部分を切り取って描いているから、結末は映画の中ではわからないという事。私なりの解釈だけど。だが、誰か傷つけるわけでもなく、すごく素敵だと思う。
最近読んだ本の中でこんな事が書かれてあった。
世の中では、人生に意味を見出そうとするから心が疲れるし、悲壮感が溢れ出すこともある、
という考え方だ。
ジム・ジャームッシュの映画に描かれているように、ある期間のほんのひと時には意味はない。ただ明日に繋がっているだけ。
毎日イキイキと過ごすモチベーションももちろん大切だけど、切り取った今日が明日に繋がるように今日を楽しみながら気楽に過ごすことがいいのかなあ、なんて思う。(但しコンディションばっちりの日、ばかりではない!)
日常って素晴らしい、私がジム・ジャームッシュを観て思う事はそれかも!
(MacBook)