金曜日のコラム「ホテイサンハカミサマダ」
連休の間の金曜日は、仕事だった。
何を書こうか考えた。仕事をしながら、私の住む宮城県で毎年開催されるロックフェスティバル「ARABAKI(アラバキ)」での印象深い出来事を考えていた。アラバキは東北では最大規模のロックフェスで歴史も長い。
コロナ禍になる前は毎年参加していた。バスで行けて日帰りできるのでとてもありがたい。今年は3年ぶりに開催されたようだ。私が最後に参加したのは中止の年の前の年だ。
その前年の2018年のこと。元BOØWYのメンバーでギタリストの布袋寅泰さんのステージがあった。ロックフェスは普段自分が聴かないようなアーティストの方の演奏も幅広く鑑賞出来るのでそういったところがすごくいいなあと思う。新たに発見がある!
私もそのひとりで、普段布袋さんのライブはなかなか足を運ばない。その日は布袋さんのステージが行われる。会場に足を運ぶと、私と同じ位の世代の人、もう一回り上の世代の方、そんな年齢層で会場は満員だった。そんな中、若者カップルが流れ込んできた。そして彼女が彼氏に聞いた。
「ホテイサンッテダレ?」
私には魔法の呪文に聞こえた。その後に彼氏が彼女に布袋寅泰さんの経歴を説明していた。
なるほど、そうかあ、と思いながら私は
「布袋さんを知らないんだ?」
すごく不思議な気がした。確かに、自分が好きなアーティストでなければ、知る事はないかもしれない。けれど布袋さんと言えば、私が中学生の頃、尾崎豊さんと並んでBOØWYが大人気だった。(世代的にはもう少し上らしい)男子はギターを真似て、
「ホテイサンハカミサマダ」
そんな風に言っていた。それも魔法の呪文のよう。まるで
「ワレワレハウチュウジンダ」
みたい!
男子も女子もBOØWYの曲を聞いて
「ホテイサンハカッコイイ」
そんな風に言っていた。だから、その時代の布袋さんを知らなくても、映画「キル・ビル」の音楽が有名だし、見る機会は多いような気もする。でも、世代が違うと、知ってる、知らないというのは様々なんだなあと思った。
そしてステージが始まった。布袋さんのステージはすごい迫力で、私もあまり詳しくはないのだけど、
「ホテイサンスゴイナア」
と魔法の呪文のようにずっと呟いてしまった。演奏があっという間に終わった。みんなが
「ワァー」
と熱狂していた。
帰り道、ぎゅうぎゅう詰めの人の流れの中、私の前には先程のカップルがいた。
彼女が彼氏にこう話しかけた。
「ホテイサンッテギターウマイネ」
私にはなんだかすごくかわいく聞こえたその魔法の呪文。布袋さんの演奏は確かにすごかった!やはり布袋さんを知らない人でも、布袋さんのすごさは伝わるのだなあと思った。
すると彼氏が
「な、だから言ったろ」と答えた。
だからいつでも思い出す、男子がいつも言っていた。
「ホテイサンハカミサマダ」
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