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お友達ロボットは親友ドッグの夢を見るか『ロボット・ドリームズ』


(C)2023 Arcadia Motion Pictures S.L., Lokiz Films A.I.E., Noodles Production SARL, Les Films du Worso SARL

大都会ニューヨーク。ひとりぼっちのドッグは、
孤独感に押しつぶされそうになっていた。
そんな物憂げな夜、ドッグはふと目にしたテレビCMに心を動かされる。

数日後、ドッグの元に届けられた大きな箱―― それは友達ロボットだった。
セントラルパーク、エンパイアステートビル、クイーンズボロ橋……
ニューヨークの名所を巡りながら、深い友情を育んでいくドッグとロボット。
ふたりの世界はリズミカルに色づき、輝きを増していく。

しかし、夏の終わり、海水浴を楽しんだ帰りに
ロボットが錆びて動けなくなり、
ビーチも翌夏まで閉鎖されてしまう。
離れ離れになったドッグとロボットは、
再会を心待ちにしながら、それぞれの時を過ごす。
やがてまた巡りくる夏。ふたりを待ち受ける結末とは―― 。

『ロボット・ドリームズ』オフィシャルサイトより引用

感想

 何かと巷で評判になっているので、アニメ好きとしては見逃すわけにはいかないということで観賞。
 いわゆるカートゥーン調の作画でザ・海外のアニメと言う感じの作風、セリフはなく表情や感嘆声のみでキャラクターの心情が語られる。これがかなり効果的でシンプルかつ鮮やかな作画はまるで映画に絵本のような印象を与え、作中に登場する名曲がキャラクターの心情を代弁していることから友情を物語るのに下手なセリフは不要だと気付かされた。
 ロボットの健気さや物語の結末に胸が熱くなるのは間違いない。日本アニメ好きでカートゥーン調に馴染みがない人ほど見てもらいたい

人の心を持ったロボットが最も尊い

 本作の主人公は孤独なドッグとドッグが迎えた友達ロボットのロボットなのだが、タイトルの『ロボット・ドリームズ』にあるようにメインはロボットにあるように感じた。ロボットは翌年の海開きまで会えないドッグのことを思い、何度もドッグの元へ帰る夢を何度も見る。彼の見る夢は辛い現実から逃避するようなもので、船の修理パーツとして足を壊されながら見る夢は船員が自分を直してくれてドッグの元へ戻る夢。冬場凍りついた海岸で見る夢は雪解けと共に、ドッグと一緒に見たオズの魔法使いの世界の中でドッグの元へ戻るという夢である。
 しかし、こういった希望的に見られる夢の中にもロボットはドッグが自分を忘れて新しい友達を迎えているという不安で目が覚めてしまう。作品を通して描かれるロボットの健気さが感情を揺さぶられる。
 一方でドッグはロボットを救い出すことを忘れないでいるが、孤独を埋めるためにロボット以外の代わりになるつながりを探すことに余念がない。その結果、ロボットが浜辺からいなくなってしまってからも新たに友達ロボットを迎えている。もちろん彼もロボットとの再会を望んでいたであろうが、やはりロボットは自身の孤独を埋めるための道具の一つだったのではないかと思えてくる。

Septemberが全て持っていった

 一度スクラップにされたが新たなパートナーによって組み立て直されたロボット、互いに新たなパートナーを見つけたなか、ロボットはドッグを発見する。彼はドッグに駆け寄りたかったが、お互いが新たな人生を送っているということからロボットはドッグを遠くから見つめるのに留まり、二人の思い出の曲である本Earth, wind & fireのSeptemberをかける。
 この曲の一節目「Do you remember?」これが流れた瞬間、不思議と二人は踊り出す。それはお互いが決して楽しかった日々を忘れていないという証明であり、Septemberがかかると誰もが予想できていただろうがこの展開には込み上げてくるものがあった。 

まとめ

 80年代のニューヨークを舞台の本作はキャラクターが動物で描かれている。ある意味ステレオタイプ的な描かれ方かもしれないが人種のサラダボウルと称されるアメリカを表現するには的確だと感じた。
 ドッグとロボットは友人にも恋人にも捉えられることができ、過去を思い出として今を生きていくという切なくも尊い二人の関係性が描かれている。
 鮮やかな色彩のイラストとキャラクターの心情を代弁する名曲の数々。この映画は映画の評価として度々用いられる”涙が止まらない”のような陳腐なものではなく心の奥にジーンと沁みる温かな感動を与えてくれるものだろう。

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