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谷郁雄の詩のノート41

近所のスーパーの花のコーナーで撮影した1枚。この日が「愛妻の日」に指定されてしまったのは、いつのことだったのでしょう。いろんなことが、勝手に決められていくのは腑に落ちません。「愛妻の日」とやらがめぐってくるたびに、ぼくはまた一つ齢をとります。こうして年輪を重ねていきます。愚かなままで。郁雄くん、誕生日おめでとう🎉(詩集「詩を読みたくなる日」他、好評発売中)


「バイバイ」

母が
病室を出るとき
父はバイバイと
手をふっていたという

そのあと
父は
独りで死んだ

バイバイ
また明日

そして
父のいない
明日がやってきた



「平気」

一人が
泣けば
みんなが
泣き出してしまうから

みんな
平気を
装っている

泣きたくなったら
一人で
こっそり泣くのだ

お風呂とか
布団の中で



「リス」

森の中で
リスが
落ち葉を
カサコソと
動かす音

ぼくが
聞きたいのは
小さな生き物が
生きている音

そんな
小さな音の
気配を
絶やさないように
できるだけ
そっと
歩くこと
同じ地球の上を

都会の
雑踏で
森の静けさを
思うこと

リスが
木の実を
かじる音に
歩みを止め
目を細めること

©Ikuo  Tani  2024


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