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谷郁雄の詩のノート55

高円寺の名物イベントの阿波おどり。今年もまた、その日がやってきました。これから3日間、高円寺は1年でいちばん賑やかな時を迎えます。駅の北口にはたくさんの提灯をぶらさげた舞台が設営されていました。その祭りが始まる前の、まだ静かな駅前風景を思い出に1枚。「つぎのnoteの写真はこれで決まりだな」と心の中で呟きながら。インスタにも同じ日の別の写真を投稿しました✨



「坂道」

一人で上る
坂道は
長くて
きつい

けれど
そうじゃない
日もある
幸運が
微笑みかける日

いつもの
坂道が
なぜか
やさしい坂道になる

風の手が
ふわりと
ミニスカートを
持ち上げて
時が止まる朝



「版画」

ただ
白いだけの
寂しい壁

人生の
小さな余白

妻が
その余白に
自作の版画を
飾ってくれた
木の額に入れて

外へ出るときも
外から帰ってきたときも
黙って
ぼくを見つめている

明日が
見えないときも
いい詩が
書けないときも

絵は
そこにある

希望の
ひとかけらのように



「投函」

真夜中に
書いた
ラブレターは
出さないほうがいい

真夜中に
書いた
ポエムを
読み返して
ゴミ箱に捨てる朝

眩しい
朝の光の中で
言葉を紡ごう

恋人の
目や
髪や
唇を
讃美する詩

そして
世界が
どんなに
美しいかについての詩

一度だけ
読み返し
ポストに投函する

©️Ikuo  Tani  2024


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