見出し画像

谷郁雄の詩のノート58

高円寺をぶらぶら歩いていて思うのは、壁の落書きやステッカーの多さ。その観察記録だけで本が1冊書けるほど。エネルギーがあり余り、どこにぶつけていいか分からない若者たちが集まる街だからでしょう。さすがにぼくはもう落書きなどする年齢ではありませんが、見るのは面白いです。この日は、駅前でこんなステッカーをたまたま見つけ写真に撮りました。なかなか素敵なステッカーですよね。すっかり秋めいてきましたねと言いたいところですが、今日の東京の最高気温は30℃。これから半袖シャツで出かける予定です。



「学ぶ」

草から
しなやかさを学ぶ
花から
自分らしく
咲くことを

鳥から
俊敏さを学ぶ
蜘蛛から
丈夫で
美しい巣作りを

時から
変化を学ぶ
風から
身軽に
生きることを

歌から
勇気を学ぶ
人から
弱さと
強さとやさしさを



「若者」

勢いで
電車に乗って
やってきた若者が
路上に座り込んでいる街

若者は
コーヒー一杯も
飲むお金がないので
好きな街の空気を
吸いにやってきたのだ

空気は
苦くて
甘い
秋の味がした

ただ
ぼんやりと
何時間も
街を感じていた

退屈にも
飽きると
若者は
退屈を
ポケットに入れ

駅前の
小さな書店に入り
詩の本を探した

はじめて
詩というものを
読んでみたいと思った

©️Ikuo  Tani  2024


いいなと思ったら応援しよう!