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谷郁雄の詩のノート56
高円寺の駅前でパレスチナの人々の死を悼む街頭イベントをやっていました。見ると、赤い絵の具で描かれた「血の涙」でした。通りかかった人たちが手渡された筆を手に持ち、赤い「血の涙」を描いていました。写真を撮らせてもらったあとで、ぼくも「血の涙」を一つ描き加えました。争いの理由は複雑すぎて、けれど結果はいつも人々の犠牲です。どの涙がぼくの涙か、やがて誰にも分からなくなるでしょう。
「せんたくもの」
パンツとか
Tシャツとか
タオルとか
ブラとか
くつしたとか
せんたくものは
けれども
ただの
せんたくもの以上の何か
明日も
生きていくという
ひそかな
決意表明
「花の手紙」
手作りの
絵葉書を
もらった
フォークみたいな形の
花の絵が
印刷されている
手紙でも
書いて
みようか
お元気ですか
ぼくは
なんとか
やっています
切手も
花が
いいのかな
蝶の切手は
ないかしら
涙のあとを
コーヒーのしみで
カモフラージュして
花の手紙は
完成間近
©️Ikuo Tani 2024