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谷郁雄の詩のノート61

高円寺にも冬の足音が近づいてきました。ダウンのパーカーやコート姿の人が目立ちます。夜間は、駅前の広場に恒例のイルミネーションのカラフルな光が灯されています。一年が終わりに向かって加速していくこの時期がぼくは好きです。この日、駅ナカの花屋さんでは「いい夫婦の日」の文字が人目を引いていました。街も人も日々変化し続けています。そんな中、谷川俊太郎さんの訃報が流れました。ご冥福を祈りたいと思います。個人的に大切にしている思い出があるのですが、そっと心にしまっておくことにします。では皆様、良い一日を!



「訃報」

谷川さんの
訃報が
テレビやラジオから流れた朝
くも一つない青空から
サンサンと
日の光が降り注いでいた

死んだら
どうなるか
知りたいから
ボク
死ぬのが楽しみ

そう言って
微笑んだ
谷川さん

死んだら
どうなるか
分かりましたか?

そちらにも
居心地のいいカフェや
静かな小径が
あるといいのですが



「やせがまん」

誰がいちばん
嘘つきか
競争しよう

人生
悲しいこと
苦しいこと
いろいろあっても

幸せを
装って
笑顔を作り

トイレで
一人
こっそり泣いて

もう
だめかも
しれないと
思う自分を
引っぱり上げて

とんと
背中を押して

光の
ナイフの中へ
戻っていこう



「三つの詩」

少し
肌寒いので
エアコンをつけた

ちっとも
気持ちよくならず
心がザワザワ
波立っている

エアコンを止めて
電気ストーヴをつけた

こっちのほうが
まだましだ
エアコンより
静かだし

そのうち
太陽の光が
窓から
射し込み始めた

ぼくは
ストーヴを消した

心まで
ポカポカと
暖かい

だめな詩と
ましな詩と
最上の詩の
違いを
肌で感じた東京の朝

©️Ikuo  Tani  2024


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