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秋色に染まる、谷中霊園散策(幸田露伴五重塔跡、徳川慶喜公・渋沢栄一翁 墓所巡り)

1.はじめに

銀杏の葉が黄金色に輝き、澄み切った青空が広がる秋。一年を通して様々な表情を見せる東京ですが、ひときわ趣深いのが、歴史と文学が深く根付いた谷中霊園です。

穏やかな空気に包まれた霊園内を歩けば、四季折々の美しい風景が広がります。桜の季節には桜並木が咲き誇り、新緑の季節には木漏れ日が降り注ぎ、そして秋には紅葉が色鮮やかに苑内を彩ります。

都会の喧騒を離れ、静かに時を過ごしたい方にとって、谷中霊園はまさに理想的な場所と言えるでしょう。

今回は、そんな谷中霊園の魅力をたっぷりとお伝えします。歴史上の人物や文豪たちの眠る墓所を訪ね、彼らの足跡を辿りながら歴史に思いを馳せてみませんか。
また、有名な小説の舞台となった場所を訪れ、文学の世界観に浸るのもおすすめです。秋の散策スポットとして、歴史と文学の両方を満喫できる谷中霊園の魅力を余すところなくご紹介します。

2.谷中霊園の魅力

霊園内には、四季折々の美しい風景が広がっています。都心の一角にありながら、谷中霊園は豊かな自然を感じられる空間でもあります。ケヤキやイチョウなど、様々な種類の樹木が茂り、小鳥のさえずりが聞こえてくる、まさに都会のオアシスと言えるでしょう。

穏やかな環境の中で、日常の喧騒を忘れ、自分自身と向き合う時間を持つことができます。また、霊園内には、歴史上の人物や文豪たちの墓所が数多く点在しており、歴史と文学に触れることができるのも魅力の一つです。

3.歴史上の人物の墓を訪ねて

徳川慶喜公の墓

谷中霊園には、幕末から明治にかけて日本の歴史を大きく動かした人物たちの眠る墓所が数多くあります。その中でも、特に有名なのが徳川慶喜公と渋沢栄一翁の墓所です。

徳川慶喜公は、江戸幕府の最後の将軍として、激動の幕末を生き抜いた人物です。大政奉還を行い、明治維新へと導いた彼の生涯は、日本の歴史の中で重要な転換期を物語っています。慶喜公の墓前では、激動の時代を生き抜いた彼の偉業を偲ぶとともに、日本の近代化への道のりを深く考えることができます。

一方、渋沢栄一翁は、日本の資本主義の父と呼ばれる人物です。数多くの企業を設立し、日本の近代化に多大な貢献をした彼の功績は、今もなお人々に深く記憶されています。渋沢翁の墓前では、彼の起業家精神や社会貢献の精神に触れ、現代社会を生きる私たちに多くの示唆を与えてくれるでしょう。

これらの歴史上の人物の墓を訪れることは、単に墓参りするだけでなく、日本の歴史を学ぶ貴重な機会となります。墓石に刻まれた文字や、墓所の雰囲気から、その人物の生涯や業績を想像し、歴史への理解が深まるでしょう。

4.幸田露伴の「五重塔」と五重塔跡

谷中霊園には、文豪・幸田露伴の小説『五重塔』で描かれた五重塔の跡があります。この五重塔は、かつて谷中霊園のシンボル的な存在でしたが、不幸な出来事により焼失してしまいました。

1892年、わずか24歳の幸田露伴は、代表作のひとつ『五重塔』を世に送り出しました。文語体で書かれたこの作品は、同じく代表作の『運命』とともに、若き日の露伴を文壇に確立させました。

五重塔の建立に執着する十兵衛の狂気ともいえる執念と、完成した五重塔が暴風雨に襲われる緊迫感あふれる描写は、読者に強烈な印象を与えます。そして、十兵衛が源太と並べられるという結末は、読者に深い感動と共感を呼び起こします。

谷中霊園に残る五重塔跡は、小説『五重塔』の世界観を彷彿とさせます。かつて五重塔が立っていた場所には、礎石などが残されており、当時の壮大な姿を想像することができます。五重塔跡を訪れると、小説の中で描かれた出来事を思い浮かべながら、歴史の重みを感じることができるでしょう。

五重塔跡に立って、小説の世界に思いを馳せてみませんか。幸田露伴の言葉が、あなたの心に響き、新たな発見があるかもしれません。五重塔跡は、単なる史跡ではなく、文学作品と現実が交錯する、特別な場所なのです。

5.谷中霊園散策の楽しみ方

日暮里駅から紅葉坂を上る

谷中霊園の散策は、まるで歴史の散歩道を行くような、心躍る体験です。あなただけの物語を探しに、霊園内を巡ってみましょう。

散策ルートの提案

天王寺の銅造釈迦如来坐像

本記事で紹介したスポットを巡るには、JR日暮里の南改札口から、紅葉坂をのぼって天王寺前を通るルートがおすすめです。天王寺に立ち寄り、敷地内にある銅造釈迦如来坐像を拝観しましょう。この釈迦如来坐像は、鎌倉時代の作とされ、その穏やかな表情は見る者の心を鎮めます。

天王寺を見学したら、谷中霊園のメインストリートであるさくら通りをあるいていきます。ゆっくりあるいて3分ほどのところに五重塔跡があります。幸田露伴の小説の世界観に浸り、歴史のロマンを感じてみましょう。

つづいて、著名人の墓所巡り。 徳川慶喜公や渋沢栄一翁など、歴史に名を残した人々の墓前を訪ね、彼らの生き様を想像してみましょう。

ひっそりとした霊園内を、自分だけのペースで散策を楽しんでください。四季折々の風景は、訪れる人の心を穏やかにします。

(注意点)
霊園内は、静かに故人を偲ぶ場所です。グループ行動で大きな声を出したり、騒がしくするような行動は慎みましょう。霊園内には、墓参に来ている故人のご遺族の方もおられます。周囲への配慮を忘れず、他の人への迷惑にならないよう、マナーを守って散策しましょう。

徳川慶喜公の墓所へは、案内標識が要所に設置されているので、標識にしたがい進んでいけば問題なく探せます。一方、渋沢栄一翁の墓所は、霊園の「中央東広場」の正面にありますので「中央東広場」を目印に探していくとよいでしょう。お墓の地番は「乙11号1」、墓所探しの参考にしてください(霊園の広大な敷地の中は迷路のようになっており、墓石を見ながら闇雲にあるいても目的のお墓に行きつくのはほぼ不可能です)。

谷中霊園周辺には、風情ある町並みや美味しいカフェなどがあります。谷中霊園は、歴史と自然が融合した、まさに都会のオアシスです。ぜひ、あなたもこの特別な空間で、ゆったりとした時間を過ごしてみてください。

6.霊園散策のあとに訪れたい、霊園周辺の散歩道

谷中霊園を散策した後は、周辺のスポットも合わせて訪れてみてはいかがでしょうか。歴史と文化が息づく谷中の街並みや、上野の森のアートな空間があなたを待っています。

初音の道

江戸時代の面影を残す築地塀

谷中霊園から少し歩くと、風情ある町並みが広がる「初音の道」があります。江戸時代から続く古い町家や、趣のある寺社仏閣が立ち並び、どこか懐かしい雰囲気を味わえます。特に、築地塀と呼ばれる土塀は、江戸時代の面影を残す貴重な文化財です。初音の道を散策しながら、昔ながらの東京の街並みを体験してみましょう。

谷中銀座商店街

人気の"ゆうやけだんだん"から谷中商店街を見下ろす

初音の道を日暮里方向に進むと、活気あふれる「谷中銀座商店街」があります。昔ながらの個人商店が軒を連ね、地元の味や手作りの品々が並びます。揚げたてのコロッケやメンチカツ、甘くて懐かしいお菓子など、食べ歩きも楽しめます。お土産探しにもぴったりです。

上野公園

谷中から少し足を延ばし、言問通りを越えれば、上野の森が広がっています。上野公園は、美術館や博物館が集まる文化の拠点であり、広大な緑地が広がる憩いの場でもあります。

東京都美術館や国立西洋美術館など、世界レベルの美術館で芸術に触れたり、上野動物園で動物たちとの触れ合いを楽しんだりすることができます。上野公園のシンボルである不忍池のボートに乗るのもおすすめです。

谷中霊園周辺には、まだまだ魅力的なスポットがたくさんあります。ぜひ、あなた自身の足で街を歩き、新たな発見をしてください。

7.まとめ

澄み切った空気の中、木々の香りが心地よい秋。歴史と文学が深く根付いた谷中霊園は、五感で季節を感じ、歴史と文学の世界に浸れる特別な場所です。

ひっそりとした空間の中で、歴史上の人物や文豪たちの足跡を辿り、彼らの生き方や作品に思いを馳せることができます。また、四季折々の美しい風景は、都会の喧騒を忘れさせてくれるでしょう。

谷中霊園は、単なる霊園ではなく、歴史、文学、自然、そして食文化が融合した、魅力あふれる場所です。ぜひ、あなたも秋の谷中霊園を訪れて、自分だけの物語を見つけてみてください。(千里 ふうた)

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