400字の部屋 ♯15 「水 2」

 起き抜けにブログを1本書き、腹が減ったので近所のスーパーで夕べ買っておいたインスタントラーメンを作ろうと、鍋に水を注ぎ、IHの温度を強にして数分待っていると、鍋の中の水が底の方からゆっくりと振動を始めて、ポツポツと泡が浮かんできた。冷たい水が熱湯に変わる過程では、最初の泡が沸くまでに束の間の静寂があるが、それは津波の前の静けさのようで陽一はあまり好きではなかったので、少しでも早く沸騰させようといつも温度を強にする。小さな泡は直ぐに水の表面で大きく破裂し始め、無数の泡の生成と破裂がマグマのそれのように絶え間なく循環し、カルキ臭のした水道水は、水分子と共に不純物を全て吹き飛ばした熱水に変貌した。換気扇を付けると垂直に立昇る湯気が勢い良くダクトへと吸い込まれ、沸騰で僅かに量が減った熱湯を粉末スープと乾麺が入ったプラ容器に入れると、溶けた粉末スープが出汁の匂いを放った。安いが安心する匂いだ。

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