変わらないもの
別れようって告げられた日の早朝に通った横断歩道。
あたしはずっとそこを避けてきた。ここは自転車がよく通って、あいつが乗っていたマウンテンバイクによく似たものに乗っている男が通るから、というのもある。
あれから何年が経っただろう。避けているくせに、あの日吸った空気の冷たさとか、これは仕方がない、と心に落とし込む、あのときの自分とか景色をはっきりと覚えている。
なんで、あたし、今ここにいるんだろうね。心がぐちゃぐちゃのまま、あたしは今、ここに立っている。
赤信号が青に切り替わって、顔を上げると、少しずつ景色は変わっているくせに、信号機の色だけはあの日のまま、変わらないんだ、となんだかほっとした。