切り方は立ち方(まあるい台所)
タイトルの写真は伯父が昨日持ってきてくれたカボス。畑で採れた貴重なホウレン草と一緒に我が家の玄関先に置いてありました。柔らかなホウレン草は茹でてごま油と醤油であえてナムルにしました。
さて私は毎日のごはん作りの時、ふと気が付けば誰かの声を聴きながら料理をしていることが多いように思います。みなさんもそういう経験はありませんか?
イチョウのまな板にキャベツを置いて切ろうとした時、あの方の声が聞こえました。「右利きの人は右足を少し後ろに引いて食材を切るとまっすぐに切れますよ」もう十数年前に禮子先生から教えていただいた切り方のコツ。私はまな板に向かってまっすぐに立って食材を切っていましたから、包丁はいつも斜めに入ります。まっすぐに切るためには利き腕側の足を少し後ろに引いて上体を開けば良いことをこの時初めて知りました。
禮子先生は私の母と同世代。家庭科の先生を定年退職してからご自宅で料理教室をしていました。栄養士でもあった先生は、とにかく学ぶことが大好きな方。マクロビオティックや薬膳料理など遠くまで学びに行かれ豊富な知識をお持ちでした。それをひけらかすでもなく、必要な時に優しい語り口で伝えてくれる謙虚な方。切る時の立ち方を私が教えていただいたのは、先生をお招きして料理教室をしていただいた時だと思います。私は当時、小さな自然食品店をパートナーつりお君と一緒に営んでいて、禮子先生はお店の常連さんでした。ご自宅で開催している料理教室の生徒さんたちと連れ立って、またある時はご主人と一緒にお買い物をしてくださいました。
私たちが料理講師を招いて開催していた「野草と食養料理の会」やオリーブオイルを輸入販売している方の「イタリア家庭料理の会」にも参加してくださいました。「先生は教える立場で習う立場ではないでしょう?」とご自分の生徒さんに言われてもニコニコしてスルー。新しいことを学ぶのが本当に大好きな方でした。片付けの時、皿拭きが足りなくてどうしようと思っていたら、「ちょっと待って、車に積んでいると思うから」ときれいな布巾を何枚も持ってきてくださいました。先生から教えていただいた事のなんと多いことでしょう!いまさらながら感謝する私です。
食材を切る時の立ち方。私に長年しみついた癖はなかなか治りません。あれから十数年たっても「また斜めに切っちゃった~」の毎日。でもその都度、笑顔の禮子先生の声がふんわり聞こえてきて、私は右足を少し後ろに引き姿勢を正すのです。
**昨晩の夕ご飯のおかず**
キャベツと豚肉の中華風とろっと炒め
(材料)
キャベツ、豚ももロース
干し椎茸、人参、ピーマン、小葱、しょうが
(調味料など)
塩、黒コショウ、醤油、とろろ昆布
ごま油、片栗粉、五香粉