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Leica M11 Glossy Black Finish

最近、新しいカメラが我が家にやってきた。今日はその話をしようと思う。


1. 新しいカメラがやってきた

やってきたのはこのカメラ。

Leica M11 in Glossy Black Finish

Leica M11 の Glossy Black Finish モデルだ。黒の艶やかな塗装をまとい、どこかクラシックカーを彷彿とさせる佇まい。控えめだが、揺るぎない存在感を放つ──そんな相棒が、僕の手元に加わった。

僕が住むアメリカでは 2024 年 11 月 21 日に発売されたばかりである。もっとも、M11 というモデル自体はもう少し古い。 2022 年 1 月に発売され、その後も M11-P や M11-D といった派生モデルも発売されている。

今回僕が購入したのは、そんな M11 の真鍮製のブラックカラーモデルである。

性能は M11 だが、デザインは M11-P を踏襲。
Leica の赤ロゴを省略したシンプルなデザイン。

Leica のカメラは伝統的に真鍮で作られていた。しかし、M11 シリーズでは、ブラックカラーがアルミ製に切り替わった。たしかに、アルミ化により 100g 以上軽量化に成功しており、ユーザーの間では好感する声も多く聞かれる。

だが、その代償としてエージングの楽しみが失われた。真鍮製のボディは、塗装が剥げるごとに真鍮の金色が露出してきて、次第に味わい深い見た目になる。だがアルミボディではそれが起きない。あくまで個人の趣味の問題だが、僕にとってはどうしてもあの真鍮特有の「物語」が恋しかった。

だからこそ、この Glossy Black Finish の特別仕様モデルが発表されたとき、僕の心は完全に奪われてしまった。

真鍮製のブラックボディが戻ってくる。あの質感、あの重み、あの剥げ跡の美しさが──。

Leica から届いた告知メールを見た瞬間、僕は一切迷わなかった。税込で 10,000 ドル(日本円でおよそ 150 万円)を超える。普段であれば躊躇するような金額だ。だけど、そのときは妙に清々しい気分だった。「これを買わない理由がどこにある?」と、心のどこかで呟いている自分がいた

2. IDS のアクセサリーと組み合わせた

新しい相棒には、アクセサリーも奮発した。フランスを拠点とする Initial Design Studio(IDS)からサムレストとボディグリップを取り寄せた。

IDSworks Foldable Thumb Grip

このサムレストは、親指をかける部分を折りたたむことができる。それがなんとも便利だ。おかげで、Leica のカメラ特有のボディの薄さを損なわずに済む。

ただ、ボディとの色味が微妙に違う。光の角度によってはそのズレが気になることもある。でも、これも悪くない。完璧な調和というものには、どこか息苦しさを感じることがある。むしろ、こうした微妙なズレや不完全さが、道具としての個性を際立たせ、自分だけのカメラであるという感覚を与えてくれる感じがする。

IDSworks M11 Grip (Desert iron wood from Africa)

ボディグリップは、Desert iron wood の色味を選んだ。少し濃いめの茶色が、黒いボディにほのかな温かみを加えてくれる。僕は、カメラストラップに 4 silent birds の OTUS という製品を愛用している。このグリップの色味は、カメラストラップの革の色に驚くほどマッチした。

この蓋が開けにくいのがネック

だが、このグリップには少しばかり難点がある。この裏蓋を開けると、バッテリーやSDカードにアクセスできる仕組みなのだが、この蓋がやたらと開けづらいのだ。蓋を閉める磁石の力が強力すぎる。

購入したばかりの頃は、指で開けることはほぼ不可能で、工具を使って無理やりこじ開けていた。さすがに 2 週間も使った今では、指先で開けられるようになった。それでも、たまにその頑固さに手を焼くことがある。

とはいえ、このグリップが持つ美しさの前では、その不便さすら許容できてしまう。そもそも、細かな不便を気にする人は Leica を選ばないのだ。

3. M11-P との比較

僕はもともと M11-P を使っていた。 つまり、新しく迎え入れたM11は、スペックだけを見ればダウングレードだと言える。M11-P と比べて不便に思うことはないのだろうか。

結論から言ってしまえば、まったく気にならなかった

M11-P (左)と M11(右)

M11 と M11-P のスペック上の違いは、内臓ストレージの容量や背面ガラスの素材、コンテンツクレデンシャル機能の有無といった細かなものいずれも M11-P の方が優れているのだが、僕の日常の使い方では大きな影響が見られるほどの差ではない。だからこそ、M11 を使っても何も違和感を覚えることはなかった。

さらに、デザインの面でも大きな違いはなかった。本来であれば M11 と M11-P は外観で簡単に見分けがつく。M11 には Leica の赤いバッジがあり、M11-P にはバッジの代わりに軍艦部にロゴがある。だが、今回の Glossy Black Finish モデルは M11-P のデザインを踏襲しており、色の違い以外に見た目の差はない。

どちらもデザインは同じ

また、M11 にはフリーズが頻発するなどの不具合があると聞いていたが、この Glossy Black Finish モデルではそうした問題はまったく確認されていない。ファームウェアのアップデートで改善されたのか、それとも内部部品が刷新されたのか──その詳細はわからない。ただ、ひとつだけ確かなのは、今のところこのカメラが僕に何のストレスも与えていないという事実だ

4. さいごに

新しいカメラを手にすると、いつも世界が少しだけ変わる感覚を覚える。もちろん、それは錯覚なのかもしれない。目の前の景色は何一つ変わっていない。空の青さも、風に揺れる木々の音も、昨日とまったく同じはずだ。ただ、手のひらに収まるその小さな存在が、どこか遠い場所へと誘う扉のように感じられるのだ。

このカメラとともに、どんな光景を写真に収めるのだろうか。それはまだわからない。けれど、わからないからこそ面白いのだと思う。どこか遠い場所で待っているかもしれない光景。それとも、意外にも身近な場所に隠れている奇跡。それらすべてが、このカメラとともに僕を待っている。

手に触れたときの冷たい感触。肩にかけたときのほんのわずかな重み。それは、このカメラがただの物体ではなく、僕とともに生きていく存在だということを教えてくれる。

そして僕は思う。このカメラが次第にエージングされていくように、僕自身もまた、日々変わり続けていくのだろう。その未来の形はまだ見えないけれど、それはきっと悪くないものだと思える。シャッターを切るたびに、僕は少しずつその未来に触れているのかもしれない。

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たなぱんだ
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