「そうだ!人事制度を見直そう」と思ったら。見取り図の作成と影響の記述から始めよう~前編~
最近、Twitterで“ぼっち人事の味方”を掲げている、たなけんです。
ぼっち人事の味方を掲げているんですが、人事の方から相談が来ることはほとんどなく、どちらかというと同業の人たちから質問をもらったりという感じです。
今日は、Twitterでどんなnoteを読みたいかを聞いてみたところ「人事制度を変えようと思ったときに読むnote」が一番多かったので、人事制度を変えるときに取り組むことについて書いていきたいと思います。
そもそも、人事制度はどのタイミングで見直すのか?
見直すタイミングについては、以前、以下のTweetをしました。
それぞれ、解説していくと、
「1.戦略の変更」は、会社がこれまでと異なる環境認識をし、大きく戦略を転換していくような場合です。このような場合は、これまで社員に発信していたメッセージがガラッと変わり社員へ求める行動も変化するため、人事制度を見直す必要性が高まります。
「2.法律の変更」は文字通りですが、法律の変更に対応するために人事制度を見直します。例えば、2020年4月から説明が求められる同一労働同一賃金対応も「2.法律の変更」によるものです。
「3.社員ニーズとのミスマッチ」による人事制度の見直しとは、社員の年齢構成の変化や多様な社員(女性、高齢者、外国人など)の増加により、これまでの人事制度では社員の就業ニーズにこたえられないという場合に発生します。例えば、スタートアップの企業が拡大し、平均年齢が高くなるにつれて家庭を持つ社員が増えたり、様々なコミットメントの社員が出てきたりと、これまでとは違う人事管理が必要となる場合です。
「4.その他(セレモニーなど)」は、特に大きな理由はないが、会社が30周年を迎えるため、人事制度を変えようというような場合です。ここには戦略性も深いメッセージ性もないため、検討を始めてもほとんど人事制度が変化しないということが多いです。
また、「OKR」や「1on1」などの流行りの人事施策が出てきて、とりあえず検討する場合も「4.その他」です。それ施策が戦略貢献や社員ニーズへの対応として考えられていない場合は、まさに「4.その他」でしょう。
と、ここまで、どういうタイミングで人事制度を見直すかについて書いてきました。
ここでのポイントは、
・唯一のトリガーがあるわけではなく、組み合わせであることが多い
・トリガーごとの優先度に応じて、この後の調査で必要なことが変わる
ということです。
今、少し書いてしまいましたが、ここから本論ですね。
「人事制度を変えようと思ったら、何からはじめるか?」についてまとめていきたいと思います。
まずは、調査から。人事制度は”家”である
会社は、上記したトリガーで人事制度を見直す検討を始めます。
では、見直しの検討とは、具体的に何から着手すべきなのでしょうか?
上記の質問をすると、
「そんなこと簡単じゃないか、そもそも、どんな人事制度が必要か?から考えるんでしょ」という声が聞こえてきそうです。しかしながら、今日は「いえ、まずは調査から始めてください」という話をします。
そんな私ですが、以前のnoteでは、
と書きました。「人事制度は好きに作れ」と言っておきながら、「いやいや、まずは調査からです」なんて言うと「前回のnoteは何だったんだ!」となりますよね。そのため、前回のnoteとの位置づけを整理しています。
・前回のnote:自社にとって最適な人事制度は自社にしかつくれない
・今回のnote:じゃあ、実際に自社で作る場合に何をするんだっけ
ですので、今回のnoteは、前回のnoteを踏まえて、自社に最適なものをつくるために必要なステップの内容に踏み込んでいるということです。
自社に最適なものを考えたときに起こりうることとして、「そんな所にこんな家が建つわけないだろ!」という問題があります。戦略と整合的かもしれませんが、その会社では運用できないような人事制度のことです。本来的な意味で自社に最適というのは「制約がない中であるべきを語ること」とは異なるのです。
では、その制約を踏まえたうえで実際に人事制度を設計するのですが、その前提として調査が必要となります。この調査では、何を”調査”するのか?ですが、ここでやっと”家”の話になります。
(人事制度は家であると書きながら、引っ張ってすみません…)
人事制度は、家や建築物のアナロジーでとらえると分かりやすいと思っています。(手書きですみません…)
人事制度を建築物に見立てると以下のような説明ができます。
「人事制度(=建築物)は、その会社の組織風土(無意識の前提)やマネジメント力という土地のうえに建っており、そこに居住者である社員が住んでいる」
そのため、上記の様な「そんな所にこんな家が建つわけないだろ!」という話が出てきます。例えば、崖や沼のような土地のうえに、高層ビルが建つわけないでしょ、という話です。にもかかわらず、沼や崖のうえに高層ビルを建てようとする会社は少なくないです。実際にそういう会社の人事制度を調査すると、「沼の上に筏を浮かべて、そこでみんなが過ごしており、強い風が吹くたびに社員が筏から落ちている」なんて状況があったりします。また、より悲惨なケースでは、「建築物から汚水を垂れ流し、良質な土地を腐敗させている」ような場合もあります。
それでも、家を建て切るのが我々人事コンサルの仕事です。「人事制度は運用が大切だ!まずは組織風土の改革から~~」と誰にでも言える、つまらないことを提案する人事コンサルは即刻このマーケットから退場していただきたいぐらいと思っています(どうでもいい話ですが…苦笑)。
人事コンサルの話は置いておいて、一定程度の制約の中で、会社のつくりたい人事制度をつくるためには、
・人事制度の見取り図
・影響の記述書
が必要になります。
・人事制度の見取り図とは、「建築物(人事制度)」「居住者(社員)」「土地(組織風土など)」の関係性をまとめたものです。特に、人事制度自体の思想と運用のギャップを可視化することが重要となります。
・影響の記述書とは、そのような人事制度が、組織風土や社員へどのような影響を与えているかを記述することです。影響を記述することで、人事制度をどの程度変える必要があるのか、変えることで期待できる効果が何なのかを明らかにします。
上記の「人事制度の見取り図」と「影響の記述書」のためにすべき調査が、
・建築物調査(人事制度の分析)
・居住者調査(従業員の分析)
・地質調査(組織風土・文化・マネジメント力の分析)
となります。
では、実際に何をやっているかは後編に譲りたいと思います。
(すでに2,500文字を超えてしまい…分量の調整が難しいですね)
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