2022年にしたいこと

 2022年に限らず、いつだってしておきたいこと。それは、会いたい人に会っておく。
 40歳で死ぬと思っていたが、50歳を迎えた。予想外の出来事に、自分はまだまだ死なないと楽観的になっている気がする。
 そんなときほど足元をすくわれる。母も叔母も50代後半で病に倒れ死んだ。私もきっとそうなる。いつだって自分が長生きするイメージが描けず、それはきっと本当に長生きできないからだと思う。

 病気でなくとも事故はいつだって起こる。車での生活で、かつ古くてガタのきているデミオくんに乗っているため、雪道の運転時には覚悟を決めることもしばしば。いや、デミオくんを信頼してないわけではないよ。でも機能的に最新型とは差があるわけで。
 高速バスも利用するが、以前はタイヤがとれて事故を起こすことも少なからずあった。飛行機もたまに乗る。もちろん歩いてるときに突っ込まれることも起こり得る。
 生きている限り、死ぬ可能性がある。いつだって。

 だから、死ぬ瞬間に「会っておけばよかった」という後悔はしたくない。「最後に一目会いたかった」と思いつつも、その人の顔が思い出せずにぼんやりしている、というのもいやだ。
 会いたい人に会い、できることなら話をして、その人のことを記憶に留めておきたい。その状態で死にたい。「あの人にもあの人にもあの人にも会えた」という満足感の中で息絶えたい。

 元旦に意味はないけれど、会いたい人に会っておきたいと思ったから、今日は大好きな人たちに会いに行った。
 午後はタナカアキの最初の友だちのところへ。雪深い町にある本屋カフェ。できることなら家で一日中ごろごろしていたかったけれど、えいやっとお布団から抜け出した。
 今年は雪が少ないとはいえ、やはり店がある町はそこそこ積もっている。圧雪に残るチェーンかキャタピラかの痕跡でがたんがたんの道。スピードを落としてもハンドルをとられそうになる。
 そんな苦労をしてでも会いに行ってよかった。友だちが選書して仕入れた本の中から、欲しい本が3冊も見つかった。そのうちの1冊と以前に取り置いといてもらった1冊を購入。
 温かいカモミールハニーミルクを飲みながら、後から加わった我がシェアハウスの住民とともに楽しい時間をすごせた。

 夜はごはんを済ませ、友だちのバーへと向かう。もっと早く出るはずだったが、住民とともに映画を見たため、店に着いたのは23時すぎ。
 1時間ほどいて、帰ろう。そもそも会いたかっただけなので、少し話せばそれで満足だ。が、元旦ゆえ、店内の客は仲よし4人組のみ。友だちとの付き合いも、私より長く深い。
 みんなで紅白歌合戦を見ながら盛り上がっている。結局、仲間内の飲み会に紛れ込んだ招かざる客のようになってしまった。
 当然、友だちと話すこともなく、午後に買った本(マンガ)を一冊読んで店を出た。
 また3日に行くのだが、そのときは話せるかな。話せないまま会えなくなったら心残りだが、でも今夜の楽しそうな姿を覚えておくのも悪くない。

 そして、もうひとり。会いたい人がいる。
 明日午後は用事があって向かえないが、3日の予定を全てキャンセルすれば、バイトのある5日までに帰ってこれるだろう。今夜の友だちにもう一度会うのをあきらめて、どうしても会いたい人に会いに行こうか。
 まだ決めかねている。けれど、会いたい気持ちがどんどん増している。
 3か月前、二度と会うことはないと思いながら「またね」と告げた。そのときの顔が忘れられない。このまま会わずに死んだら、きっと後悔する。
 でも会いたいのは私の気持ちで、相手にとっては迷惑かもしれない。自分の気持ちを押しつけるのはどうなんだろう。

 ほかにもまだ会いたい人はいる。今年は後悔しないよう、会いたい人に会いに行く。まるで「さよなら」を告げるかのように、会いに行く。
 もしかすると本当に私の持ち時間は遠からず尽きるのかもしれない。だから本能的に会いたい思いに駆られてるのかもしれない。
 だとしても、いや、だとしたら、会いに行かねば。「これが最後かもしれない」と思いながら。



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