夏目漱石「こころ」読書感想文
【夏目漱石】【こころ】【読書感想文】の検索結果でのアクセスの属性は、中高生が多いのは想像つく。
課題となっているのもわかる。
にもかかわらず、筆記者は『739番 田中』である。
そりゃ、心苦しい。
おわびとして、以下、読書感想文の書き方のアドバイスを、少しばかりさせていただきたい。
ちなみに、私は高校中退の中卒で、文章とは無縁の環境で過ごしてきましたが、賞らしきものをとったことが2回ありますので、少しは参考にはなるでしょう。
たぶん。
で、その賞のひとつは「野鳥作文コンクール」です。
小学校6年でした。
金賞をとって、学校を休んで県庁まで表彰を受けにいって、なんやら賞状やら盾やら受け取りました。
これは偶然でしょう。
なにも考えずに、ただ書いただけですから。
もしかしたら、応募者も少なかったかもしれません。
書くことなども好きでもなかったので、授業の代わりに電車に乗ったこと以外は、うれしくもありませんでした。
朝、学校にいくときにスズメのヒナを見つけて、帰りには野良猫に食べられていて、すごくかわいそうでした、という体験を書いたのが良かったと思われます。
もうひとつの賞を受けたのは、大人になってからです。
「○○矯正管区 文芸コンクール 読書感想文の部 銅賞」という仰々しい賞です。
応募者は、約15の刑務所と拘置所に収監されている受刑者で、外部の方が半年ほどかけて審査したようです。
賞品として、ノート1冊を得ました。
仮釈放の直前になって、それらが掲載されている小冊子を見ることができましたが、受刑者の文芸というのは独特です。
書、絵画、デッサン、俳句、短歌、随筆、読書感想文と、どこか強烈なものが多かった。
私の銅賞の前の銀賞となった筆記者は、懲役20年目を作中で明かしたのを覚えてます。
変な話ですが、私は、いささかの自信を持ったのです。
中高生の読書感想文の書き方
本当の気持ちは書いてはいけない
誤解を恐れずにいいますと、まず、あなたの読書感想文には、本当の気持ちを書いてはいけません。
提出が求められる読書感想文には、すべからく “ 評価者 ” がいるからです。
あなたに求められているのは、その評価者の意図に沿った読書感想文です。
で、その評価者は誰か?
最初に挙げられるのは、学校の先生です。
それなので、まずは本の感想よりも、評価者となる先生の趣向を探るのです。
学校の先生は教育者であるのと同時に、普通の大人です。
好き嫌いも、思惑も保身も、苦手も贔屓も、政治信条だって、恋愛観だって、宗教だって、偏見だってあります。
評価される以上は、感想文の大筋は、先生の趣向から1ミリもはみ出さないことが賢明です。
感想など ChatGPT でいい
肝心の感想文の部分は ChatGPT でいいでしょう。
というのも、大ヒットと宣伝されてるコンテンツは、あらかた感動の定型が確立されています。
本も含まれます。
そのような、すでに答えが用意されている部分は ChatGPT に任せても、とくには的外れにはならないのは、私が言うまでもありません。
なので、3分の1には ChatGPT を使って本の理解を書く。
で、3分の1こそに、先生の趣向に沿った感想を考える。
残り3分の1には、先生の称賛を散りばめていく。
さほど、本を読み込む必要もないのです。
ここで、あなたは疑問があるはずです。
そんな読書感想文は嘘ではないか?
夏目漱石がわかってなくてもいいのか?
しかしながら、評価とはそんなもんです。
あくまでも他人がするものです。
先生の称賛もついでに書いておけば、読書感想文以外の評価にもプラスに働きもします。
それに、夏目漱石が素晴らしいと書いておけば、読解力がある生徒とも見なされるので損はありません。
優先すべきは、先生のこころであって・・・。
・・・ こころ?
先生?
本題から飛んでました。
夏目漱石の「こころ」の読書感想文でした。
読書感想文のアドバイス
しつこいですが、もうひとつ。
先生も尊敬しているし、その趣向も好きだし、夏目漱石も感動した、嘘の読書感想文を書く必要がない、という場合。
あなたは、これから多くの幸せを得れる人です。
私などがアドバイスするのは大変におこがましい。
嘘の読書感想文だとは思うけど書ける、という場合。
あなたは、すでに大人の素養を身につけてます。
それは大変に重要な部分です。
将来は、企業や機関などで組織人として大成するでしょう。
強いていえば、先生の称賛には注意してください。
やりすぎると、かえって嘘っぽくなります。
嘘の読書感想文だから書けない、という場合。
あなたは、将来は警察官になったほうがいい。
私が尊敬している職業です。
他人からの評価などいらない、本当の気持ちで自由に読書感想文を書きたい、という場合。
かつ、夏目漱石なんて、おもしろくない。
夏目漱石なんて、なにがいいたいのかわからない。
夏目漱石の、どこがいいのかわからない。
夏目漱石なんて、全く共感しない。
夏目漱石のバカ。
とも、はっきりと言えるあなた。
あなたの将来は、どちらかです。
大物になるか、野垂れ死にするか。
そこそこやっていこう、なんて考えてはいけません。
あなたは、そこそこなどできません。
はい。
ハッキリと言えるあなたは、すでに先生からも、お説教も受けているのではないでしょうか?
「学校でできなければ、社会に出ても通用しない」などと。
「なんで普通にできないのか」とか。
「みんなはそうやっている」とか。
だとしたら「そこは先生が間違っている」と、私はアドバイスできます。
いっちょ出ていって、ガツンと言ってやってもいい。
その言い方は、刑務所の刑務官と同じだと。
あなたは、檻の中にいる受刑者ではありません。
自由があります。
なにがあっても、その自由だけは大事にしてください。
クライマックスからのネタバレあらすじ
お嬢さんへ好意を抱いていた友人に
「やめてくれ!」
「やめてくれって、僕が言いだしたことじゃない!」
「・・・」
「もともとは君のほうから持ち出した話じゃないか!」
私は、K に向けて言い放った。
「しかし、君がやめたければ、やめてもいい!」
「・・・」
「が、ただの口先でやめたってしかたがあるまい」
「・・・」
K から、お嬢さんに好意を抱いていることを打ち明けられて、しばらく経ったころだった。
「君のこころで、それをやめるだけの覚悟がなければだ」
「覚悟・・・」
「いったい君は、いつもの主張をどうするつもりなのか!」
「覚悟ならないこともない・・・」
K は、つぶやいた。
独り言のようにして、つぶやいていた。
同じ下宿で暮していた友人だった
K は同郷からの友人。
お寺の息子だった。
その実家から絶縁された K の面倒を見ようと、私は自身の下宿へ招き入れもした。
「精神的に向上心がない者はバカだ」というほどの真面目で実直な性格。
常に “ 精進 ” という言葉も使う。
K には何をやってもかなわないと思うほど、ひたむきに自律する姿を見せていたのだった。
同じ下宿となってからは、学問や信念、生き方の主張を話し合ったりもした。
友人でありながら、畏れている部分もあった。
が、男女の関係については、お互いに経験がないに等しく、若さ特有の一途さや、思い込みも持っていた。
友人への畏れと嫉妬
その下宿には、未亡人である奥さんと、1人娘のお嬢さんがいたのだった。
私は K を畏れていたといった。
が、それは、K が恋に悩むまでだった。
悩む K からは、お嬢さんに好意を抱いていると打ち明けられたのだった。
私は、嫉妬を覚えた。
私も、お嬢さんに好意を抱いているからだ。
が、恋愛に鈍感な K は、それに気がついてないのだ。
その日、K からの「覚悟」という言葉を聞いたとき、私が想像したのは、実直すぎる K が、お嬢さんに直接に行動を起こすのではないかという不安だった。
私は、抜け駆けした。
奥さんに直談判をして、お嬢さんとの結婚の申し込みをしたのだ。
奥さんは快く承諾した。
友人の自殺と遺書
数日後。
私とお嬢さんが結婚することになったと、K は奥さんから聞くことになる。
なんの態度も変えることなく、祝福の言葉を述べてきた K だった。
その2日後だった。
K は自殺した。
ナイフで喉をかき切ったのだ。
直前までは、いつも違った様子はまったくなかった。
遺書があったが、簡単に書かれていただけだった。
自分は薄志弱行で先行きの望みがないから自殺する、とあるだけ。
もっと早く死ぬべきなのに、なぜ今まで生きていたのだろう、と最後にはあった。
K を死に追いやったのは私だ。
抜け駆けしたからだ。
しかし遺書には、恋のことが全く書かれてないので、奥さんもお嬢さんにも、本当のところは知られることはなかった。
お嬢さんとは結婚した。
が、自責の念を抱いたままだった。
ある学生への手紙
K とのことが、ずっと心に引っかかっていた。
その後の私は、働くこともなかった。
残された財産で、家にこもる生活をする人生を長く送る。
そして、明治天皇が崩御した。
乃木大将も殉死した。
触発されたようにして、私も “ 死 ” を考えたのだった。
考えたと同時に、ある学生に手紙を書いている。
私のことを「先生」と慕う学生だった。
偶然に知り合った学生だった。
私には、学識も教養もあると思っているらしい。
それにもかかわらず、職を得ようともせずに、家にこもって本を読んで過ごしている私に好奇心を抱いている。
過去になにがあったのか、聞きたがっていた。
いつか話すと約束している。
私は、過去のことを全て手紙に書いた。
・・・ その手紙は、学生の手元に届いた。
長文だった。
末文には「この手紙が届くころには、もう私はこの世にいない」とある。
学生は、すぐに駅に走った。
電車に飛び乗り、先生の家へ向かったのだった。