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映画『PERFECT DAYS』感想と出版のお知らせ 「ミニマリスト消費」という補助線

 映画『PERFECT DAYS』をシネプレックス旭川で見ました。ラストシーンがものすごく美しくて、あのシーンを見れただけで劇場まで足を運んでよかったです。

 ラストシーンに限った話ではありませんが、音楽がすばらしかったですね。田中泯さんやアオイヤマダさんといったダンサーが起用されているのも納得できました。主演の役所広司さんの代表作も『Shall we ダンス?』ですしね。ミュージカル映画やミュージシャン伝記映画などと同じぐらい音楽(及びそれと連動する情動や身体性)を重視している映画だったように思います。

 ただ初見の段階では、「好きな映画か」と聞かれれば「うーん」というのが正直な感想でした。かつてリッチなビジネスパーソンだった人が、今も当時身につけた文化資本を大事にしている話、なのか?そうかな?というもんにゃりした理解しか持てなかったからです。

 吉村純一先生のこちらのnoteを読み、かなり「ふむ!」と理解が進みました。2020年代の家族不在の東京で、ミニマリスト的な価値観を持って暮らしているのが本作の平山であるという論考です。面白〜い。『東京物語』と重ね合わせて分析されています。

 さらに、井口詩織先生の書いたこの説明を読んで、「ふむふむ!」となりました。これまた面白〜い。

 「ものを捨てる、譲る、シンプルに生きる」といった実践を通して、自分にとって本来の精神を取り戻そうとする。高い精神性を目指すよりも、日常生活に留まろうとする。支配階級の文化スタイルとは無縁の次元で、豊かな時間を送ろうとする。

『消費文化理論から見るブランドと社会』(2024)p.143

 「自分」ないし「私」であることを探求しながら、新たな快楽をできるだけ引きだそうとするのが、私的消費の特徴となる。こうした特徴は、ミニマリストにもみられたのではないだろうか。ミニマリストもまた、人の目線を気にせず、自分の直感的な消費行動を通して、自分を知ろうとしている。つまり、ミニマリストは、安価な商品が大量にあふれ、さまざまなモノを手に入れられる時代のなかで、新たな私的消費の仕方を提案しているのではないだろうか。

同上書p.146

 (平山、「私」を探求してたよ!快楽、引き出してたよ〜!)と納得できました。「ミニマリスト消費」という補助線を引くことで、映画『PERFECT DAYS』への理解を深めることができました。現代的な暮らしが巧みに描かれた映画ということなのだと思います。

 さて、この『消費文化理論から見るブランドと社会』という本、私も参加しています!初めての本です!私は5章で資生堂の事例を用いてジェンダー表現に関わる広告炎上の分析を行っています。

 執筆者には少しだけ早く本が届くんですが、すぐに(なんて面白い本なんだ)とニコニコしました。マーケティングを通じて、現代社会を捉える新しい視角が得られると思います。とてもいい本なので、お手に取っていただけたら幸いです。

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