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過去と未来の交差点 - 北川民次のポートレート -


■ プロジェクト概要

本プロジェクトは、20世紀を生きた日本人画家であり、メキシコ文化との交流を果たした数少ない人物の一人である北川民次(1894–1989)の足跡をリサーチするものです。北川は1921年、メキシコ革命後の社会体制が具体化する時期にメキシコに渡り、15年間にわたる滞在のなかで、先住民の子供たちに絵画を教えながら、美術教育に新たな方法論を取り入れました。これにより、美術教育の機会に恵まれなかった一般の人々にも、広く絵を描く喜びをもたらすことに成功しました。

民次が掲げた「アートの民主化」という理想に基づき、本プロジェクトでは、民次が後半生を過ごした愛知県瀬戸市で現在活動するアーティスト・設楽陸によるVR(バーチャル・リアリティ)絵画の公開スケッチをメキシコのタスコで、その後ワークショップをグアナファトで実施します。最新テクノロジーにより、材料費や運営費の負担が少なく、事前の経験を問わず誰もが気軽に絵を楽しむことができるVR絵画は、北川民次が約100年前にメキシコで推進した「アートの民主化」の理念と共通の目的を持つものと信じています。

●ステートメント

 設楽陸は、愛知県瀬戸市に在住するアーティストです。彼は、北川が1936年に日本に帰国して以降、50年以上を過ごした瀬戸市から、メキシコへの旅を通じて、過去と未来、現実とバーチャル、そしてラテンアメリカと日本の間に架け橋を築くことを目指しています。
 本プロジェクト「過去と未来の交差点:北川民次の肖像」では、チームメンバーの、城野敬志(art space tetra)とTakaaki KJ(NPO法人Takaaki KJ Proyectos curatoriales代表)、Bea Galván Saldierna(Almáciga Gestoría Artística共同創設者、国際連携マネージャー)と共に、北川民次の足跡について考察します。
 バーチャルリアリティ機器であるMetaのMeta Quest 3を使用して、北川が実現しようとしたアートの民主化という理想を、現代の視点から再考察していきます。 VR絵画のワークショップでは、デジタルブラシを手に取り、2020年代の文脈の中で北川が追求したアイデアを探求します。このプロセスは、世界中の観客がリアルタイムで観察できる仮想空間で展開され、北川の理論的思考と実践に共同でアプローチし、当時の情熱と理想に満ちた彼の作品や活動を再解釈します。
 本プロジェクトの中心部分は、北川民次への敬意を表することです。VR空間で描いた作品は、デジタルデータとして保存され、その後グアナファトで仕入れた地元の材料を用いてキャンバスに転写されます。このプロセスは、約100年前にメキシコに住んでいた北川にインスパイアされた実践を、グアナファトの地元のアートコミュニティや市民と共有することが目的です。この活動が、メキシコと日本の間に新しい文化交流と友好を促進することを目指しています。

■プロジェクトメンバー

設楽 陸(画家、VRアーティスト、タネリスタジオ運営代表)

スタジオとVRスタジオを行き来しながら絵画作品、彫刻作品を制作。初期からのゲーム的世界観や仮想、妄想、自身の内なる物語をテーマとしており、近年はより現実と仮想の融合と実存そのものについて制作を通して模索し続けている。幼い頃、TVゲームが禁止されていて学校の勉強ノートや紙の上に自分で妄想し考えたゲーム世界やキャラクターを描き独りプレイしていたことが絵の構図、色彩感覚に大きく影響している。爆弾が集まり描かれている人物や風景は頻繁にゲームに登場していた爆弾のアイテムを紙の上にたくさん描き殴っていた時の記憶をルーツとしている。また当時、喘息とアトピーを患っており、自分の身体的な弱さと現実世界への違和感から妄想の世界に親近感を覚え「ここではないどこか」「ここにはいないだれか」の存在を意識し始めた。だから描かれている対象は「自分」であり、「あなた」であり、「あれ」であり「これ」である。現実も仮想も、違いが分かりにくくなって来ている今の時代において、もうどちらが現実で仮想なのかより、大切なのは、それを楽しみ、自分を想うことなのかもしれない。

Takaaki KJ(写真家・キュレーター・NPO法人Takaaki KJ Proyectos curatoriales代表)

https://takaakikj.org/

東京から京都、東南アジア、メキシコ、中米グアテマラなどを渡り歩き、2006年からアメリカ合衆国、2013年からは南米コロンビアに拠点を移す。大阪大学大学院で文化人類学を専攻(M.A., Human Science)、2017年には北米カンザス大学大学院にて美術史博士号(Ph.D., Art History)を取得。博士論文『北川民次の美術と美術教育:革命後メキシコと現代日本における文化の翻訳』(University of Kansas, 2017) にてまとめた画家北川民次に関するリサーチをコレヒオ・デ・メヒコ(Colegio de México)、ロスアンデス大学(Universidad de los Andes)などにおける国際学会で発表。これまで、ロスアンデス大学、コロンビア国立大学などで日本のコンテンポラリーアート等の講義を担当。2025年現在、NPO法人 *Takaaki KJ ❘ Proyectos curatoriales* の代表。コロンビアというアートや人文科学における「辺境」から、ポストパンデミックの社会状況を視野に入れた実験的なキュレーションや写真プロジェクトを展開中。

城野敬志 (アートディレクター/art space tetra運営)

2006年、元ネオ・ダダイズム・オルガナイザーズの風倉匠がディレクターを務める共同アトリエ3号倉庫にメンバーとして加入し、作家活動を開始。2007年には音楽、メディアアート、パフォーマンスの複合イベント「mook tank vol.1」をきっかけに展覧会やイベントの企画を始める。2008年には九州全域のアートスペースを巡る「琴姫プロジェクト〜九州アートを探す旅〜」を実施し、九州を意識した企画を展開。2009年からは佐賀大学との関係を通じて佐賀県でのアートプロジェクトを多数行う。2011年の「呉福万博 2011」以降活動を休止するも、2019年にart space tetraの運営に関わり活動を再開。近年では、オンラインイベントの開催や海外展覧会への出品、1920年代の日系コロンビア移民の調査や交流展を行う。2022年より鈴木淳とともに世界中のアーティストやアート関係者をつなぐプログラム「ART FAIR EARTH」を毎年開催し、ジャンルにとらわれない活動を展開中。

ベア・ガルバン・サルディエルナ (Almáciga Gestoría Artística共同創設者、国際連携マネージャー)

2017年より「Almáciga Gestoría Artística」の共同創設者および国際連携マネージャーを務める。
ガブリエラ・ナタクサ・ガルシアやパルミラ・パラモと共に、埼玉で開催された現代芸術祭、ネビュラ・アート・フェスティバル(2017-2020, 2024)や、ザ・プリントサウルス(2021-2025)といった日本のプロジェクトでコラボレーション。2014年よりメキシコ・グアナファトにて版画工房「Bea Grabado Creativo」を設立。メキシコ国内で8回の個展を開催し、メキシコ、日本、アメリカ、スイス、南米で40回以上のグループ展に参加。版画の実験的アプローチを専門とし、多様な芸術素材の活用に特化したエキスパートとして、グラフィックデザインに特化したさまざまなプロジェクトの指導を行う。

■イベントスケジュール

●パフォーマンス(VRスケッチ)1月13日(月)

時間:未定
会場:タスコ一部地域
北川民次が生前に見たであろう、メキシコの風景をモチーフに、現地でVR空間に入り、行う風景のスケッチをパフォーマンスとして行う。作品は4-5点作成。

●ワークショップ① 1月17日(金)

時間:午後4時〜8時(予約不要)
会場:RESPLANDOR INTERNATIONAL (36264 Cajones, Guanajuato México)
料金:無料
内容:アーティスト設楽陸によるVRゴーグル3台を使ったワークショップ。現地でチェキを使用し、出力する。

●ワークショップ②1月19日(日)

前半:午後12時〜2時
後半:午後4時〜6時
会場:espacio sin nombre(Seccion 7 letra b, Noria Alta, 36050 Guanajuato, Gto.,México)
料金:無料
内容:アーティスト設楽陸によるVRゴーグル3台を使ったワークショップ。現地でチェキを使用し、出力する。

●トークイベント 1月18日(土)

Charlas especialesEncuentros : LatinoaméricaReflexiones sobre proyectos de intercambio artístico entre México / Colombia / Japón y Japón en el arte

時間:午後6時〜午後8時
会場:Aparato de Arte(Calzada de Guadalupe 35, Guanajuato Centro)
スピーカー:Takaaki KJ×城野

コロンビア在住のキュレーター、写真家のTakaaki KJ氏と日本でアートマネージメントを行う城野敬志によるトークイベント。メキシコ/コロンビア/日本間の芸術交流プロジェクトと、芸術における日本についての考察を話す。
前半:北川民次に関するトーク
後半:コロンビア×日本の交流に関して
料金:無料


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■協力

espacio sin nombre
RESPLANDOR INTERNATIONAL
Aparato de Arte
art space tetra
タネリスタジオ
愛知県


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