「メゾン・ド・ヒミコ」:欲望がほしいんだよ。
「欲望がほしいんだよ」
オダギリジョー演じる春彦は、恋人であるヒミコが死に近づいていく中で、生きるための欲望がほしい、と言います。
「刺激がほしい」という言葉はよく聞きますが、それはつまり「欲望がほしい」ということなのかもと思いました。「欲望がほしい」という言葉の方が的を得ているのではないか、と。
とくに、生きる気力がないようなときにこそ、自分の内から湧き上がるような欲望こそが生きていくための糧になるのだと、この春彦の台詞を通して再認識しました。
だけど、内から湧き上がるような欲望なんて、簡単に出てこない。見つけられない。だからこそ人間は、依存性の強いものに走ったり、他者に危害を与えてしまうような刺激を求めたりしてしまうのでしょう……。
どうしたらポジティブな方向へ向かう欲望が持てるのか。
これは、ここ数ヶ月くらい私の頭の中にある大きな問いのひとつです。
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「メゾン・ド・ヒミコ」は、「高齢者介護」「セクシュアリティ」「家族」「孤独」といったさまざまなテーマが絡み合った、いまの時代を表現する作品だと思います。
ただ、社会の問題を提起している分、多様なセクシュアリティへの理解が不十分ではないか、描写が中途半端ではないか、という指摘もあります。
ゲイ当事者の方の批判的な視点ももっともだと思いましたので、ここに記しておきたいと思います。
とはいえ、私はこの映画が好きでした。
ストーリー全体は、ちょっとハチャメチャ感があって、愉しい。でも、どこか寂しさが漂っている。
底抜けに明るいわけでもなく、人が死んでも涙を誘うわけでもなく——。
なんとなく愉しい、なんとなく切ない、なんとなく前向きになれる。
そんな映画でした。
春彦も沙織も、曖昧な、不思議な存在でしたが、そこが好きです。始終どこかアンニュイなふたりの表情と、その表情にぴったりな音楽もとっても好いです。
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個人的に強く印象に残ったのは、女装をするのが好きな山崎さんの言葉。
「好きなお洋服、好きなだけ着れるなんて、どんなに幸せかしら。そう思ったら死ぬのも怖くない」
彼は、次は女性に生まれたいと望みます。
「好きなお洋服、好きなだけ着れるなんて、どんなに幸せかしら」
私は心も身体も女性ですが、高校生の頃からずっと、何度も何度も呟いている言葉なので、共感という域を越えていました。笑
ちなみに、この山崎さんの発言のあとには、沙織が「別に女だからってさ、できない格好だってあるよ」と言い、「おまえにバニーガールはできないね」と言われた過去を振り返ります。
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と、ここまで書きましたが、この作品のいちばんの見所は、何と言ってもやはり、オダギリジョーの美しさ、かっこよさだと思います◎笑
オダギリジョーがかっこよすぎる……
美しすぎるホワイト×ホワイトコーデ……
というわけで、オダギリジョーファンの皆さまに心からオススメです。