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落ちこぼれシニアのリベンジ読書~『モモ』ミヒャエル・エンデ著~

村上春樹の作品によく似ていると感じた。
背景や登場人物などは『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』をイメージさせる。この作品は「現実世界と観念世界」をテーマに、パラレルワールドという手法を用いて、それぞれの世界観をあらわしたものと考える。
一方、『モモ』は風変わりな女の子モモを主人公に、「豊かな時間」とは何かについておとぎ話風に描かれている。いわゆる児童文学の分野の作品ではあるが、幅広い層に愛されているという。
 
時間を大切に使わない人間が生み出してしまった「灰色の男たち」。彼らは人間から時間を盗んでは、それを自分たちの生活の糧にしている。
モモは奪われた時間を人間に取り戻すため、時間をつかさどるマイスター・ホラからアドバイスをもらい、時間の先読みができるカメのカシオペイアにエスコートされながら「灰色の男たち」と闘う。
この作品のごくごく簡単なストーリーである。
 
われわれは時間の中で生きている。その時間をどのように使っているか。
効率が最優先され、あらかじめ決められた物事をいかにスピーディーにこなしていくか、いかに(時間の)ムダを無くしていくかが求められている。
もはや、それを疑問に感じる人はほとんどいない。
まさに現代は「灰色の男たち」に時間を盗まれている!
この作品はこうした現代社会へ警鐘を鳴らす書であるといえる。
 
「時間の源とは、人間の豊かさの源泉であると考えられます」(『100分 DE 名著 Momo』P62)。
ゆとり、心の余裕、感動、充実、満足・・・・・・。
「豊かさ」はいろいろな言葉で置き換えられる。また、その感じ方も人それぞれである。
重要なのは、それを心の底から享受できること。
そのためにも、もっと時間を大切にして、時間を楽しもうとする姿勢が不可欠である。時間について、時間のあり方・使い方について、もっと真剣に考えるべきではないだろうか。
 
時間は空気ではない。日々の生活を豊かにする大切な資源である。改めて学習した次第である。

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