落ちこぼれシニアのリベンジ読書~『マノン・レスコー』アベ・プレヴォー著 青柳瑞穂訳~
よく言えば、大人として自立するための期間、「モラトリアム期」における男女の恋の物語。
悪く言えば、考え方の甘い「クズ男とクズ女」の話のように思う。
どちらの立ち位置で考えるかによって感想も異なるだろう。
自分の人生を振り返ってみても、学生時代というモラトリアム期は「悩み多き期間」だった。
「遊び心満載」である一方で、心が未成熟ながらも「大人感覚」で突っ張っていたように思う。そして、そこでのトライアンドエラーの繰り返しから、おぼろげながら社会の縮図のようなものを学んだような気がする。
モラトリアム期は「取り巻く環境」「出会い」の中から、「大人への目覚め」につながる学びがある。
大切なのは、その学びをいかに早いタイミングでキャッチできるかということだろう。
要領の善し悪しもあるだろう。そのタイミングの個人差の大きいことが、モラトリアム期の問題でもある。
そう考えると、グリュウとマノンは根っからの「クズ男とクズ女」ではなかったのかもしれない。
単に「なかなか大人になれなかった、生きるのに不器用な子どもたち」だったとはいえないか。
ずっと回りに迷惑をかけてきた。そしていつも捕まっては怒られる。一応反省するが、悪い出会いや甘い誘惑などから、また享楽の世界に入る。その繰り返し。そこは厳しく戒められなければならない。
結局は罰として独立後それほど時間のたっていないアメリカへ流される。当時はほとんど原野だった。そんな厳しい環境の中でも、周囲の方から温かく迎えられる。そこで初めて真面目に生きることに目覚める。
アメリカへ渡った彼らの生活を見る限り、むしろ微笑ましく感じた。
残念なのはハッピーエンドにはならなかったこと。
もう少し早く大人の世界に入ることができたら。もう少し自分たちを俯瞰した生活をおくることができたら。ふたりの幸せを考えたらそう思えてならない。
もっとも、それでは作品としての魅力はなくなるが。