ワクワクリベンジ読書のすすめ~『書記バートルビー』メルヴィル著~
どう読んでいいのか、そしてどう感想を書いていいのか。
まったく理解できない作品だった。
いったいこの作品でメルヴィルは読者に何を伝えたかったのだろうか。
「○○しない方(した方)がいいと思います」。
拒絶のフレーズがバートルビーの口から次々と。まるで「ドクターX」の大門未知子の「いたしません」ばりのメッセージである。
最初は、大門未知子のように「筆写のプロである自分がそんな誰でもできる仕事はしない」という主張なのかと思った。
しかし、そうではないようだ。あるタイミングから本来の仕事であるはずの筆写すら拒絶するようになった。そこに何があったのか。「あなたはその理由をご自分でおわかりにならないのですか」とバートルビーは筆者へ投げかける。拒絶以外のこの言葉、実は非常に重いものがあるように思う。
バートルビーは、配達不能郵便局の下級職員として働いていたが突然罷免された。そもそも配達不能郵便担当という絶望感の中で働いていたものが、さらに働く場を失い、絶望の底辺にあった時に見つけた筆写の仕事。
恐らく、配達不能郵便局での解雇にいたる流れの中で、バートルビーは生きる意欲・モチベーションをまったく失ってしまったのだろう。生きる屍化していたのではないか。
そして、普通の人間たらしめる環境に身を置けるようにと、筆者の事務所で働くことに一縷の望みをかけていたというのは極論すぎるだろうか。
バートルビーは筆者に重宝がられていた。ある意味でかわいがられていた。それはそれで彼も認識していたと思う。しかし、実は心の闇は思いのほか深かった、ということなのだろう。
拒絶は絶望のサイン。
そう考えると、拒絶の姿勢も理解できる。
それにしても、最後の行き先が警察であり、刑務所(墓場)とは。
人生に絶望している人間を、さらに絶望の窮地へ陥れてしまった。
せめてケアサポート担当が間に入ることはできなかったか。
そして救護院のような施設につなげることはできなかったか。
刑務所とはひどすぎる。結局、バートルビーは墓場に眠ることになってしまった。