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ワクワクリベンジ読書のすすめ~『ふつうの相談』東畑開人著~

著者は臨床心理士であり、心理学のプロとして「相談」を生業とされている。
著作も複数出されている。今回はタイトルにひかれて購入。心理相談のプロの方が伝えようとする「ふつう」とは。心理カウンセラーの勉強をしている自分に役立つのではないかと考えた。
 
結論的には、著書にも記載されているように「『ふつうの相談』とは『自然』であること」(P61)。
ここに著者の主張があると思う。
つまり、学術的な心理療法による非日常的なアプローチではなく、何気ないごく日常的なアプローチこそが重要であると理解した。
 
もっとも、そこに特別な技法があるわけではない。
聞く、質問する、評価する、説明する、アドバイス、環境調整、雑談・社交・世間話。
それぞれ心理療法における重要なパーツではある。
注目したいのは、「評価する」という点。標準的なセラピーの教科書では「臨床家は価値中立的であるべし」というのが一般的なようだが、「ふつうの相談」では価値の社会的側面を重視するということ。「一般的にはどう評価されているのか」をクライアントに理解してもらう。
著者はそれを「世間知」と表現している。社会の常識とか良識に照らし合わせて、いいものはいい、悪いものは悪いと明確にする一方で、ほめたり警戒感をあらわしたりする。
ある意味、クライアントと社会の関係性を確認しながら問題解決に導くという、「つながり」を重視したアプローチと理解することができる。
 
また著者の表現の中にある「現場知」という言葉も興味深い。これは日々のオペレーションの中から生み出された現場で共有される価値基準であると考える。著者は「臨床文化」としていた。
「現場知」は単に施設や場所、活動内容だけの言葉ではない。スタッフの人員構成や役割、記録のフォーマット、デイケアの什器の配置など、現場で培われてきた経験やノウハウがその背景にある。だから「文化」なのだろう。そこを正しく理解していないとストレスにつながることにもなる。
 
「ふつうの相談」は、誰もが知っていること・感じていることを、当たり前に、正しく、みんなで考え実施しようというものなのだろう。
まずは力まず、肩の力を抜いて、焦ることなく、日常を大切に。
そんな著者からのメッセージが聞こえてくる。

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