
ワクワクリベンジ読書のすすめ~『私をささえた一言』扇谷正造編~
急きょ、来春に引越しすることになった。改めて準備をしようとした時に、ごくごく小さな家でありながら、ガラクタだらけなことに気が付いた。そういえば、両親が亡くなって以降、まったく片付けていなかった。何とかしなければと思いつつ、父の書棚で見つけた古い書籍。
朝日新聞の論説委員の著者が編集。100名の著名人の座右の銘をまとめたもの。昭和41年2月が初刷。父が購入したのは昭和51年7月で第117刷のもの。そもそもがベストセラーだった。
当時、父は税務大学校の教官をしていた。その時の訓話か何かのネタ探しとして活用したか。あるいは働き盛りで自分自身を鼓舞しようとしていたのか。ところどころにページを折り曲げてある。ある意味で、そこに当時の父の思いを感じる。
例えば、伴淳三郎の言葉。「貧乏と辛抱に勝ちぬいて生きることが、やがてはそのひとの人柄をよりよくするものだ」。ご自身が悩みに打ち勝ってきた経験から出てきたメッセージ。
いかにも父が好きそうなフレーズだな、と実感。
次に、「自分を叱り、自分を叩く」というバレリーナだった貝谷八百子さん。それが自分を真に愛することにつながるとともに、勇気づけられた言葉らしい。父好みだ。
自分の場合は公務員だった父と感じるところは違っている。
自分が選んだのは「ジャーナリズムの反対語はマンネリズムである」という作家・邱永漢の言葉。
厳密には新聞記者の友人の上司の言葉らしいが、マスコミのあり方の真髄を示しているように思う。
自分はマスコミの人間でもないし、志望していたわけでもない。ただ強烈な環境の中で仕事してきた関係から、同じようなマインドは常に持っていた。ニュアンスは若干異なるが、「1年365日、1日24時間が仕事だ。ビジネスのヒントがある」と常々社長から言われてきた。そういうこともあり、邱永漢の掲げたメッセージは個人的によく理解できる。
ただ著書に目を通して不思議なことが一つ。
父が選んだ言葉に、「女も変化する」(評論家・石垣綾子氏選)があった。堅物だった父に何かあったのか。憶測の域をすぎないが、案外人間臭いところもあったのだな。ふと感じた次第である。