落ちこぼれシニアのリベンジ読書~『続・下流老人 一億総疲弊社会の到来』藤田孝典著~
<<感想>>
『下流老人』の続編である。サブタイトルからイメージできるように、著書のテーマは「一億総疲弊社会の到来」なのだろう。さらにもっとインパクトのあるメッセージが帯POPにある「『死ぬ直前まで働く』社会がはじまる!! 下流老人は過労で死ぬ!?」になる。
前編同様に高齢者の貧困にスポットを当てているが、大きく異なるのは、データを駆使して今後の悲観的なストーリーを示しながら、平成28年6月2日に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」をもとに日本の社会保障制度について総点検および問題提起している点である。
高齢者(あるいは障害を抱えている人や家族)にとって「働く」とはどういう意味を持つか。
それぞれの置かれた環境によって、「働く」ことについての意味あいは異なるだろう。
著書で指摘されているのは、様々な理由によって働かざるを得ない「下流老人」である。
リストラなど「雇用の問題」、老々介護・介護離職などの「家族をめぐる問題」、限界集落化し若者が居着かくなるという「地方をめぐる問題」などをあげているが、結局は「金(かね)」の問題となる。しかし大きな経済成長が見込めない今日、収入増は難しい。高齢者であればなおさらだろう。
果してそんな中で下流老人の窮地を救う方法はあるのか。
『下流老人』と『続・下流老人』を読む中で、ポイントは「受援力」と「受益感」になると感じた。
「受援力」とは前編で指摘したように「支援される側が支援する側の力をうまく生かし、生活の再建に役立てる能力」のことである。言い換えれば、「支援される側が自律した個人としてどういう支援を欲しているかを明確にするとともに、制度についての理解を深める努力をすること」になる。
一方で、著者は必要原理に基づく「共存型再分配モデル」を提案している。課税により所得や年齢に関係なく、すべての人が生きる上で必要となる普遍的ニードを満たすこと。つまり全員が一定割合の税を負担し、全員が同じ額の公的サービス(教育や医療、介護、福祉など)を享受することによって、すべての人が「受益感」を実感できるとともに、社会の格差は縮まり、困窮者の救済にもつながるというもの。大いに賛同するところである。
しかし、そのためのハードルが高いのも事実である。著書にも書かれているが、何よりわれわれの「納税意識」を「生活を脅かす負担」から「生活を保障するための財源」へと変革しなければならない。そして納めた税金が適正に使われているか。しっかりと見届けることが不可欠である。
社会保障のための財源確保ができなければ、高齢者は死ぬまで働き続けなければならない。
極論かもしれない。しかし真剣に議論し尽くさなければならない問題である。