ワクワクリベンジ読書のすすめ~『脳の闇』中野信子著~
雑誌での連載を再構成、大幅な加筆修正をしてあらわされた書籍とのこと。
筆者はメディアによく出演されている。脳科学の視点からユニークなコメントをされる方だな、と思っていたが、「中野信子ワールド」の奥深さを感じることになった。
特に興味を覚えたのは、「正しさハラスメント」ということ。
誰もが認める「正しさ」。一見当たり前のようにも感じる。しかし、そこから逸脱した人を叩く行為が、ここ数年目立っている。この傾向を「正しさハラスメント」と筆者は呼ぶ。「正義のためならだれかを傷つけてもいい」ということ。以前話題になった「自粛警察」もそのひとつだろう。
ただ、ふと感じたこともある。
「正しさハラスメント」は決していまに始まったことではない。
ドストエフスキーの『罪と罰』の主人公ラスコーリニコフがまさにその典型である。
「自分は選ばれた人間。非凡な人間は正義のためなら人を殺してもいい」と、「しらみ」のような高利貸の老婆アリョーナ・イワノブナを殺害する。
「正義のためなら他人を傷つけていいのか」。この作品の中にも同じような問題意識を見出すことができる。
「正しさ」を脳科学的にみると
「前頭前野には、良心や倫理の感覚を司っているとされる領域がある。これは前頭前皮質の一部にあたる場所で、内側前頭前皮質という。倫理的に正しい行動を取れば活性化され、快楽が得られる仕組みになっているようだ」(P81)とのこと。
ある意味で、「正しさ」を追求することは、自分の快楽を追求するということにもつながる。
一方で、「この良心の領域は、自分が「正しさ」に反する行いをした場合だけでなく、自分ではない誰かが「正しさ」に反する行いをした場合にも苦痛を感じさせ、それを解消しようと時には攻撃的な行動を取らせたりもする」(P81)とのことである。
こうした考え方が「正しさハラスメント」の正体なのだろう。
他にもいろいろな視点からのコメントがある。
脳はブラックボックス。まさに「脳の闇」を実感した次第である。
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