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砂糖と小麦を断って、6か月。

だめだ! 考えるから欲しくなるんだ。
無心、無心。そうだ、瞑想でもするかな。
なんて目を閉じかけたけどできるわきゃあない。頭の中は煩悩でいっぱい。

食べたい食べたい、チョコレート! 

一箱とは言わん。一粒だけでいい。
口の中に一粒入れさえすれば落ち着くのに。
そう思ってカバンの中やら、引き出しやら、食べかけを探してみるけどあるわけもなし。
夕飯の買い出しの際に買おうかどうか迷った挙句、最近食べ過ぎだから今日はいいだろうと思ったのが運の尽きだ。

バカだな自分!
我慢できると思うてか。

すでに夜の11時になろうとしている。
我慢しようと思えども、イライラは一向おさまる様子なし。
いつもなら猫とまったり過ごして、あとは寝るだけという時刻、いい年したおばさんが、つっかけ履いてコンビニまでひとっ走りーー。

半年前までのわたしである。


はい、ジャンキー確定!


「チョコレート」をたとえば、「ストゼロ」や「大麻」「覚醒剤」、「パチンコ」におきかえたって、文章的には大きく破綻しない。
甘いものへの依存は、覚醒剤に依存するのと同じこと。大学生の頃読んだ、「チョコレートからヘロインまで」とは、けだし名著である。

依存していたものは、チョコレートだけじゃない。
ケーキも、アイスクリームも、パフェも、スイーツと言われるもの全般、わたしの人生になくてはならない、と思っていた。
カフェに入れば必ずスイーツも頼む。
甘いものは、幸福をもたらしてくれる、そう信じて疑わなかった。

そんなわたしが砂糖を摂取しないようになって、もう半年が経つ。
「断った」のではない、断たざるをえなくなったのだ。


始まりは、1杯のコーヒだった。

デカフェのグラスフェッドバター入り。
数年前に流行った、バターコーヒーというやつだ。
昨冬、父の看病で腰を痛めたわたしは、年明けから東京中、いろいろなクリニックを巡っていた。
その一軒で、バターコーヒーをいたく勧められたのである。

溺れるものは藁をも、の気持ちからクリニックの帰り道、グラスフェッドバターを購入し、家にあるデカフェコーヒーで翌朝からバターコーヒーを飲み始めた。

クリニックで言われた通り、驚くほど腹持ちがいい。
朝1杯飲むだけでランチは不要。
小腹が減ることがないため甘いものを食べることもグッと減った。
そうして毎朝、バターコーヒーを飲むこと3週間。
ある朝、不思議な体験をすることになる。

それは、冷蔵庫からバターを取り出そうとした瞬間に起きた。


もうダメです!

声が聞こえた。
空耳か幻聴か?
そんなもの聞いたのは、五十年以上生きてきて初めてのことで、最初は分からなかった。

気のせいか?と思いつつ、再びバターを取り出そうとしたとき、今度ははっきりくっきり、クリアに聞こえた。

もうダメです、ダメです!
飲みたくないんです!
ムリムリムリムリ! ムリなんです!

からだの声? というか、臓物の声とでもいうか。わたしのからだの声だった。
え? 飲みたくないの?と思った瞬間、速攻、脳が否定した。

バターコーヒー、良いですよ。
糖代謝から脱することができますよ! 
何より頭がクリアになるんですよ! 
実際、甘いもの食べなくなってますよね! 
続けて飲みましょう、飲みましょう!

脳の呼びかけに負けじとわたしのからだは、声をかぎりに大合唱している。

もうダメです! もうダメです!
そんなもん飲んじゃダメなんです!

からだの声を聞きつつも、慣れ親しんだ脳の指示に従いバターコーヒーを作った。
そうして、口に含んだコーヒーを瞬時、流しに吐いてしまったのだ。脳にいくら飲めと言われたところで、からだが受け付けなかったのである。一口たりとも飲みなくなっていた。

バターコーヒーライフ、閉店ガラガラ。

バターコーヒーに別れを告げた、その日からである。
チョコレートを見ると気持ち悪くなる。
ケーキのホイップクリームに吐き気を及ぼす。
あんなに好きだった甘いもの全般まで受け付けなくなってしまった。そこに潜んでいるアブラに拒否反応が起きる。
結果、甘いものを摂取しなくなり、ひいては料理に少量使うことがあったきび糖も使わなくなった。そのうち、ブドウ糖液糖の嫌らしい甘ったるさがダメになり、大好きだったシャンディガフも、果糖が入ったジンジャーエールを使っているからという理由でやめた。

やめたというか、バターコーヒー同様、からだが受け付けなくなった。


その頃、腰痛治療で訪れた治療院で尋ねられた。


「もしかしてアブラを摂りすぎてません?」


本当にダメだという時のみ駆け込ませていただいている、生体電流調整の治療院だ。
お見それしやした!
さすが予約のとれない治療院、だてにゴッドハンドと呼ばれちゃいない。

先だってまでバターコーヒーを毎朝飲んでいたこと、ある日、からだの声が聞こえてきっぱりやめたことをカミングアウトした。
万人にあう食事療法なんてないんですよ、とゴッドハンドに苦笑いされてしまった。
確かに。多くの人が良いと勧める玄米だって、合わない人には合わないのだ。自分の体質を知るのが大事だ。
わたしにバターコーヒーは合わなかったのだ。

バターコーヒーをやめたことで、砂糖を摂取しなくなったのと同時に、以前よりゆるく行っていたグルテンフリーに本格的に取り組むことにした。
こちらは一年ほど前からか。パスタを食べると嘔吐下痢が起きるようになったため、ゆるーく取り組んでいたのであるが、次第、他の小麦製品でも不調が起きるようになったので、砂糖を止めるなら、ついで一緒にやめてみましょうとトライすることにしたのである。

砂糖、小麦を断って半年、何が変わったか。

①まず、便通の改善。
以前より便秘はなく、毎日、便通はあったものの、スッキリ感が雲泥の差である。

②体重の減少。
体重を毎日計ることはないから分からないが、おそらく3〜5キロは落ちているんじゃなかろうか。おばさんになったからと諦めていた背中の肉や腰まわりの肉がきれいに落ちた。諦めていた服が着れるようになった。

③口の中がいつでも気持ちいい。
甘い物を食べた後の、歯磨きしたいなあ、という口中のベタつき、気持ち悪さが消えた。いつも快適。

シミが消えるという人もいるけれど、シミはあいかわらずしっかりくっきり残っている。鬱が治るとか、疲れなくなるという説もあるけれど、その自覚もない。

④無駄な買い物が減った。
砂糖と小麦を断ってしまうと、まずコンビニに行かなくなる。
大好きだったDEAN & DELUCAも、悲しいかな食べるものがなくなった。
行ったところで買うものがないのである。
スタバにも行かない。いったいいくらスタバに落としてたのか?


⑤料理がさらに楽しくなった。
元々好きだった料理がさらに楽しくなった。というのも、夫は砂糖不使用ではないので、たとえば肉じゃが作る際に、砂糖を入れずしてどうしたらおいしく作れるか?みたいなチャレンジすることが増えたためでもある。糠漬けを始めてみたり、新しいことに挑戦したりするのも楽しい。


現在も、砂糖や小麦を我慢してるわけではない。食べたいという気がおきないだけの話だ。
唯一食べたいと思うのは、近所の絶品ピザくらいかな。これも、食べた後の胃痛と腹痛を天秤にかけると、他の料理をいただくだけば我慢できる。

なんだかんだ言いながら、結局、自分で作ったご飯がいちばん美味しい!という結論に達している今日この頃。


半年前の夜中、コンビニに急いでいたわたしに言いたい。

あなた、そのうちチョコレート欲しくなくなるよ〜!と。

きっと、あの頃のわたしはそんな未来が来るなんて夢にも思わないに違いない。




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