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「謝る」ことで誇示する度量
「にいちゃん、気ぃ悪うさせたんやったら謝るわ。すんませんでした」
質の悪い常連客が多くいる、繁華街の夜のお店で。
スーツで、髪にはつややかな何かが塗りたくられておりオールバックで、そんな機嫌悪くなるなら来なけりゃいいのにと思わせる横柄さで。いや、むしろ機嫌の悪い自分にかまってくれるからこそ、あえて機嫌を悪くして増長しとるんだと、そんなある種の様式美を目の当たりにできる良い機会。
一人のお客に対し、一人の女性が着いてお酒の相手をするという類の店で、繁忙時に女性の着くのが遅かったという理由で、値段を下げろだ、いい酒を出せだ、時間を延長しろだとガタくれる。
いや、もう面倒くさいなと思いつつ。つけ入る落ち度があったのは確かだし、暴れられても困るし適当にあしらう訳にも行かず、金額は安くできないけれど……という注釈と、10分の延長クーポン提示と、店には内緒で…と、ヘネシーのボトルをお詫びに添える。中はサントリーのV.S.O.P.を詰め替えて入れていた。どうせ水で割って飲んでるし、酔って味なんてわからんだろうし。
なんだかんだことが収まって冒頭。
頭下げて謝ってくるんです。
これ、はじめ何のことかよくわからんかったんですよ。謝るんやったらはじめからしなかったらええのにって。
店員からしたら大層な迷惑で、そりゃもちろんのこと気分悪いですし、大した売り上げにもならんですし、来ないでくれた方がなんぼかマシなお客さんな訳です。別に嫌いって感情が湧くまでもないのですが、少なくとも好きな対象ではないですよね。
元来、謝ってくるってことは好かれたいってことなのか、いい関係を築きたいと思っているのか。いずれにせよ関係性をプラスにしたいという意図があるからなはずで、そうであればはじめからごねないに越したことないんですよ。普通に考えて。理不尽にごねた後に謝ったって関係性がプラスになるなんてない訳ですから。
ごりごりにごねておいて謝ったら関係性がプラスに転じるなんて考えてしまうくらい、単に想像力が圧倒的に欠如しているだけなのか。
特別対応させたという優越感に浸りたいのか。
あるいは、一介のボーイに頭下げて謝れるっていう度量を女の子に見せつけていいカッコしている気になっているのか。
いずれにせよ、場末の夜の店に飲みに来て、ごねる癖に常連めいた通い方してくる人ってのは、何等か承認欲求がよじれて行動が訳わからんくなってくるんやって原体験。こういうよじれた行動では結局何も手に入らないと。
誇示の仕方が独特。
高い瓶に入った安いお酒を飲んで本人が満足していたのなら、それでいいのかもしれないけれど。
酒なんてそういうもんだろうし。
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