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「品質管理」部を略した社員
Web制作会社で勤めていた際に、品質管理部という部署を立ち上げたんですよ。部署名の通り、品質を管理する部署です。
Web制作会社の業務フローをシンプルに表現すると、以下のように示されます。
・1:潜在顧客との接点を作る
・2:Web制作に関する案件を獲得する
・3:設計・計画をたてる
・4:デザイン・システムをつくる
・5:テストする
・6:納品する
1・2をマーケターや営業が行い、3をディレクターやSEが行い、4・5をデザイナーやプログラマーが行うようなイメージでしょうか。
小さな会社やフリーランスであれば、全部ひとりでまかなう場合もありますし、1・2・3を兼務で行うディレクターやSEもいます。営業が4までやるってのはあんまり聞かないかもしれませんね。
いずれにせよ上記はあくまで業務のフローでして、職務の区分けではありませんのであしからず。
ものつくりにおいて、もっとも大切な工程はどれかと問われると、間違いなくそれは「3:設計・計画をたてる」です。そして、そのクオリティを担保するために「5:テストする」が2番目に重要でしょうか。
「4:デザイン・システムをつくる」より先に3・5なんですね。
わかりやすくたとえると、設計図なしに家を建てたらどうなるねんって話です。
つくれなくはないでしょうけれど、高さ長さがちぐはぐになってしまったり、土壌にそぐわない建築方法を採用してしまったり、必要な建具がどれだけかわからず非効率であったりと。設計・計画がぐらぐらだと、4を適切に行うことができないんですね。
もちろん、4が重要じゃないかというと、そういうことではありません。とても重要な工程です。つくれる人がいなければ、物は形になりませんからね。
ただし、御幣なく捉えていただく必要はありますが、ある程度のレベルで4を行える人は割とたくさんいるんです。特にWeb制作の現場においては。つくることに高度な技術を要する場合も稀にあるのですが、大抵はさほどレベルが高くなくともこなせる。先ほどの家づくりでいうならば、トンカチと釘さえ使えれば、あとはどこに・どれだけ・どのように打つかの設計・計画があれば実施できるということです。
そして、ものつくりにおいてその肝は品質です。つくった後、クオリティを担保するために、3が適切に行われているか否かを「5:テスト」する訳ですね。いいものができるか否か、テストが最後の砦です。
しかしがら、多くのWeb制作会社について、3・5がないがしろになるってよくあるパターンなんですよね。
営業は売り上げを上げたい。
デザイナ・プログラマは納期のために早くつくりたい。
お客さんは早く安くやってほしい。
必然的に多くの仕事を、早く、安くやる必要に迫られて、ないがしろな設計に、ないがしろなテストで、とりあえず見栄えは良いバグだらけで保守性の低い成果物が、それなりに動く形でバシバシと納品されてゆくと。
売上を主に求めるフェーズであれば、それもやむを得ないのですが、品質を担保して、お客様の信頼を獲得して、長きにわたる取引をできるクライアントを増やして行くフェーズになると、そうも言ってられなくなるんですね。
売上偏重から、品質重視のフェーズに移行してゆく。多くWeb制作会社なりフリーランスが成長してゆくとぶち当たる良くある壁です。
そこで立ち上がったのが品質管理部。
前段が長くなりました。
品質管理に任命された中途入社の村山君という男子がいたのですが、任命されて最初に独走して行った仕事が、品質管理がいかに重要かを社員全員に知ってもらうために社内報(週一回のメール)を書くことでした。メルマガのタイトルがこれ。
ヒンカンが語る
品質管理を略して「品管」に。
キャッチーにしたくて「ヒンカン」としたのでしょうけれど。
なんででしょうね。
カタカナで「ヒンカン」とするとなんだかマイナスな印象を受けませんか。
「品質管理部」ってとても繊細で、難しい立ち位置なのです。
営業は売り上げのためにたくさんつくらせたい。
デザイナ・プログラマははやく手際よくつくりたい。
そこに設計・計画を入念に、そしてテストを手厚くせよと水を差すわけですから。品質管理を強化したところで、営業や作り手の目標というノルマやタスクが減る訳ではありません。
そこにマイナスな印象は非常に厳しい。
ヒンカンが語るはその後堂々10回ほど発行されて、村山君がやめちゃったんで廃止となりました。
ヒンカンって顰蹙と反感みたいだねって2,3人が言うてたのは本人の耳には届かないくらいの感じだったので、残念ながら、その間にはかられた品質の向上ってその程度だったのかもしれません。
仕事のセンスと、ネーミングセンスと、品質を管理しようって強く思わせてくれた出来事でした。
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