「旅する土鍋2018」 晩餐会の寸景と祝詞
スプマンテのポンッ!という音と、賞賛の言葉と喝采がとぶ瞬間は、映画を観ているようで。
「旅する土鍋」は人生の岐路にも遭遇するわけで、カラブリアの家族の息子のお祝い晩餐について。
(写真:フィンガーフードやミニドルチェ!)
カラブリアの家族にはふたりの息子がいて、先日の記事は歯科医になった次男とのツーショット。今回は、整形外科医の専門学位を取得した長男の授与式と研究論文発表会のため大学へ。論文の結末に添えた言葉「定年を迎えた尊敬すべき外科医に敬意を表する」には胸を詰まらせた。
夏の冷たい教室には、学生が謝恩として準備した最上級のスプマンテと南伊のフィンガーフードがふるまわれた。「おいしいから全種類お食べなさい!」と、陽気なマンマ。論文の末語が心の中でリフレインするものだから、彼女もわたしも目をうるませながら「くいしんぼうね」と鼻をすすって笑いあった。
(写真上:教授と学生)
教授のほうからナゾなニホンジンに近づいてきてくださり「おめでとうございます」と握手を求めてきた。誰も「日本人ですか?」などと聞いてこない。国籍を超えた学びがされていることがすぐに感じられ、偏屈な自分の心に詫びながら、我が家の大学生である青春を重ね、なんだか分からない涙があふれた。
南伊の結婚披露宴も忘れられないものだが、どんなお祝いでもバーッと美味しく祝うのが南イタリア気質。時を別にして、カラブリアの地元では、親戚や友人などが招待され、海辺のレストランで魚づくしの豪勢な晩餐会が開かれた。
(ヘッダー写真:晩餐会にて主賓と友人)
(写真下:晩餐会のテーブルにいっぱいの人)
数日前、町いちばんのケーキ屋にお祝いのケーキを注文しに行った。ケーキに入れるメッセージどうしようか?とマンマに相談されたが、つきなみな言葉しか知らない。マンマはすてきなラテン語の祝い言葉を教えてくれた。
Ad Maiora Semper
(アドゥ マイオーラ センプル)
つねに大きな幸運あれ!
紀元前8世紀ころギリシア人が多く移住した南イタリアを、古代ローマ人は「マグナ・グラエキア」(ラテン語/大ギリシア)と呼んだ。カラブリアの言葉はラテン語から派生したという。複雑で豊かな歴史を背景としたこの地ではさまざまな方言が発達し、ギリシャ語、オック語・アルバニア語系の言語を話す地域もある。(大学で学んだ言語学は忘れたので後にかいつまんだ知識のみで失礼)