自分にとって居心地の良い場所から、一歩出てみる。 今回参加した糸島のフィールドワークを通じて、一番印象に残ったのは、メッシュワーク比嘉さんのこの言葉だった。 フィールドワークという場に参加しながら、じつは私は人と話すのがけして得意ではない。どこかしら「何か間違っているのでは」という漠然とした心地悪さをポケットに忍ばせて話している。そんな私がなぜか文化人類学という、人と大いに関わる学問に興味を持った。得意ではないからこそ、人がどう考え生きているのか、理解したいという渇望が生ま
(2018.3.13) わたしがもっとも好きな作家、池澤夏樹氏、39歳のときのデビュー作です。ずいぶんとひさしぶりに読み返して、あらためて紹介したくなりました。30年前の著書ですが、まったく古さはありません。現代社会への深い内省が、みずみずしい自然描写とともに綴られています。むしろ、地方への移住や「ローカル」が若者たちの間でも見直されている今、あらためて読むと、池澤さんはこの流れを予見していたのかもしれない…と思いました。 『夏の朝の成層圏』池澤夏樹著・中公文庫/19
池澤夏樹さん個人編集の『日本文学全集』もついに3冊目に。 ※名作なので今さら過ぎる感じもありますが、ちょっとネタバレしています。 川上未映子氏による、樋口一葉『たけくらべ』の現代口語訳です。江戸情緒を残しながら明治へと移り変わる影絵のような花街。雨がしとしとふる路地に落ちた、ぽつりと1点だけにじむ鼻緒の紅の色。一葉のすばらしい色彩感覚を、まるで絵画のように味わえる名作です。 川上未映子さんの若々しい筆致により、少年や少女たちはまるで現代に生きる男女のように、いきいきと