戸隠山を見ながら戸隠神社五社巡り
私の中で見たい山と登りたい山とは別物である。今回は見たいと思っていた山、戸隠山を見に長野県長野市戸隠高原を訪れた。また戸隠には二千年以上の歴史を持つ五社からなる戸隠神社がある。神社巡りと戸隠山を望む夏の旅へ。
昨年、戸隠山が描かれた山の絵を長野県北安曇郡北アルプス展望美術館で見た。その絵は印象的な大きな油絵で、そこには紫色と濃い青と黒が混じったような色のゴツゴツした岩が空に向かって尖っている戸隠山の姿が描かれていた。人を簡単には寄せ付けない雰囲気なのに少し柔らかみを感じさせるのは絵だからなのか。周りの木々の色合いなのか。実際にこの山を見てみたいな、と思った。
戸隠山は「蟻の塔渡り」と言われる道幅1mにも満たない尾根を渡る難所があり、他にも断崖絶壁の鎖場があったりと、滑落事故の危険もある上級者向けの山。なので私にとって戸隠山は見る山、見たい山のグループに入る。かつて山で修行する者たち、修験者が登っていた霊山。どんな姿を見せてくれるのかとても楽しみ。
初日。台風が接近している自宅のある地域を早めに出発し、台風の影響のない長野県へ向かう。今回も夫と出かけるので運転は交代しながら。私が上信越道を運転していた頃は空に青空が見えてきて、戸隠に着いたとき多少雲があるもののとても良い天気。
宿は戸隠神社中社に近い白樺荘を予約。チェックイン前に車を宿に置かせてもらえるので歩きでの神社巡りに便利な上、口コミから親しみのある宿で食事も美味しいとの評判で決めた。女将さんもとても気さくな方で、戸隠古道の歩く道順も説明してくれた。
まずは一番近くの中社にお参り。手水の水盤から流れてくる水は山からのご神水で飲めると書いてある。手で水をすくい少し口に含んでみると冷たくて気持ちいい。喉も乾いていたので続けてごくりと飲ませて頂いた。
「戸隠に無事着きました。これからお参りさせていただきます。」挨拶しお参りする。
戸隠神社は、奥社・中社・宝光社・九頭龍社・火之御子社五社からなり、本来は五社のうち一番最初に宝光社から巡るらしいのだが、順番は日程上致し方ない。
中社は五社の中心にあり、周辺には宿坊や門前町の街並みが見られ、蕎麦屋も多く賑わっている。
時間はお昼になっていたので、ここはなんとしても戸隠そばを頂こうと中社近くの蕎麦屋を見て回ったが、どこも長蛇の列で混み合っていた。
少し離れたところの山口屋に並び、待つことに。待っても腹ごしらえをせねば!これから戸隠古道を歩くのだから。
戸隠そばを食べ終え、戸隠古道池巡りコースで奥社を目指す。小鳥ケ池入り口から森の中へ入るとすぐに小鳥ケ池に着く。そこから見る戸隠山も良い。
小鳥ケ池からまぁまぁな登りの山道を鏡池まで50分近く歩く。
途中、硯石という場所で休憩。
多少の登り降りを経てようやく鏡池に到着。ここへは車でも来られるし、景色が抜群にいいので人気スポットだ。
「おー戸隠山!」少し雲がかかっているけど、それも神秘的。
戸隠山さま、お会いできて嬉しいです。
絵で見た戸隠山とは角度が異なるため、少し印象は違うけれども、ゴツゴツした岩山の様子、ゴジラの背中のような尾根はまさしく戸隠山だ!
池の前に座ってしばし山を眺めている。池からの風を受けて涼しい。この時間が
愛おしい。もう少しゆっくりしていたかったけれど、これから奥社まで行くので、名残惜しいが出発する。
再び森の中へ。この古道を通って奥社へ行く人はそう多くない。静かな森歩きができる。
熊の出没もあるというので、自分のリュックに付けた熊鈴をチリンチリン鳴らしながら進む。
すると参道の脇に出た。そこで目に入ってきたのはこの随神門。神の領域との境、邪悪なものを入れさせないための門。まさしくここから神域と思わせるような佇まいだ。
真っ直ぐに続く参道。両脇にそびえ立つような背の高い杉並木に圧倒されつつも神聖な気持ちになる。参道は長く、最後の奥社までの石の階段が急峻で、これはまさしく山登りでしょう、くらいな印象。サンダルで登っている人もいたが、足元は
しっかりした靴の方がおすすめ。
かなりの汗をかきながらようやく奥社に到着。
戸隠の名は
「天照大御神(あまてらすおおみかみ)が、高天ヶ原の天の岩戸に隠れたとき、天手力雄命(たじからをのみこと)が、その岩戸を信州の山奥まで投げ飛ばし、世に光を取り戻した」 との伝説によりその地を戸隠と呼ぶようになったという。奥社は戸隠神社の御本社として天手力雄命を祀っている。
ようやく辿り着いた奥社で、心を込めてお参りする。
奥社の近くに九頭龍神社があり、そこもお参りし、今日の神社巡りは終わり。参道へ戻るその前に、戸隠山への登山口を少し覗いてみた。
帰り道、奥社入り口の大鳥居まで長い参道を30分以上かけて歩く。そこからまた宿に向かって歩く。よく歩いた。
本日の歩いた距離は10km。登った高さ339m降り340m お昼の食事時間を含めて行動時間は5時間50分だった。宿の食事時間の前にお風呂を済ませられる時間になんとかチェックインできた。
この日は宿に偶然神奈川県茅ヶ崎市のボーイスカウトの集団が合宿に来ていて、高学年は外でキャンプ、低学年は宿にお泊まりをしていた。小学1年生の男のたちは可愛くて、まだ親が恋しい年頃だろうに、ボーイスカウトに入っている子たちのためか、そんな様子も見られず大したものだった。このボースカウトは、なんと茅ヶ崎出身の宇宙飛行士の野口聡一郎氏が子供時代入団していたので、この白樺荘に何度も合宿で来ていたとのこと。宿に野口氏の写真が飾られていた。戸隠で地元湘南の繋がりが感じられて嬉しかった。
白樺荘、宿のご主人もお話が楽しく、戸隠山のことを色々と教えてくださり、気さくな山荘といった、感じの良い宿だった。
二日目。9時にチェックアウト後、車で宝光社へ向かい、残り空き一台の駐車場に停められた。
宝光社はこの長い階段を登ってお参りする。午前中の比較的早い時間の参拝は清々しく気持ちがいい。
宝光社の横から神道(かんみち)と言われる山の中の道を通って、最後の五社目の火之御子社へ向かう。徒歩で約15分くらい。道は少し登っている。
火之御子社でお参りする。戸隠神社五社を二日間に分けて参拝した。ありがたいこと。無事五社参拝できて本当に良かった。感謝と達成感を感じつつ、また来た道を歩き、車の元へ戻る。
一枚の絵から始まった旅。戸隠山を見てみたい、そこから戸隠神社をお参りしたい、戸隠古道を歩きたい、戸隠そばを食べてみたい、枝葉のようにのびていく「したい気持ち」を形にしてみた旅。楽しかった。良き戸隠時間をすごせたことに感謝。
さて、次の目的地は、戸隠の隣、飯綱高原へ。森の中の喫茶店cafe中寿美に向かう。ここは私がnoteでフォローしているnakazumiさんが店主のお店。行ってみたいと思っていた場所。今回の夏旅の大きな楽しみの一つ。続きは次の記事に書きます。
最後までお読みくださりありがとうございました。