テレパシーはいらない/はじめに
5月19日(日) 開催の文学フリマ東京38 に参加します。
出店名: ミモザブックス
ブース: Z-01~02 (第一展示場)
イベント詳細: bunfree.net/event/tokyo38/
今回販売する同人誌は以下の2冊です。
『テレパシーはいらない』
『デブリの星』
どちらも単行本未収録の短編・掌編集です。値段や本の形態等、詳しくは私のTwitter(X)をご確認ください。
さて、こちらの同人誌を発売するにあたり、『テレパシーはいらない』の冒頭部分「はじめに」を公開します。
それでは、どうぞ。
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はじめまして、こざわたまこです。
いきなりですが、煮詰まった作家が、というか主に私が陥りがちな精神状態に「傑作書きたくなっちゃう症候群」というものがあります。
壮大なテーマと重厚な語り口で人の心の闇をこれでもかというほど丹念に描写し、この問題にこんな切り口があったとは!と発売前から業界を騒然とさせ、瞬く間に口コミが広がり、重版に注ぐ重版が止まらない、そんな傑作が書きたい。いや、書かなければならないのだ!と勝手に思い込んで肩に力が入り、筆が止まってますます煮詰まっていく症状のことです。
当たり前ですが、傑作なんて書こうと思ってさっと書けるものじゃありません。にもかかわらず、私たちはどうしてこんなにも、傑作を書きたくなってしまうのか。
私の中ですでに答えは出ていて、傑作じゃないと売れないような気がするからだし、傑作じゃないと多くの人に認めてもらえないような気がするから、なのだと思います。
そんなわけで、長年この症状に心を囚われていた私は、来る日も来る日も「これじゃ傑作にならないよ……」と頭を抱えては、キーボードのバックスペースキーを叩く日々を送っていました。
しかし、ある日気づいたのです。
あれ? 私って元々、傑作が書きたくて小説家を目指したんだっけ?
というか、そもそも私が書きたかったのって、こういうのだったんだっけ……?
慌てて過去作を読み返してみると、そこには今の私とは似ても似つかない、在りし日の自分の姿がありました。
まっっっったく重厚な語り口じゃない!
めっちゃ軽やか!!!
(ここがいちばん重要なのですが)書いててとても楽しそう!!!!!
傑作はもういい。
初心に立ち返ろう、と決意を新たにした瞬間でした。
この本を作ろうと決めたのは、私に最初期のマインドを思い出させてくれた二つの作品を何かしらの形で残しておきたい、と思ったことがきっかけです。
本書に収録されている小説はどちらも、今から十年以上前に書かれました。表題作『テレパシーはいらない』はデビューして間もない頃、電子総合文芸誌「月刊アレ!」に掲載されたもの。『怪物vsハナミズ星人』はデビューの直前、小説宝石新人賞に投稿していたものです。
お楽しみいただけましたら幸いです。
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