ゲルニカの花〜聖なるもの
春の訪れを約束するように咲くアネモネは希望や再生の象徴と言われ、沢山のポジティブな花言葉が付けられています。ギリシャ神話では、アドニスの血から咲いた花をアネモネと言った。
ピカソのゲルニカの絵には、折れた剣から一輪の花が咲いています(中央下)。聖なるものの象徴として描かれたその花はアネモネではないかと言われています。
「あなたがアネモネを見たのなら、それはアネモネなのだろう」ピカソの声が聞こえてきそうです。
今月の「文学と一花一葉」はこのアネモネを生けて頂きました。
文学のテーマは「谷崎潤一郎・刺青」。
刺青師(ほりものし)企みで知らぬ間に背中に大きな女郎蜘蛛を彫られてしまった17歳の少女はどのような人生を辿るのか・・・
「私はもう今までのような臆病な心を、さらりと捨ててしまいました。―――お前さんは真先に私の肥料(こやし)になったんだねえ」
こんな決め台詞を残して彼女は去ります。か弱気乙女の姿はもうそこにありません。女郎蜘蛛が少女を再生してしまったのか。
ピカソと、アネモネと、谷崎潤一郎と、女郎蜘蛛と、最後は和菓子。
まさに、キュビズムな講座なのであります。
来月は夏目漱石の虞美人草です。