認知症日記(2) きっかけは「車を盗まれた」だった、物忘れ外来の受診
夫は会社を早期退職したあと、週3日勤務のアルバイトをしていました。
手先の仕事で、性格に合っていたみたいです。家にいても、ぼんやりテレビを観ていることが多いので、なるべく長く勤めてほしいなあ、と思っていました。
しかし一昨年、72歳で仕事を辞めたのでした。
会社に向かったはずの夫が、
「車が盗まれた」
と、駐車場から戻ってきました。
「えっ? だって、盗まれるような車じゃないのに」
我が家はマンションにあり、駐車場は敷地外なので、徒歩2分ほど。
慌てて行ってみると、本当に車がない………。
夫自ら、警察に電話。
すぐに警察の人が来てくれました。
そして聞かれたのが、夫の前日の行動でした。
しかし、夫は前日の行動をあまり覚えておらず、
ただ、前日は仕事が休みだったので、近所のスーパーに行った、と。
結局、警察の人が、そのスーパーで車を発見してくれました。
つまり、夫は車でスーパーに行き、歩いて帰ってきて、そのことをまるっと忘れていたわけです。
警察の人も、前日の行動を訊いてきたから、よくあることなのでしょうけれど。
もともと、なんだか認知機能が怪しい、とは思っていたのです。
もともと、食事を作ってくれていたし、掃除なんかもやってくれる人だったのだけど(妻である私は何をしていたんだ? って感じですが、その話は後々)、
とんちんかんな行動が増えてきていました。
我が家の食器に、プラスチックの蓋付きのものが2つほどあります。
切った果物なんかを入れて、食べきれない分は蓋をして、冷蔵庫に。
ところが、この器が中身ごと食器棚に戻っていることが数回ありました。
皿を取り出したら、中にカビの生えた柿が入っていたり。
(私も柿の存在を忘れていたのだから、困ってしまいますけど。)
あるいは、夫の部屋の机の上に、小銭がどっさり入ったカゴがありました。
「まったく、小銭を使うのが面倒なのね。横着なんだから………」
と、思っていたけれど、
後から考えると、これも認知症の症状だったんですね。
前日の夜、私は不燃ゴミをまとめていて、夫の古い靴を見せて、
「これ、もう履いてないでしょう? 捨てるよ」
「うん。いいよ」
しかし夫は、翌朝にはそのことを忘れて、ゴミ袋から靴を出そうとする。前日の夜の会話もまったく覚えていない。
もう、現実を見るしかない。
「車を盗まれた」とか言って、警察の方にまで迷惑をかけてしまったのだし。
そんなわけで、近くの大学病院の「物忘れ外来」に行きました。
結果は、軽度のアルツハイマー型認知症。
軽い脳梗塞の跡も見つかりました。
それからもしばらくは、仕事を続けていましたけれど、
そろそろ限界。ということで、退職。けっこう長く働いていたので、退職にあたって、寄せ書きや花束、プレゼントなどを頂いていました。
そこで私は何をしたか?
すぐに地域包括支援センターに行きました。
家にいると夫は、ぼんやりしていて、自分からはほとんど外出しないから、
「デイサービス」というものに、通ってもらうしかない、と思ったのです。
デイサービスに通うには、
地域包括支援センターに行き、そこで「要支援/介護認定」を受ける必要がある、
とのことでした。
「要支援/介護」の認定がなくても参加できる、老人向けのイベントもあるけれど、定期的に(毎週、水、金曜日、とか)ならば、やはり認定が必要らしかったのです。
とにかく、夫の脳に刺激を与え続けなくては! と思いました。
そして、猫の招聘です。
我が家には、子どもはいません。
この難局を乗り切るには、猫の力が必要だと思いました。
(この話は、また次回)